2007-01-10

ニホンザルのコミュニケーション

サルにはいろんなコミュニケーション手法があるんです
まるで人間の日常会話のように交わされていて、サル関係(?)や集団間の関係をとりもつようなコミュニケーションが存在します。
本日は、小田亮さんの著書、「サルのことば」(京都大学学術出版会)に書かれているニホンザルのコミュニケーションについてご紹介しますね 😀
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写真は下北半島のサル調査会さんからお借りしています

●屋久島のニホンザルのコンタクト・コール
 ヒト以外の霊長類の音声のなかでも目立つのは、叫び声、悲鳴の類や警戒音である。しかしながらかれらはもっとおだやかな日常的な音声レパートリーももっている。」かれらが日常の活動の際に発するある種の音声は一般にコンタクト・コールと呼ばれており、低く、澄んだ音で、個体のあいだにしばしば鳴き交わしがみられる。その様子はヒトの日常会話を思い出させるものだ。森林のなかでは群れのメンバーが互いの姿を確認するのが困難な場合が多いことから、この音声を鳴き交わすことにより互いの位置を確認しあい、集団のまとまりを保っているのだと考えられている。彼らは決してランダムに音声を発しているのではなく、そこにはルールやパターンがみられる。
 鹿児島の沖、屋久島の森に分け入るとニホンザルが「クー」「クー」と鳴きかわすのを聞くことができる。京都大学の杉浦秀樹によると、このクー・コールはまったくでたらめに鳴き交わされているわけではない。ある個体が「クー」と鳴き、続いて別の個体が鳴いたときの時間間隔を調べると、続いて発せられたクー・コールの80パーセント以上た先の音声から0.7秒以内におこっていることが明らかになった。また同じ個体が連続して0.8秒以内に続いて発声することはほとんどなく、90パーセント以上が0.8秒すぎてからおこっている。つまりニホンザルには、誰かの「クー」コールに応答したければ0.7秒以内に発声するというルールがあり、先に発した個体は0.8秒待てみて応答がなければ再度発生を繰り返していると考えられる。かれらの間には一種の会話のルールのようなものが共有されているといえる。
 かれらがもっているのはこのような時間的ルールだけではない。あるクー・コールから0.7秒以内に発せられた応答と考えられるクー・コールを録音し、周波数分析をおこなったところ、その音響的特徴が先行するクー・コールによく似ていることが明らかになった。例えば先行するクー・コールが抑揚の大きな音であれば、返事のクー・コールの抑揚も大きくなるし、小さな抑揚であれば返事のそれも小さくなる。0.7秒以降のクー・コールにはこのような現象は見られなかった。つまり、ニホンザルはクー・コールに応答するとき、相手のクー・コールに似せた音声を発しているのである。クー・コールがかなり意図的に調音されていることを、この研究は示している。
 では、彼らはこのクー・コールをどのような相手とよく鳴き交わしているのだろうか。ニホンザルはメスとそのコドモを中心とした母系社会を形成しており、複数の家系が集まってひとつの群れをつくっている。やはり屋久島のニホンザル集団についてクー・コールの鳴き交わしの頻度を調べた研究によると、各家系の母系家長、つまりその家系でいちばん上にいるメス同士のあいだに頻繁に音声交換がおこっている。

サルも人間も仲間同士の関係を円滑にしたいっていうところは同じなんですね~
そして、「鳴き交わし」のほかに、仲良くなる手段がもうひとつあるんです。
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この画像は、h第5回屋久島フィールドワーク講座さんからお借りしています。

●グルーミング
 コンタクト・コールはわたしたちの日常会話を連想させるものだが、ヒト以外の霊長類には他にも日常的なコミュニケーション手段がある。毛づくろい、あるいはグルーミングと呼ばれるものだ。動物園などでニホンザルを見かけたことのあるある方はきっと目にされていると思うが、寝転んでいる相手の毛を指や口でかき分け、一生懸命何かを取っている光景がよく見られる。またお互いに対してするだけでなく、ひとりで自分自身におこなっているサルもいる。(中略)
 
 身体についたゴミや寄生虫を取り除く、つまり衛生的機能というのがグルーミングの第一の機能だ。しかしながらグルーミングのもつ意味はこれだけではない。イギリスの霊長学者R・ダンバーは、原猿から類人猿まで44種の霊長類のデータを用いて、グルーミングの機能について調べた。グルーミングには、自分自身を毛づくろいする自己グルーミングと、他の個体を毛づくろいする社会的グルーミングの2種類がある。ダンバーは、一日の活動時間のうち社会的グルーミングに費やされている時間の割合を、それぞれの種において調べた、さて、グルーミングが衛生的機能しかもっていないなら、単純に考えて身体が大きい種はそれだけグルーミングに時間がとられるはずである。しかし、身体の大きさとグルーミング時間割合のあいだには相関は見られなかった。次に、ひとつの群れに含まれる個体の数、つまり群れサイズの大きさとグルーミング時間割合の関係をみてみるとこちらには正の相関があった。群れが大きな種ほど、グルーミングに多くの時間を割いていたのである。群れサイズが大きくなるということはそれだけ個体間のつきあいが多くなるということを意味する。社会的グルーミングが単に衛生的機能をもっているだけでなく、群れ内のコミュニケーション手段として使われていることをこの研究は示唆している。(中略)
 さて、面白いのは、霊長類の脳の大きさもまた、群れの大きさと相関しているということである。


「霊長類」のと条件付なところに気がつきましたか?
共認機能をもつのは、サル・人類のみ。
脳の大きさと集団規模、そして日常会話的なコミュニケーションの相関関係があることと共認機能の発達にも関係がありそうです。
集団規模が大きくなるということは同類圧力も大きくなるということを意味するのではないでしょうか。
同類圧力をどうする?という課題をコミュニケーションという手段で解決することで共認機能が発達し、脳も大きくなったと考えられます。この先に人類もある。これってすごくないですか~?
「仲間とどう生きるか」ってサルのころから重要課題だったんですね

List    投稿者 bunchan | 2007-01-10 | Posted in 4)サルから人類へ…No Comments » 

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