2007-10-09

・なんでや劇場「有性生殖への道のり」レポート①原核生物から真核生物へ

    
今回は、前回の「なんでや劇場」から間があいたこともあって、丹念に復習するような形ですすめられました。その内容をなぞりながら、若干の補足をしてみます。
●原核細胞と真核細胞の違い、って何?

【基礎的な生物学用語の「なんでや的」解説-2】より
◆原核細胞と真核細胞
原核細胞は直径約10μmほどの小さな細胞で、細菌などの原始的な生物で見られる。真核細胞は直径約100μmほどで、細胞内に細胞小器官(ミトコンドリア、葉緑体、小胞体、ゴルジ体等)を持っている。ミトコンドリアや葉緑体は、真核生物の細胞内に原核生物(好気性細菌やシアノバクテリア)が取り込まれたものと考えられている。細胞小器官の微小管、紡錘体、動原体は細胞分裂の際に染色体や他の器官の動きを制御し、精密な細胞分裂を可能にしている。
◆細胞質
細胞を構成する物質のうち、核以外の物質の総称。真核細胞の場合は細胞小器官、細胞質基質、細胞骨格等をさす。

以上のことをまとめてみると、
項目          原核細胞   真核細胞
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大きさ(直径)     約10μm    約100μm              
------------------------------
細胞骨格         ない     ある
------------------------------
核膜に囲まれた核   ない     ある
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細胞小器官       ない     ある
------------------------------
細胞分裂の様式   無糸分裂  有糸分裂
              二分裂   二分裂・出芽
------------------------------
細胞壁         ある     ある(植物・菌類)
                     ない(動物)
------------------------------
真核細胞の直径は、原核細胞の10倍なので、体積比は1000倍。
大きさの比較を実感するために、倍率を同じに並べてみると、
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           【 細胞比較 】
それだけの違いを可能にしたのは、「細胞骨格」の存在。
細胞骨格は、細胞内にある繊維状構造のタンパク質で、これが細胞の形態を維持し細胞内外の運動に必要な物理的力を発生させている。細胞内での各種膜系の変形・移動と細胞小器官の配置、また、細胞分裂、筋収縮、繊毛運動などの際に起こる細胞自身の変形を行う重要な細胞小器官。アクチンフィラメント、中間径フィラメント、微小管の3つに分類される。
細胞骨格→リンク
細胞骨格→リンク
真核細胞には、細胞小器官(オルガネラ)がある。なかでも、小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソーム、ミトコンドリア、葉緑体、ペルオキシソーム等の生体膜で囲まれた構造体の存在が、原核細胞との違いを際立たせている。
これらの膜系細胞小器官が細胞内を区画することにより、色々な化学環境下での生化学反応を並行して行うことを可能にしているからだ。小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームは、小胞を介して細胞膜と連絡しあっており、ネットワークを通じて物質の取込みや放出(分泌)を行うことで、情報のやり取りをしている。
細胞小器官→リンク
◆つまり、
真核細胞内の諸器官は、原核細胞より高度に整序・統合(≒情報統合)された、共同体的な存在である、といえる。
*関連する当ブログの記事
原核生物と真核生物(2007年06月30日)
真核細胞の肉体改造(2007年08月14日)
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●「原核細胞→真核細胞」に進化したのは、何で?
・原始生命の出現:約40億年前
・原核生物の出現:約35億年前
・酸素発生型光合成の開始:約27億年前
・真核生物の登場:約19億年前
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  【「生命と地球の共進化」川上紳一著 P.136図版より】
初期生命が出現した頃の地球は、強い還元状態におかれていた。だから、原始生命は、そのような還元的な環境で生息できる「嫌気性生物」だったはずである。
原核生物が出現した頃の地球は、メタンと二酸化炭素主体で、まだオゾン層は形成されておらず、宇宙からの紫外線に晒された地表や海洋表層部は初期生命体にとってはきわめて危険な環境であったであろう。したがって、ノースポール(西オーストラリア)の含化石チャートは35億年前頃の中央海嶺で、それも熱水活動が活発な場で堆積したとものと推定される。
約27億年前の酸素発生型光合成開始により遊離酸素が海水中に放出され始められるや、それは海水中の還元鉄を酸化しつくし、大気中の酸素分圧も増えた。
エネルギー効率は高いが猛毒である酸素の出現は、それだけでも逆境である。さらに、大気中の酸素分圧が増えることで、二酸化炭素の20倍の温室効果があるメタンが減少すると地球は急速に冷却し、23億年前頃には、地球全体が氷床に覆われた。
参考投稿
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地殻変動などで火山活動が活発になり再び地球が温暖化し、全球凍結は終焉したが、注目すべき点は、この時期に真核生物が登場していることだ。
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“氷の世界”という絶望的な環境の中で細胞間シグナル=多細胞生物の萌芽が育まれた
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真核細胞中の細胞内小器官は、もともと光合成や呼吸の能力をもった別種の原核生物であったが、多くの強烈な外圧の変化に適応して、『単細胞同士の融合』がなされた。
◆というほどに、
逆境は、進化の原動力となった
*細胞内で区画された膜系細胞小器官の登場により、原核細胞より数段高い統合と分化を可能にした真核細胞は、俗に言う「共生」という概念を超えて『融合』あるいは『共同』というのがふさわしいかもしれない。
→関連情報:原核生物から真核生物への進化過程 
 
→関連情報:原核生物と真核生物
参考:「生命と地球の共進化」川上紳一著
   「生命と地球の歴史」丸山茂徳・磯崎行雄 共著
  つづく

List    投稿者 staff | 2007-10-09 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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