2012-12-17

太陽系を探検しよう-24.太陽系の起源、非常識?な系外惑星の姿

前回の記事の続きです。
 
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太陽系外惑星のイメージ図(星ナビ)より
  
1970年代に標準モデルの基礎となる説が日米で相次いで発表されます。その後、これらの説を裏付ける観測データも得られ、標準モデルとなっていきました。しかし、1995年以降に系外惑星といわれる太陽系以外の惑星の姿が観測できるようになり、その惑星の“非常識”な姿に、それまでの常識が覆されます。当然、それに裏付けられた標準モデルが大きく揺らぎます。実はそれまでの常識が、太陽系の常識でしかたかったことがわかりました。

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系外惑星の発見
 
系外惑星は1940年代から始まり、いくつかの発見がありましたが、当時の観測技術の限界から、今ではそれらすべてが間違いだとされました。近年の系外惑星の発見は、観測技術の向上が契機となっています。そもそも、惑星は光を発していないので、現在でも直接観測することはできません。
 
では、どうやってその存在を知るかというと、恒星の回転の揺らぎ(に伴う光の周波数変化)を観測します。ハンマー投げの選手のように、太陽も惑星の重力で円運動をしています(固定点は重心)。その振れ方(速度)から惑星の存在を推定するのです。たとえば、太陽は木星があることで12年周期・振幅13m/sで周っています。
 
さらに、惑星が恒星の前を通るときの光の変化を観測し、惑星の大きさや重さを推定します。この微妙な揺らぎを観測するには望遠鏡の精度が要求されるのです。木星レベルの惑星を発見できる精度に達したのが1990年代半ばでした。
 
pegasasuza51.jpgもうひとつ、発見を遅らせた原因は、太陽系の常識です。太陽の近くに巨大惑星などあるはずがない、という思い込みが、そのような比較的発見しやすい天体の発見を遅らせました。最初に系外惑星を発見したのが1995年、スイスのマイヨールたちのグループでした。彼らは惑星には詳しくなく、先入観を持たなかったため、目の前のデータを慎重に調べていきました。そして、ペガサス座51番星(右写真)に惑星を発見したのです。
 
彼らの発見した惑星は、中心星から0.05天文単位の距離を4.2日で周る巨大ガス惑星(質量は木星の半分)でした。それまでの常識は巨大惑星は5~10天文単位の位置を10~30年かけて周るというものでした。
この常識破りの惑星の発見を契機に、続々と系外惑星が発見され、2012年までに800個以上が発見されています。それまで「他の恒星には惑星は無い」とまで言われていたのが一転、「惑星は普遍的存在で、地球のような惑星もあるのでは?」に変わりました。
 
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太陽系外惑星の2011年07月10日までの年別の発見数。色は観測方法。Wikipediaを加工
 
 
ホットジュピターやエキセントリック・プラネット
 
hottojupita.JPG発見された惑星のうち約4分の1はペガサス座51番星の惑星のように、中心星のごく近くを数日で一周する巨大ガス惑星です。中心星に近く表面温度は1000度を越え、ホット・ジュピターと呼ばれています。また、系外惑星の約3分の2は歪んだ(離心率0.2以上の)楕円軌道をもっており、離心率の大きい星はエキセントリック・プラネットと呼ばれています。(※離心率は真円=0、扁平なほど1に近づく。地球は0.08、水星は0.2)。(2006年データ)また、質量が地球の数倍程度と小さい惑星も発見されており、これはスーパーアースと呼ばれています。
  
下の図は代表的な系外惑星が中心星に対してどのような軌道になっているのかを示した図です。わかりやすくするため、太陽系の水星・金星・地球の軌道を重ね合わせています。なお、星座の名前は中心星がその星座の方向にあることを表しています。
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発見当初は、そのたびに新たな説が発表され、その世界は活況を呈しました。しかし、ある程度数が揃ってくると、それらを統一的に説明できる理論の構築へと向かいます。その中には、標準モデルを覆そうとするものもあります。更には、太陽系で否定された重量円盤モデルを基礎に置こうとするものもあります。しかし、それでは太陽系が説明できなくなります。
  
現在のところ、有力と考えられる説は、標準モデルを基礎としつつ、太陽系以外は特殊条件で成立するというものです。そのような立場に立つ東工大の井田茂氏(惑星科学)の説を紹介します。※強調及び一部は投稿者が補足。
  

惑星系は円盤から生まれるのだから、一番重要な決め手は、円盤の質量だ。観測によると、若い星(Tタウリ型星)のまわりの円盤の質量は、太陽質量の千分の一から十分の一に分布し、平均は百分の一と推定されている。われわれの太陽系の「復元モデル」は太陽質量の百分の一で、Tタウリ型星の円盤の平均質量に一致する。だから、太陽系は平均的な惑星系だと考える。
   
すでに検出された3%の系外惑星というのは、ドップラー効果で見つけやすい特別な(中心星に近く、質量が大きい)惑星に対応しており、残りの97%は太陽系のような惑星系を持つが、それらはまだ観測精度の問題で見つかっていない(のではないか)。円盤の寿命も観測を見る限り、みな一千万年ぐらいのようなので、円盤の寿命はまわりの環境の偶然性で決まるのではなく、内在的な原因で必然的に決まると考える。
   
さらに、(円盤消滅のタイミングで決まると提唱した)アルティモビッチとは正反対に巨大ガス惑星が中心星に落ちるということはある条件下でしかおきないと考える。この過程はまだ、理論的に決着していない。僕の仮説では、ホット・ジュピターや楕円軌道円盤は、太陽質量の十分の一くらいの重い円盤でできると考える。重い円盤では固体の材料物質が多く、標準モデルの見積もりによると、できあがる固体惑星の大きさは円盤の重さの2分の3乗に比例して大きくなる。重い円盤では氷が凝結しない領域でも大きな固体惑星ができ、かなり内側の領域でも巨大ガス惑星が形成される。重い円盤では惑星に流入せずに残ったガスの量が大きく、巨大ガス惑星を中心星まで押していくのに十分なだけあるだろう。それで、ホット・ジュピターができる。
   
また、重いガス円盤では巨大ガス惑星が形成されやすく、3個以上できることが多いだろう。そうすると軌道不安定がおきて楕円軌道惑星ができる。太陽質量の10分の1くらいの円盤は円盤の中で10%未満なので、ホット・ジュピターや楕円軌道円盤の確率が3%というのは妥当だ。
    
逆に軽い円盤を考えると、固体惑星はどの領域でも地球質量の10倍に達せず、すべて地球型が惑星として残ると考えられる。太陽系くらいの円盤ではなんとか1個か2個の巨大ガス惑星ができた。惑星が流入しないで残ったガスの量はあまり多くなくて、巨大ガス惑星を中心星の近くまで押すことはできない。
    
「木星型惑星の形成時間の問題」というのがあったが、それは、太陽系のような平均的な円盤では、巨大ガス惑星のコアをつくるのに時間がかかり過ぎて、円盤の寿命内でつくるのが難しいというものだ。裏を返すと、それくらいぎりぎりなのがいい。もっと重い円盤で、材料物質がたくさんあってコアが早くできると、3個以上の巨大ガス惑星ができて不安定になってしまう。形成時間が問題となるくらいでちょうといいのだ。
   
一方、もっと軽い円盤になると巨大ガス惑星はできない。(木星が彗星のタネを太陽系外にはね飛ばしたとした)ウェザリルの考えにしたがうと、地球型惑星への破滅的彗星衝突を防いでくれるものがいなくなる。それは、生命にとっては都合が悪いかもしれない。
    
観測精度が上がって、残り97%の恒星に少なくとも巨大惑星はないのか、それとも多くの太陽系型惑星系があるのかが、明らかになるのがとても楽しみだ。

  
起源となるガスの量に応じて、その結果生じる恒星系の在り様が決まるというのは、もっともな説だと思われます。
 
現在、太陽系起原説については、まだ定説と呼べるものはありません。
次回は、これまでと違う視点からの起源説をご紹介します。
 
参考文献
井田茂著「惑星学が解いた宇宙のなぞ」

List    投稿者 kumana | 2012-12-17 | Posted in ⑫宇宙を探求するNo Comments » 

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