2007-08-10

組織論的アプローチからの進化論

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 40億年前に誕生した生命の起源は、原核細胞と呼ばれる核を持たない細胞が1個1個独立して存在する単細胞生物の時代から始まった。

 この原核単細胞生物もその後の20億年の歳月の中で、食い合いや他者の取り込みの延長線上で、取り込んだ他者をすべて消化分解し切ってしまうだけではなく、自らの細胞内器官として活用することで、生命機能の高度化が果たされた。地球上にまだ酸素が少なかった時代に登場した最初の原核細胞細胞生物は、酸素を嫌うという意味で嫌気性細菌と呼ばれているが、この生物は、後に酸素を活用することに成功した好気性細菌と共生する(=体内に取り込む)ことによって、真核細胞生物に進化していく。

 真核細胞生物の細胞内には、遺伝子を格納している核以外に、生体膜で囲われた様々な小器官が存在して、それぞれが独自の働きをしている。例えば、ミトコンドリアと言われる小器官は、酸素を分解してエネルギー生成の仕事をしているが、これは前述の好気性細菌を前身としたものだ。また、後に植物に進化していく真核細胞生物には、光合成を行うことのできるシアノバクテリアを取り込んだと考えられているクロロフィル(=葉緑体)という小器官が存在して、水と二酸化炭素から糖質と酸素を精製している。

 このように、真核単細胞生物とは原核単細胞生物が寄り集まって、より上位の階層で全体を統合する組織機構を実現したものと見なすことも可能だ。生物界では真核細胞内に存在する小器官をオルガネラと総称するが、それ以前にはひとつの生命体として存在していた原核細胞生物が、真核細胞時代には、単独では生きていけないかわりに、新しい生命体‘全体’を協働して支えていくオルガネラという‘部分’に継承されることで、生命体自体は真核細胞という新しい次元での生存を勝ち取ったとも言えるだろう。

 このような‘組織的階層進化’とも呼べる様相は、真核単細胞生物が多細胞生物に進化していく段階にも見てとれる。言うまでもなく多細胞生物は数限りない真核細胞で構成されているが、これは、原核単細胞がオルガネラに言わば‘後退’することで真核単細胞生物という新しい位相に進化したのと同様に、真核単細胞が要素や部分(≒オルガネラ)に‘後退’することで、多細胞生物という次のステップの統合様式が登場したように見える。

 さらに、真核細胞の集合体・統合体として生存している多細胞生物も、次の階層では群れ=集団を形成し、生存そのものを集団に依存しながら、種としての存続を続けている。もっと言えば、集団動物の中でも共認機能を手に入れた霊長類は、集団単位の同類闘争という新しい様式に適応して、集団という階層のさらに上位に位置する社会という場を主要な生存域としようとしている。

 つまり生物史とは、前の生命体が部分として活躍できる新組織を実現していく中で、新組織の統合様式が階層的に進化することで今日までの系譜を残してきた。この‘階層進化’とは‘新パラダイム’の到来・獲得に他ならないと思う。我々が最近よく耳にする‘パラダイム・シフト’という言葉も、生物史を紐解いてみれば、生命の進化メカニズムの基底的な構造や摂理のひとつと捉え直すことができるだろう。

 人類が迎えている現代のパラダイム転換・・・。この意味することも、人類に対する組織的統合次元のステップアップへの要請だと考えてはどうだろうか。  by S.Tsuchiyama

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List    投稿者 staff | 2007-08-10 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 zen | 2007.09.05 16:00

細かい点ですが、
七面鳥が単為生殖するって、本当ですか?!
(本当だとすればかなりオドロキです)

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