2007-09-17

環境と性決定の仕組み

哺乳類の場合、オス・メスの分化にはY染色体が大きな役割を持っています。その中でもSry遺伝子群の役割は大きい
また哺乳類は、胎内保育を行うために、オスとメスでは体のつくりが大きく違います。そして、オスメスの性転換はありません。不可能と言ってもいいでしょう。哺乳類は、性の役割分化をより特化させて進化してきた種です。

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一方で、哺乳類へ至までの脊椎動物を見た場合、環境条件によりオス・メスの性転換を行う魚類や、ふ卵の段階でオスメスが変化するは虫類は結構います。 🙄
ここでの環境条件とは、周囲の温度の違いや、一定のエリアにオスがいないと言う条件です。
種を存続する危機が発生した時に、性転換を行うのではないでしょうか。
(上記写真は、ベラの性転換・メスからオスへと性転換した2次オスです。)
そこで今回は、哺乳類へ至までの性転換について魚類について詳しく見ていこうと思います。
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●性転換を行う魚類について
「生命誌」通 巻24号「雄と雌が決まる仕組み 魚から鳥,哺乳類まで」より
性転換は魚の得意業:長濱嘉孝氏の記事を、抜粋で引用紹介します。

魚類の生殖様式はじつにさまざまである。雌雄異体が一般的だが、卵巣と精巣を同時に持つ雌雄同体の種もある。
また、個々で紹介するハワイ産ベラのように、自然条件下で性転換をする種も少なくない。この魚の雌は全長6cmに成長すると(生後1年以内)、成熟し産卵を始める。散乱を繰り返しながら性徴を続け、2年後に12.5cmほどになると性転換し、雄(二次雄)となる。
もちろん、生まれつきの雄(一次雄)もいるので、雄には2種類あるわけだ。(中略)
 水槽内で実験的に性転換を興すこともできる。大きさの異なる数尾の雌を一つの水槽内で飼育すると、1ヶ月あまりで一番大きな雌が雄に性転換する。(中略)おもしろいのは、性の転換は、大きい雌が自分より小さな同種の仲間が近くにいることを眼で見ることが引き金になるらしいのだ。小さい魚から性転換促進物質が出るのでもないし、相互の接触によるものでもないことは証明されている。

ベラの性転換については、水槽の実験でよく知られています。
もっとも大きなメスが周りの状況(周りはメスばかり)を認識しオスに転換する。
メスばかりでは種が存続でいないことを分かっているのでしょうね。
では、どのように仕組みで転換していくのでしょう? 🙄

 最近の研究から、性転換には性ホルモンが重要な役割を果たすこともわかってきた。エストロゲン(雌性ホルモン)は、アロマターゼという酵素の働きにより合成される。性転換を起こす前の雌では、この酵素の活性が強く、卵形成に必要な十分量のエストロゲンがつくられている。一方、性転換が起こる条件に置かれた雌では、この酵素の遺伝子の発現が急激に抑制され、エストロゲンの分泌が急激に減少する。
その結果、卵が消失し、構造的には雌雄の区別がつかない生殖腺となる。しかし、この状態は長くは続かず、すぐに合成されるアンドロゲン(雄性ホルモン)の働きで精子形成が始まり、成熟した精巣となる。
 このように、これまでは生態学的、社会行動学的研究が主流であった魚類の性転換の研究も、分子・細胞レベルで研究できるようになってきた。今後、視覚刺激から卵巣での遺伝子発現調節に至るまでの道筋が解明され、遺伝子から社会行動、生態学までつながるストーリーが書けるだろう。この過程に脳・神経系が関わることを示唆する報告もあり、ベラの性転換の研究が総合的な生物学への一つの道をつくる可能性がある。

ん~面白い。視覚刺激とは大型のメスが、「周りはみんなメスばかり、これではまずい!」と周りの状況を認識したんでしょう。そこで、自ら卵巣での遺伝子発現を調整し、オスのホルモンであるアンドロゲンを働かせ、精巣をつくりオスとなるんですね。
しかし、なぜメスがオスに転換出来るのか?
魚類については、最新のメダカの研究で、Y染色体上にあるDMY遺伝子が発見されています(リンク先参照)。
哺乳類では、Sry遺伝子群が性決定の役割を担っていますが、メダカではDMY遺伝子がその役割を担っています。哺乳類のX染色体とY染色体は結構ちがいますが、メダカのY染色体はこのDMY遺伝子を除けば、X染色体と同じだと分かってきました。
メダカのメスに、このDMY遺伝子を注入するとオスに転換するようです。
性転換を行う魚類の場合、メスのX染色体にも初めからこのDMY遺伝子等の性決定機構が組み込まれ、環境条件により発現するか?どうか?を決定しているのではないでしょうか(今後の研究が待ち遠しい)。
は虫類の場合、ふ卵段階で、周囲の温度環境により、オス・メスが変化する種が多くいます(ワニ類、多くのカメ類・一部のトカゲ類)。(参照:雄と雌が決まる仕組み 魚から鳥,哺乳類まで:島田清司氏
哺乳類の場合、Y染色体はX染色体と比較するとずいぶんと違います。進化の過程で、性決定をY染色体の有無に固定しています。そして同時に、種を維持するために、生まれた後の性闘争本能をより強化し、外圧に適応する仕組みを獲得してきました。

List    投稿者 yooten | 2007-09-17 | Posted in 未分類 | 2 Comments » 

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コメント2件

 能和一美 | 2007.10.17 16:47

はじめまして(^^)/
タイトルに興味を惹かれて訪問しました。
 生物の難しい(と決めつけていた??)話が、興味深く書かれており、面白く読ませていただきました(^.^)

 hadou | 2007.10.18 23:46

>能和一美さん
はじめまして。
コメントありがとうございます(^o^)/
私は生物に関しては中学生以来まったく勉強してこなかったのですが、調べてみると意外と(?)実感とも繋がるような事実も多くて気付き満載ですよ。
これからも宜しくお願いしますm(_ _)m

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