2007-10-05

細胞は動く

細胞にはさまざまな形態があり、一定のかたちを保っていますが、全くかたちを変えないわけではありません。
例えば、赤血球は形を変えて血管の中を移動していくし、マクロファージはアメーバのように仮足を出して細胞の隙間を動いていきます。
ほかにも鞭毛や繊毛を動かして移動する細胞(生物)もいます。
また動物の場合は、筋肉細胞の収縮運動によって、自由に動きまわることができます。

こうした、細胞が動くしくみ、生物が動くしくみは、どのようになっているのか、その機能は進化史上いつごろ獲得されたのか
・・・キーポイントは細胞骨格にあります。


気になる続きはポチっと押してからどうぞ

にほんブログ村 科学ブログへ

 にほんブログ村 科学ブログへ



●細胞骨格とは・・・
細胞内にある硬い繊維状構造のタンパク質。これが細胞の形態を維持し(細胞が一定の形を保っていられるのは細胞骨格のおかげ)、また細胞内外の運動に必要な物理的力を発生させています。細胞内での各種膜系の変形・移動と細胞小器官の配置、また、細胞分裂、筋収縮、繊毛運動などの際に起こる細胞自身の変形を行う重要な細胞小器官。アクチンフィラメント、中間径フィラメント、微小管の3つに分類されます。
※より詳しい説明はこちら・・・
→ウィキペディア「細胞骨格」
細胞生物学「細胞骨格」 

★ちなみに、動物の筋肉の収縮運動は、細胞骨格アクチンフィラメントとモータータンパク質の一種であるミオシンとの相互作用によっておこなわれています。
★進化史的にみると、細胞骨格は真核細胞登場の段階で獲得されたようです。
(原核生物には細胞骨格は存在しない)

「生命と進化」第4章 地球の進化と生命より引用。

真核細胞の食作用は、細胞骨格の働きによって行われている。アメーバや白血球が仮足を伸ばして移動し、あるいは獲物の細菌を取込もうとする時、その仮足にはアクチンフィラメントの高密度の網目構造が形成され、この仮足の先導端で細胞骨格タンパクのアクチンが連続的に重合する事により、細胞を一定方向に移動させている。つまり、細胞骨格の存在によって初めて、真核細胞に固有の複雑な動きが可能になっているのである。

例えば、原生生物(単細胞真核生物)の繊毛虫類(ゾウリムシ、ツリガネムシの仲間)で肉食性のDidiniumu は、直径約150μmの球体で体を繊毛の房でできた2本の輪が取り巻き、その繊毛を同調運動させて水中を敏速に動き回っている。その前部には鼻の様な突起が1つあり、ゾウリムシなどの獲物に出会うと、鼻の部分からおびただしい数の小さな麻酔針を放って相手に取り付き、自ら中空のボールの様に裏返って、自分と同じくらいの大きさの獲物を飲み込んでしまう。ここで見られる、活発に繊毛を動かして泳ぎ、獲物を麻痺させて捕え、細胞膜を変形させて飲み込むという複雑な行動は、細胞のすぐ下にある細胞骨格によって支配されている。このような捕食性の行動や、その基盤となる細胞の体制は、真核生物に特有のものなのである。

このように細胞骨格は食作用や細胞の運動、そして複雑な形や構造を生み出し、さらには細胞内膜系や他の細胞内構造を支持する事によって、細胞の大型化をも可能にした。また、真核細胞に特有の細胞分裂である有糸分裂では、細胞骨格の微小管でできた紡錘体が染色体を両極に引き寄せ、2つに分ける働きをしている。有糸分裂も細胞骨格があって初めて可能となったわけである。こうして見て来ると、真核生物の特徴のほとんどは細胞骨格と関連している事がわかる。つまり原核細胞から真核細胞への進化には、この細胞骨格の出現が不可欠だったのである。


つまり、真核細胞の登場とともに細胞骨格は形成され、真核細胞特有の複雑な形や構造、動きが可能となった。また真核細胞特有の有糸分裂も細胞骨格があってはじめて可能となった、というわけです。

真核細胞の登場というのは、知れば知るほど、本当に画期的な超大進化であったことが分かります。
こうした機能が生物の歴史を通じて連綿と受け継がれ、今の私たちがあるのですね。

List    投稿者 iwaiy | 2007-10-05 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2007/10/300.html/trackback


Comment



Comment