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サル社会の構造⑦ ~原猿段階の知能進化の要因とは?(樹上過密化後)~

前回のブログでは、原猿の知能進化の要因を「樹上過密化前」の状況から追求していきました。今回は「樹上過密化後」の状況から知能進化の要因を探っていきます。

まず、樹上過密化後の原猿の状況は、若オス・縄張りオス・メス、すべてが「無限苦行状態」(サル社会の構造②~大型化して樹上を独占した原猿がぶつかった外圧~ [1])。

絶え間ない同類闘争により本能は混濁。しかし、この逆境の中で見出した一筋の可能性が「相手と自分の“状況”の同一視」→「相手と自分の“欠乏(心情)”の同一視」→「期待応合関係へ」です。(サル社会の構造⑤~原猿オスに同化⇒若オス達の意識にどんな変化が生まれたのか?~ [2]

この状況下で哺乳類の知能進化につながった要因を整理していきます。

◆樹上過密化後の知能進化の要因:①同類把握機能の発達

原猿の祖先である原始哺乳類は、性闘争(=同類闘争)の激化により著しく知能を進化させました(哺乳類の知能進化⑦~外敵闘争と同類(性)闘争は何が違う?~ [3])。オスであれば体格差の少ない同類闘争を制するための「頭脳戦」。メスであれば「子育て」や「母系集団の統率力」。オスメス共に性闘争の中で相手(=同類)を注視する力、すなわち「同類把握力」が知能進化につながっていました。

原猿の知能進化も大きな構造は同じです。ただ原始哺乳類と決定的に異なるのは、樹上過密化により絶え間なき性闘争が恒常化し「同類把握の機会が格段に増えた」ことです。過密化した樹上では縄張りが重合し、いつ・どこにいても同類と遭遇します。自分の身を守るために、相手の強さ・動き・状況をひたすら注視し続ける機会が格段に増えたのです。

そして、メスはオスが同類把握の対象になり、接近のために注視(サル社会の構造④~改めて原猿メスに同化~ [4])。

弱オス同士は共感回路の形成により、同類の「状態把握」に加えて「心情把握」が可能に(サル社会の構造⑤~原猿オスに同化⇒若オス達の意識にどんな変化が生まれたのか?~ [2])。

といったように、原始哺乳類時代から備わっていた同類把握機能が“飛躍的に向上した”ことが知能進化の要因の一つです

 

◆樹上過密化後の知能進化の要因:②快感回路の発達

もうひとつの要因は「快感回路の発達」です。相手の心情把握まで探索可能になった原猿は、哺乳類の真似充足回路に同一視充足(共感)の回路を塗り重ね「不全解消の解脱回路」を形成します。

さらに、スキンシップの発達(嘗めあい、グルーミング)による、皮膚感覚の更なる発達と指先(と粘膜)の感覚が上昇。快感回路の形成により、皮膚感覚はより鋭敏化し、探索回路を強く刺激し活発化させたのです(この快感回路は、テナガ~人類にかけて大脳連合前野=最先端の統合回路として、さらに著しく発達)。

快感回路の発達は、相手の期待に応えたら“もっともっと充足する”ということ。この“もっともっと”は、これまでの「不全感から脱する」のように“マイナスをゼロ”にするのではなく、「もっと充足したい!」という“ゼロからプラス”を求める思考。さらなる充足を求めた先はこれまでにない未知の世界であり、この段階で強力な未知収束回路ができたのではないかと考えられます。心情把握から快の回路が発達し、さらなる探索へ向かったことが知能進化を促進させたと考えられます。

 

以上です。原猿の知能進化、いかがでしたでしょうか。

我々人類が学ぶべきは、今求められている「人間力(=同一視)・追求力(=未知の探索機能)」はすべて“充足力”が進化の原動力だということではないでしょうか。

この充足力の正体は“状況の同一視と欠乏の同一視。これら同一視を前提とした期待・応合”です。これさえあれば人間力も追求力も出てくる。充足力をいかに再生するか、呼び覚ますか。ここにかかっているのではないでしょうか。

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