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哺乳類の知能進化⑤ ~皮膚の発達が先か?脳の発達が先か?~

■皮膚の発達が先か?脳の発達が先か?

「哺乳類の知能進化のカギは皮膚感覚にある」 [1]ということを以前投稿しましたが、脳が発達したから皮膚感覚が発達したのか?それとも皮膚感覚が発達したから脳が発達したの?今回はこの論点を整理したいと思います。

皮膚と脳は下記のように「共進化」の関係にありますが、実は「授乳期間(スキンシップ)の長期化」による皮膚感覚の上昇が、それを先行しています。

目や耳ができるまでは生物は皮膚によって外部情報をキャッチし(それを集約し)判断していました。つまり、皮膚はそれ自体がもともと判断機能を持っていたのです。
例えば触覚が生み出す「心地よさ」「気持ちの悪さ」「怖さ」等は皮膚自身がが感じ生み出す感情です。
ここで感覚器官としての皮膚の特殊性に注目する必要があります。目や耳は情報を脳に伝えるだけで、自ら判断機能を持っているわけではありません。
哺乳類は、この皮膚と脳の判断=駆動物質のやり取りを強化することで、皮膚の持つこの機能を脳に転移させ、脳と皮膚を「共進化」させたのです。(「哺乳類の知能進化のカギは皮膚感覚にある」 [1]

 

皮膚感覚の発達は、脳のやりとりを増大させ、その分だけ脳神経も増加します。しかも、皮膚はそれ自体が判断機能を持っています。(心地よさ、鳥肌など)
同じ判断機能である皮膚と脳のやり取りは、判断と判断の突き合せにより、情報→指令という一般神経と脳のやり取りよりも、より緊密な回路を形成することになります。

 

 

■快感回路=充足への欠乏が探索回路を発達させ、知能進化の駆動力になっている

脳は「情報を集約し行動する為にある」というのは前回扱いました。

哺乳類の知能進化④ ~脳は何のためにあるのか?~ [2]

皮膚から得られる細かな情報は、危機系の情報の場合、敵の察知力を高めそうですが、その行動は「逃げる」か、その危機感を「麻痺させる」かのみで、脳の働きとしてはすごく「単純」です。

一方、皮膚感覚の快感回路(安心感)の発達は同時に不快感や、何かおかしいという違和感や、しっくりこないなどの不整合感の感覚も鋭敏にさせます。
実はこの不整合感の回路こそが、探索回路を発達させる駆動力になります。

したがって、快感回路=「充足への欠乏」が探索回路を発達させ、知能進化の駆動力になっているということなのです。

脳の機能は、情報を集約した上で、細かい情報をカットし、絞り込んで判断する機能。
その意味では、脳は非常に大雑把で、職人が持つような緻密な識別機能は、皮膚にしかありません。

つまり、皮膚は脳より緻密な識別機能を獲得したことになり、皮膚感覚の発達が脳の発達を促し、その上で「共進化」する。このような構造になっているのです。

だとすると、「皮膚は第2の脳」 [1]なのでは無く、厳密に言うと、「脳が第2の皮膚」と言っても過言では無さそうです。

いかがだったでしょうか?

ここまでの検討だと皮膚が脳を主導してきたと言えそうですが、残る問題は、脳が何故緻密な識別機能を必要としたかです。それを解明するには、改めて哺乳類と他の動物との比較が必要になりますが、その検討はまた次回。
お楽しみに!

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