2007-09-06

性転換のしくみ

今日は、先日エントリーの「魚の性転換(雌雄同体)」「魚類の性転換の事例」 につづき、もう少しつっこんで、性転換の仕組みを考えてみます。
主人公は、両方向の性転換魚オキナワベニハゼです。

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琉球大学熱帯生物圏研究センター、中村將氏ほかの論文を参考に、性転換魚の研究を紹介します。
「サンゴ礁魚類の性分化,性転換機構の形態学的,生理学的研究」(pdf)
「魚類生殖内分泌系に及ぼす内分泌かく乱物質の影響の分子メカニズム」(pdf)

●オキナワベニハゼの性転換
・オキナワベニハゼは、体長2~3cm、全身が鮮やかなオレンジ色、鹿児島・沖縄のサンゴ礁に生息。
・複数の雌が特定の一尾の雄とだけ生殖を行う。集団内の雌の数は1~6尾で大きな雄ほどたくさんの雌を従えている。
・集団内の雄=最大個体がいなくなると、集団内で雄の次に体の大きい雌が雌から雄へ性転換する。
・ここまでは雌性先熟型の性転換(ベラなど)と同じだが・・・集団内に再び体の大きな雄が戻ると、そのまえに雌から雄になった個体が性転換し再び雌に戻る。
・また実験で、大きな雄と小さな雄を同じ水槽に入れると、小さな雄が性転換して雌となる。
・性転換は、相手との相対的な体の大きさの違いが直接因となり、雌雄を決定づけると考えられている。(実験では、大きさの差が0.2 mm以下でも、性転換は見られ、大きな個体が必ず雄として振る舞うらしい)
・実験では、オキナワベニハゼは何度でも両方向に性転換可能であることが確認されている。

●両方向に、何度でも、すばやく性転換が可能なのは?
・性行動は性転換の方向に関係なく30分以内で転換するらしい。(求愛行動などがはじまる)
・生殖腺の性転換も、雌から雄へは5 日間、雄から雌へは10日間で完了する。
・オキナワベニハゼの生殖腺は、同一個体内に精巣と卵巣とが同時に存在している。
・雌のときは卵巣が成熟し、精巣は未発達。逆に雄のときは精巣が発達し、卵巣が未成熟となる。
・性転換の時には、成熟していた卵巣または精巣が退行し、未熟な精巣または卵巣が成熟して完了するプロセスを経る。
・こうした特殊な生殖腺構造がオキナワベニハゼの両方向性転換を可能にしている。
(他の雌性先熟/雄性先熟の性転換魚は、退行した生殖腺が消失・吸収されてしまう)

●性ホルモンのはたらきは?
・生殖腺刺激ホルモン(受容体)は、雌のときには、精巣での発現は低く卵巣で強く発現。性転換時の生殖腺での発現は、性転換の方向に従って急速に変動する。雌から雄への性転換時には、卵巣から精巣、雄から雌への性転換時には精巣から卵巣へとその発現部位が急速に切り替わる。
・性ホルモンの性転換に果たす役割としては、女性ホルモン合成に必須な芳香化酵素が、雌から雄への性転換時にその発現が急減し、逆に雄から雌への性転換時には、その発現が上昇することが確認されている。
・つまり、性転換には女性ホルモン=エストロゲンの増減が重要な働きを持つと考えられている。

★こう考えてくると、性ホルモンって何?(どんな物質? どんなはたらき?) 生物進化の歴史で性はどのように分化してきたのか?(生殖細胞の精子・卵子への分化と、雄個体・雌個体の分化への間はどうなっているのか?) 結局、性は一体どのような仕組みで決定されるのか? などなど、いろいろ疑問が湧いてきます 🙄
続いてのエントリーでは、このあたりを考えていく予定です

List    投稿者 iwaiy | 2007-09-06 | Posted in ①進化・適応の原理2 Comments » 

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コメント2件

 天野 高男 | 2011.02.26 17:15

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食文化の変化に伴い肉や魚と加工食品が多く用いられる食卓では、生の野菜、海藻、果物が少ない事から消化酵素の消費が増える現状です。
これでは病気にならないのが不思議な位の環境に変化しております。
利益を追求する事が主眼とする企業が多すぎるのではないでしょうか。
作物栽培にしても、自然の摂理を重んじた陰暦の活用の広がりを期待したいものです。

 Takao Amano | 2011.02.26 17:41

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食文化の変化ががん患者を増やしいるのが現状です。
ステーキ、焼き肉、しゃぶしゃぶに加工した食品が食卓に並ぶのでは・・・
生の野菜、海藻、果物を多く摂取しなくては消化酵素の浪費が重なるばかりです。
栄養ばかりを重視することよりも、自然の野菜果物などの生ものと漬物、みそ、納豆を多く取り入れた健康を考えましょう。

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