2007-08-14

真核細胞の肉体改造

大腸菌のような原核生物が細胞分裂する際には、核分裂とともに、分裂装置をつくるタンパク質が分裂面の内側に集まり、リングを形成します。次に、このリングが収縮することによって細胞膜がくびれこみ、細胞質分裂がおこります。
この分裂装置をつくるリングは、チューブリン様タンパク質と呼ばれ、他の真正細菌だけでなく、古細菌をはじめ、ほとんどすべての原核生物に存在します。
始原真核生物においては、この分裂に使うタンパク質をより柔軟性の高いアクチン繊維に切り替えます。
細胞核分裂が終期に近づくころ、アクチン分子を細胞分裂の赤道面に終結させ、収縮リングを形成し、このリングを収縮させることによって細胞膜を陥入させ、分裂を誘導します。この機能は、高等な動植物まで変わっていません。
実は、このアクチン繊維は、細胞の内側の補強に使われており、強力な細胞骨格系を形成しています。これにより、真核生物においては、次の三点を実現しています。
他の細菌を細胞表層で捕らえ、細胞内に包み込んで小胞をつくり、そこで分解して吸収するという「食作用」の強化。
細胞膜直下に編み目のように張りめぐらしたアクチン繊維のネットワークによって細胞膜を強化し、これをつかって這うというアメーバ運動の完成。
ふだんは細菌を捕食したり、アメーバ運動につかっていたアクチン繊維を、増殖時には細胞質分裂へ使用すること。

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一方、それまで分裂装置に使われていたチューブリン様タンパク質は、染色体を運ぶ「紡錘体」の微小管をつくる素材へと変換し、「核分裂」の主役装置となります。また、核分裂だけでなく、紡錘体の両極にある中心体から細胞質側に突起を出し、これがやがて「鞭毛」になったと考えられているそうです。
多くの生物では、細胞分裂のときは中心体から紡錘体が形成されますが、細胞分裂をしていないときには、中心体から鞭毛が形成され、細胞はこれを活発に動かすことにより、這いまわったり、泳ぎ回ったりするようになります。この速度はアクチン繊維をつかっていたときの数十倍にもなるそうです。
参照「細胞分裂と細胞周期」→細胞分裂の図
(参考)細胞分裂の際には、チューブリン様タンパク質が、紡錘体の両極にある中心体と染色体の動原体の間を結び、引っ張るようにして染色体を極へ引き寄せます。引き寄せるしくみは、染色体が動原体部分で微小管を分解し、微小管が短くなることで極の方向に移動します。
参考サイト(動物細胞の紡錘体模式図
(以上、参照・引用は黒岩常祥「細胞はどのようにうまれたか」より)
真核生物は、アクチン繊維による膜の強化と、それまで分裂に使っていたチューブリン様タンパク質の活用によって、原核生物に比べ高度な運動・感覚機能や摂食システムを獲得したのです。
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List    投稿者 kumana | 2007-08-14 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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