2010-05-16

哺乳類の起源と歩み~哺乳類の多様化と進化系統~

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※哺乳類の進化系統図
 参考文献:大哺乳類展(国立科学博物館、朝日新聞社)、小学館の図鑑NEO「大むかしの生物」、恐竜VSほ乳類(NHK)、Yahoo!きっず図鑑(リンク
大きなサイズの画像はコチラ
「哺乳類の起源と歩みシリーズ」も終盤です。
これまで見てきたように、哺乳類の誕生と進化の歩みは「逆境の連続」でした。そうした厳しい環境をくぐり抜け、現在では世界中に5000種以上の哺乳類が生息しています。
今日は、これら哺乳類の進化系統を整理してみたいと思います 8) 。
※これまでのシリーズ記事
哺乳類の起源と歩み~生物史は大絶滅の歴史であり、逆境によって進化してきた
哺乳類の起源と歩み~逆境の連続が哺乳類を生んだ①「先哺乳類の誕生」 
哺乳類の起源と歩み~逆境の連続が哺乳類を生んだ②「原哺乳類の登場」
哺乳類の起源と歩み~(原モグラ)時代の性闘争「哺乳類の危機」 
哺乳類の起源と歩み~原モグラ時代の性闘争「弱者ゆえの本能進化と雄雌分化」 
哺乳類の起源と歩み~(原モグラ)時代の性闘争本能「性闘争本能がもたらす適応矛盾とさらなる進化」 
哺乳類の起源と歩み~他種との縄張り闘争に負けて樹上に逃避したのが霊長類の祖先~

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■中生代の初期哺乳類
哺乳類は単弓類(先哺乳類)のなかのキノドン類から進化し登場しました。
中生代の哺乳類はモグラやネズミくらいの小型動物で、食虫性、夜行性の特徴を持ち、は虫類等から隠れ住む密猟捕食の弱者でした。
「原哺乳類の登場」で触れたように、こうした状況下で、心肺機能、恒温性、胎生、咀嚼に優れた臼歯、聴覚、脳(大脳新皮質)の発達と進化を遂げてゆきます。
(系統的には子育ての袋を持つ有袋類、胎盤を持つ真獣類に分かれます)
※エオマイア
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■哺乳類の第一次適応放散(新生代初期)
中生代、白亜期末の大絶滅をくぐり抜けた哺乳類は世界各地に適応放散します。
有袋類は南米とオーストラリアを除いて衰退しますが、真獣類(胎生哺乳類)は北半球の大陸を中心に、様々な大きさ、形態、食性、生態に多様化を遂げ繁栄してゆきます。
ただし、この時期の初期哺乳類は一部を除いて今日まで生き残っているものはありません。
※テトラクラエノドン
原始的な真獣類としてはもっとも基本的な形態を持っていたといわれる動物。
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■哺乳類の第二次適応放散(新生代)
新生代は「哺乳類の時代」とも呼ばれますが、新生代に入って1000万年が過ぎると、現在の哺乳類につながる多くのグループが登場します。食肉類、奇蹄類、偶蹄類、小型哺乳類等々のグループで、第一次適応放散のグループに取って代わるようになります。
新生代前半は地球規模で森林が広がっていましたが、約3400万年前あたりから寒冷化と乾燥化が進み、草原が増えます。それにともなって草食系の有蹄類や齧歯類が出現し、その繁栄は現在まで続いています。
●食肉類
肉食性の系統で、ジャコウネコ、マングース、ハイエナ、ネコ、イヌ、クマ、アザラシ、アシカ、セイウチ、アライグマ、イタチなどが該当します(「哺乳類の進化系統図」の食肉目を参照)。おおざっぱに言うと、アザラシ・アシカ・セイウチ系、クマ・イヌ系、ネコ系の仲間に分類されます。
例外的に南米とオーストラリアには肉食性の真獣類がおらず、有袋類と鳥類が食物連鎖上の肉食動物の位置を占めていました。
※ダフォエヌス
クマとイヌの中間動物の仲間だが、オオカミにも近い
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●奇蹄類
手足の指の数が奇数で、第三指が中心軸になっているグループ。サイ、バク、ウマなどが該当します(「哺乳類の進化系統図」の奇蹄目を参照)。
ウマの仲間は、進化の歴史の中で、草原を早く走れるように体を変化させてきました。進化するにつれて、足の指の数は4本or3本→1本へとだんだん少なくなりました。
※パレオテリウム
ウマの近縁だがバクのような体形、亜熱帯的な森林に生息。
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●偶蹄類
奇蹄類と同様、哺乳類の第二次適応放散で登場したグループ。手足の指が偶数で、体重を支える足の中心軸が第三指と第四指の両方に均等に通っています。ラクダ、ペッカリー、イノシシ、カバ、マメジカ、キリン、プロングホーン、ジャコウジカ、シカ、ウシなどが該当します(「哺乳類の進化系統図」の鯨偶蹄目を参照)。おおざっぱに言うと、ウシ・シカ系、イノシシ・カバ系、ラクダ系の仲間に分類されます。
※アーケオテリウム
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なお系統図にもあるように・・・なんと、クジラやイルカもこのグループに属すると考えられています 。クジラ、イルカの系統図をたどってみると、カバとの共通祖先から枝分かれしているのがわかります。さらにたどるとイノシシとの共通祖先から・・・おもしろいですね。
※パキケトゥス(画像はコチラからお借りしました)
クジラ類の最古の仲間、足が四本あり陸上を歩いていました。
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●小型哺乳類
ネズミ(齧歯類)、コウモリ(翼手類)、トガリネズミ・モグラ(食虫類)等々の仲間は体が小さく目立ちませんが、原生哺乳類約5400種のうち約3900種を占めます。これらの進化の様子(進化系統)は専門家の間でもよくわかっていない点が多いようです。
原哺乳類=原モグラ(原モグラ時代の性闘争参照)から様々な小型哺乳類に適応放散し、その中から霊長類(原猿→真猿→人類)へと進化する種も登場しました。
※参考文献:大哺乳類展(国立科学博物館、朝日新聞社)、小学館の図鑑NEO「大むかしの生物」、恐竜VSほ乳類(NHK)
もとは原モグラであった哺乳類。
各地に散らばっていきそれぞれの外圧に適応していった結果、多種多様に分かれていきました。
生物は多面的な外圧適応態であるということがよくわかりますね 😀 。

List    投稿者 MASAMUNE | 2010-05-16 | Posted in 2)知られざる原始哺乳類1 Comment » 

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コメント1件

 west-farm | 2011.01.05 21:47

やってきました。
じっくり見させてもらいます。
ふむふむ、
何かとまた よろしくです(^^

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