2007-10-06

消化酵素が足りないって本当?

 食品シリーズの蛇足として、摂取した食品を消化し、栄養素として吸収するために欠かせない「酵素(消化酵素)」について触れておきたい。
 
近頃では、酵素と言えば生物のそれではなく、洗剤に入っている添加剤としての方が馴染み深い。
 
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            「酵素が汚れを落とす仕組み」
 
食品汚れの主成分はタンパク質や脂肪であり、それらを分解する(正確には触媒となる)酵素は汚れを落としてくれることになる。洗剤に含まれている酵素は、タンパク質を分解するプロテアーゼ、脂肪を分解するリパーゼ、デンプンを分解するアミラーゼ等で、枯草菌等の微生物を培養することで大量生産されている。
 
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 現在では工業用として大量生産されるようになった酵素だが、世界で最初に発見された酵素は、人間の唾液や膵液に含まれるアミラーゼ(ジアスターゼ)である。アミラーゼは、デンプンを麦芽糖(マルトース)に変える働きを持つ。
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       「アミラーゼの立体構造」
 
また、腸液にはマルターゼという麦芽糖(マルトース)をブドウ糖(グルコース)に変える酵素や、ラクターゼというラクトース(乳糖)をブドウ糖(グルコース)とガラクトースに変える酵素が含まれている。
 
酵素はそのほとんどがタンパク質である。タンパク質はアミノ酸からできていて、アミノ酸は、炭素原子を中心にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-CH3)が結合している。
 
アミノ酸は、細胞内でDNA配列に従って合成されるが、人類の場合、体内で合成できるものとできないものとに大別される。体内で合成できず、食品から摂取しなければならない「必須アミノ酸」には、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンがある。
 
人類が体内で合成できるアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、チロシン、アスパラギン、グリシン、セリンがある。これらは、体内で作れるので「非必須アミノ酸」と呼ばれるが、むしろ身体にとって必須だからこそ、体内で合成できるようにしたのだろう。
 
逆に言えば、「必須アミノ酸」は食品から容易に摂取できるのである。
 
ネットでも、アミノ酸食品や酵素食品等多様な健康食品が販売されているが、こうした食品もすべてアミノ酸レベルまで分解されて吸収されることから、その効果については疑問視する声がある。
 
現代人に必須ミネラル(カルシウムや鉄分等)が不足しているのは事実のようだが、本当は必須の栄養素(アミノ酸を含め)を如何に日常の食品から摂取するか、という方が問題なのであって、結局そこには食品の市場構造の問題があり、あるいはメニュー、つまり食育(家庭)の問題がある。そうした問題の根本を置き去りにしたまま、目先に飛びついているのがいまの健康食品ブームだろう。
 
最後にもう一つ洗剤ネタ。
 
昔、洗剤が無かった時代には、米ぬかや米のとぎ汁を食器洗い等に使っていたが、米ぬかや米のとぎ汁には酵母が存在しており、実は酵母が出す酵素が汚れ(タンパク質や脂肪)を分解していたのである。こうした生活の知恵はどんどん失われつつある。

List    投稿者 blogger0 | 2007-10-06 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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