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観念回路の形成過程㉑~初期人類のオスはどのようにして闘争力を培ったのか~

前回 [1]の記事では、初期人類がオスメスとも母集団に残留することについて書いたが、これは生物史上稀有な集団形態であり、
そこには大きな矛盾を孕むことになる。

哺乳類は胎内保育のため、成体になるまで淘汰圧力が働かない。従ってメスをめぐるオス同士の戦い(性闘争)を激化させ、オスに対する淘汰圧力を働かせるという手法をとった。
そのため哺乳類は、成体になると母集団を出ていき(性闘争の敵として親に追い出され)、自らの縄張りを確保しなければならない。それは、一人前になるため武者修行でもある。つまり、残留する道をとれば、そのままではその個体は(ひいてはその種は)、軟弱化してしまう
では、初期人類はどのようにしてその欠陥を克服したのであろうか?

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前提条件として、初期人類は足の指の先祖返り(樹上生活ができなくなる)という、機能欠損を刻印されており外敵にほとんど対応できない、という事実がある。
だからこそ初期人類は洞窟に隠れ住むしかなかったわけだが、洞窟の中の食料は限られており、洞窟の外に食糧を探索しに行かねばならない。それは主としてオスの役割だったと思われるが、死傷率はかなり高く、運動能力や判断力に優れた個体しか生き残れない。その生存条件が軟弱化を防ぐ下支えになっていたことが考えられる。
とは言え、それだけでは集団を出ていくという場合に比べて鍛錬度が下がるのも事実である。

これをどのように克服したかのヒントは未開民族にある。未開民族の多くには、一人前(勇士)と認められるための資格試験がある(素手で猛獣を倒すなど)。
そこから類推して、例えば、14歳になれば外に食糧を取りに行くという役割が課せられるということを前提に、そのためのこれだけの運動能力と判断力が必要という形で、それがクリアできて初めて一人前と認められるという規範を作ったのではないだろうか?

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仲間との一体化が最大の活力源だった人類にとって一人前=仲間と認められないというのは致命的で、これは相当の共認を形成していたに違いない。
その名残が、現在でもなお残るオス(特に子どもの)競争意識の強さではないだろうか。子供たちは(特に男の子は)遊びの中でさえ、何でも競争したがる。性闘争は封鎖されているが、この同類圧力を利用した相対競争を利用して、人類は、子供たちを鍛え上げ、軟弱化を防いだのではないだろうか。

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