2012-10-25

太陽系を探検しよう-21.地球生命の起源(5)共通の祖先は超好熱菌

前回深海熱水活動域と、そこに生息する、地球に最初に生まれた生命と考えられる化学合成細菌の発見をみました。
今日は、リボソームRNA(以下、rRNAと表示する)の分子配列から、微生物を含むあらゆる生物を網羅した進化系統樹(下図)をつくることで、真正細菌でも真核生物でもない、まったく新たな第三の生物界である古細菌(アーキア)が発見されたこと、そしてすべての生物の共通の祖先(=生命の起源)が「超好熱菌」であることを紹介します。
 
この発見は、1977年にイリノイ大学のカール・ウーズによってなされたが、この年は(前回紹介した)ガラパゴスリフトの深海熱水活動が発見された年でもあり、そこに生息していた化学合成細菌は、ウーズの発見した「古細菌」の仲間だったのです。
因みに、共通の祖先である「超好熱菌」の多くも古細菌の仲間です。
    
 図.生命の系統樹 (アンドルー・H.ノール著『生命 最初の30億年』より)
image20130207002.gif
     
(図の補足)左下の細菌で、四角で囲まれているのは光合成生物のいるグループだが、これらは枝の先端部分しか占めないことから、地球初期の生態系ではないことを示している。また、赤色の太線超好熱菌(高温の環境に住む生物群)を表す。
 
共通の祖先(=生命の起源)から、細菌(真正細菌、バクテリア)と古細菌(アーキア)に進化し、その後古細菌の近縁または古細菌そのものから真核生物の本体が進化したと考えられている。
 
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1.リボソームRNAとは
 
ウーズ以前の進化学では、タンパク質のアミノ酸配列の比較によって、進化の系統が定量的に議論できるようになっていたが、原核生物(バクテリアとアーキア)は「細菌」と一括りに呼ばれており、非常に小さく形も単純で、その形も一定でないことなどから、真核生物と同じ土俵で議論できないと思われていた。
 
↓原核細胞(こちらよりお借りしました)
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そんな状況で、カール・ウーズはrRNAという分子に目をつけた。
リボソームはタンパク質を合成する細胞内小器官で、タンパク質と数種類のrRNAからできているが、その役割の重大性ゆえに、すべての生物に共通して存在し、細胞内の量も半端なく多い。また細胞内の高分子の中でも最高クラスの重要高分子なので、そう簡単には変異しない。
 
rRNAの遺伝子の分子配列を比較し系統進化の関係として表せば、小さくてよく分からなかった原核生物にも光を当てることができるとウーズは考え、1977年、細菌と真核生物の違いと同じくらい、古細菌が細菌(真正細菌)と離れていることを発見した。
 
 
2.古細菌と真正細菌の違いって
 
%E8%B6%85%E5%A5%BD%E7%86%B1%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E8%8F%8C.bmp1996年、古細菌メタノコックス・ヤンナスキイのゲノム(DNAに暗号化された遺伝情報)の全配列が公表されたが、すでにゲノムの配列が決定されている複数の細菌と11~17%しか共通の遺伝子を持っていないことが明らかになった。(右図は超好熱メタン菌。こちらよりお借りしました。)
 
また50%以上の遺伝子は、真核生物にも細菌にも見つかっていないもので、古細菌が他の二つのドメイン(界)の生物とは明らかに違うことを裏付けていた。
 
とはいえ、原核生物に特有な細胞組織、リボソームの分子構造、1個の環状の染色体の遺伝子配列など、細菌と共通する重要な形質をもっている一方で、DNA転写の分子的な仕組みや特定の抗生物質に対する感受性など、真核生物と共通する特性ももっている。
 
さらに、古細菌だけが異なるユニークな形質もある。その筆頭が細胞膜の性質だ。
多くの場合、古細菌の細胞組成は高温や低温などの過酷な条件に耐えうるようになっており、ほぼすべての極限環境におびただしい数の古細菌が存在するが、比較的穏やかな環境にはほとんど生息していないことが、他の生物と大きく異なる点である。
 
 
3.共通祖先は超好熱性細菌
 
ウーズのrRNAを使った全生物の系統樹は、その根本に当る収束点が、すべての生命の始まりの系統型あるいは遺伝型であることを示しており、ウーズはそれをprogenote(プロジェノート)という概念で表現した。
それは1個の単独の生命を想定するものではなく、原始タンパク質や原始RNA、原始DNAが寄り集まった「共栄養体」のようなものではないかと述べている。(progeny:「集合的」子孫というニュアンスを持つ言葉。)
そして、古細菌のような極限環境微生物が共通祖先ではないかとも述べている。
 
%E9%80%B2%E5%8C%96%E7%B3%BB%E7%B5%B1%E6%A8%B9.bmpその後の研究から、系統樹の共通祖先の付近の枝分かれが、すべて「好熱性」の微生物であることが明らかになっている。(右図参照。こちらよりお借りしました。)
 
これらの微生物は、だいたい50℃以上の温度でよく増殖するが、80℃以上で最もよく増殖する微生物は「超好熱菌」と呼ばれる。
 
よって共通祖先は好熱性、特に超好熱性の可能性が最も高いが、このことは、40億年前の地球環境を考えた時、エネルギー獲得の面から考えて、最も安定的に生態系を維持できるのは熱水活動域であり、熱水に近い位置になればなるほどエネルギー獲得に有利なことからも支持される。
 
超好熱菌(これには超好熱アーキアも超好熱バクテリアもどちらも含まれる)には、ほとんどあらゆる嫌気的(酸素を使わない)化学合成エネルギー代謝のパターンが見られる点も、超好熱菌が原始的に見える性質を有していると言える。
 
これは、原始地球の弱々しい太陽の光を利用する術を持たず、かつ弱々しい光のわりには危険な宇宙線や紫外線が降り注ぎ、生命活動を維持するのが困難だった表層環境ではなく、惑星の多様な化学エネルギーに満ち溢れていた暗黒の深海の熱水活動域で、それぞれ異なる環境に適応していたなごりではないだろうか。
 
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参考:高井研著『生命はなぜ生まれたのか 地球生物の起源の謎に迫る』
   アンドルー・H.ノール著『生命 最初の30億年』
   ロブ・ダン著『アリの背中に乗った甲虫を探して』

List    投稿者 okamoto | 2012-10-25 | Posted in ⑫宇宙を探求するNo Comments » 

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