2008-12-26

Science誌2008年科学的進歩ベスト10

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Scienceは、2008年科学的進歩ベストテンの第1位に、疾患に罹患した患者の細胞を再プログラミングすることにより細胞株をオーダーメイドで作製するという研究を選出した。


  
京大の山中伸弥教授らのグループによってはじめて作られたiPS細胞が今年の1位に選出されたようです。今年はiPS細胞関連の書籍もたくさん出版されていましたし、世界的にもかなり期待が高まっているようですね Scienceのサイトにも、副編集長のコメントとして、以下のようなものがあります。

第1位に選出された細胞の再プログラミングは、生物学の新分野を一夜にして切り開き、生命を救う医学的進歩という希望の光をもたらした


日本の研究者が1位に選ばれるのはやっぱり同じ日本人としてうれしいですね 😀
ということで、今日はiPS細胞の研究について、ちょっと考えてみたいと想います
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因みに、他のベスト10は、詳しくはScienceのサイトを見ていただくとして、項目を挙げると(項目だけではよくわからないかもしれませんが…)、
 

第2位「太陽系以外の惑星の直接検出」
以下、順不同
・太陽系外惑星―百聞は一見にしかず
・がん遺伝子のリストが拡大
・不思議な新素材
・活動中の蛋白質を観察する
・必要に応じた再生可能エネルギー
・胚の映像
・「良い」脂肪が解明される
・世界の重量を計算する
・より速く、より低コストでゲノムの塩基配列を決定する

 
さて、iPS細胞についてですが、あらためてiPS細胞って何?というところから見てみたいと想います。
 
■iPS細胞って何?
IPS細胞とは、日本語では人口多能性幹細胞といい、体細胞へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、分化万能性を持たせた細胞のことです。万能性を持った細胞といえば、少し前にES細胞が話題になりましたよね。ヒトES細胞を作るにはいずれヒトになり得る受精卵を使うことに対する倫理的問題がありましたが、iPS細胞は患者自身の細胞から作り出すことができるというのが、非常に大きな違いとされています。
この万能細胞により、再生医療への応用のみならず、今まで治療法のなかった難病の病因や発症メカニズムの研究、薬品の効果や毒性の評価など、今までにない全く新しい医学分野を開拓する可能性を秘めたものとして非常に期待されています。
 
■iPS細胞ってどうやって作るの?
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1.生体から得た細胞を培養する
2.ウイルスベクターを用いて分化万能性の獲得に必要な遺伝子を導入する(赤色が遺伝子導入された細胞)
3.細胞を一旦集め、ES細胞の培養法にしたがい、フィーダー細胞の存在下、専用培地で培養する
4.遺伝子導入された細胞の一部がiPS細胞となり、ES細胞様のコロニーを形成する


以上、Wikipediaから引用。
 
ここで、レトロウイルスベクターとは何か、ですが

「レトロウイルス」と「ベクター」に分けて説明します。まず後者の「ベクター」ですが,これは「(遺伝子の)運び屋」という意味で,「細胞の中に遺伝子を運び込むために使う道具」を指します。たとえば,製薬工場では,「大腸菌の細胞にヒトのインスリン遺伝子を入れる」といったことが行われています。このように,細胞の中に遺伝子を運び込もうとするとき,細胞にじかに遺伝子(DNAやRNA)をあたえても,細胞の中には入りません。細胞の中に遺伝子を運び込むためには,まず遺伝子(DNAやRNA)を「ベクター」の中に入れ,そのベクターを細胞にあたえる必要があるのです。ベクターにはさまざまな種類のものが存在し,「レトロウイルスベクター」はその一種です。
 「レトロウイルス」とは,ウイルスの1グループの名前です。なかでも最も有名なのは「ヒトエイズウイルス(HIV)」です。遺伝物質としてRNAをもち,細胞に感染する能力があります。細胞に感染したレトロウイルスは,細胞の中でRNAをDNAへとつくりかえ,そのDNAを細胞の核のDNAの中に挿入します。こうした能力をもつレトロウイルスから,病原性を取りのぞいたものが,「レトロウイルスベクター」として使われるのです。


 
以上がiPS細胞の概要です。確かにものすごい可能性を秘めていて、難病の治療法研究など、大いに可能性を活かしてほしいと願わずにはいられません 😀
 
参考:最近よく聞く「iPS細胞」ってなに?
   サイエンスチャンネル「生命のマエストロ(13)再生医学から再生医療への橋渡し」

List    投稿者 hadou | 2008-12-26 | Posted in 未分類 | 9 Comments » 

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コメント9件

 さんぽ☆ | 2009.02.05 18:13

RNAの情報がDNAに転写されて、そのDNAが次世代に引き継がれているかも!?という理解であっていますか?
RNA情報がDNAに転写されているかどうかはまだ解明されていなのでしょうか?
質問ばかりで申し訳ないですが、
よろしくお願いします☆

 yukie | 2009.02.06 16:26

さんぽ☆さん、コメントありがとうございます。
RNA情報がDNAに転写されて遺伝するのか?
それともそのまま遺伝するのか?
そのままだとしたらどうやって遺伝しているのか?
は現在調べ中です。ごめんなさい。
今日入った「1つの遺伝子から多様なタンパク質が作られる」という記事を見てみると、普段読み取られないDNA上に、RNA情報を伝える何かがあるのかもしれないですね。

 KAM | 2009.02.06 23:09

こんにちは。KAMといいます。
RNAキャッシュという話を、以前、読んだことがあります。
まだ、仮説の段階ですが、RNAのまま遺伝し、DNAを上書きして書き換えているのではないかという話です。
関連情報として紹介しておきます。
http://www.mypress.jp/v2_writers/miyu_desu/story/?story_id=974276

 yukie | 2009.02.07 21:24

KAMさん、コメントありがとうございます。
リンクしていただいた記事、見せていただきました☆ ありがとうございます。
RNAキャッシュ、↑で恥ずかしながら始めて知ったのですが、興味深いですね~
ちょっと私も調べてみて、マウスでもそれらしき現象が確認されたという記事がありました。
http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1415646
でも、RNAキャッシュの最初の論文に対する反例もあるようです↓
http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/scripts/botany.html#top「続報2:遺伝情報のバックアップ」
どっちなのでしょうか…
続報が待たれるところです。

 iwaiy | 2009.02.07 21:53

核内にとどまるノンコーディングRNAというのがあるようですね。
(RNAは核から細胞質に出ていくのがふつう。機能は不明らしい)
※理研ニュースより:核内ノンコーディングRNA
http://www.riken.jp/r-world/info/release/news/2009/feb/index.html#frol_02 
全くの思いつきですが、この核内RNAが何か情報の遺伝に関わっているとか???

 KAM | 2009.02.09 21:57

iwaiyさん
核内ノンコーディングRNAですか?
とても面白いです。
僕は、ジャンクDNAと呼ばれていた領域の役割は、情報を構造化することだと考えているのですが、ノンコーディングRNAが、その役割を果たしている可能性もあると思い、興奮しました。
ニューラルネットワークのElmanモデルは、言語データから「文法規則」を学習することができます。
しかし、学習したネットワークを外から調べてみても、どこに「文法規則」が学習されているのかは分かりません。
ニューラルネットワークの結合強度分布の中に、情報が織り込まれているのです。
僕は、ゲノムにもそのようなネットワーク学習的な側面があると思います。
たとえば、トランスクリプトームが、ゲノムネットワークの強度分布を担っていて、そこに、ネットワーク学習された結果が織り込まれているという仮説を持っています。
Elmanネットに関する記事です。
http://www.iias.or.jp/old/research/res_gengo/makioka.html

 iwaiy | 2009.02.14 21:00

KAMさん、興味深いヒントありがとうございます♪
ゲノムにも、塩基配列の解読だけでは分からない、文法規則のような情報が織り込まれていると思います。
それに、学習or適応内容がフィードバックされる、外圧状況etcによって変異もするというイメージでしょうかね。
ノンコーディングRNAはその有力な要素かもしれませんよね!

 KAM | 2009.02.16 1:27

iwaiyさん
>それに、学習or適応内容がフィードバックされる、外圧状況etcによって変異もするというイメージでしょうかね。
そうなんです。
脳で起こっている学習と同じようなことが、起こっているかもしれないと考えているのです。

 iwaiy | 2009.02.18 16:25

脳で起こっていることと相似することがゲノムでも起こっているとすれば・・・普遍的な摂理(法則)のひとつが導き出されるかもしれませんね!!!

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