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オランウータンの知能進化① ~哺乳類時代の「皮膚感覚の進化」と「脳の進化」~

これまでのブログでは「オランウータンが人類の起源に最も近い」という仮説から、オランウータンの「生殖と性(=人類との類似点)」について追求してきました。

それに引き続き、オランウータンについてより深く追求するために、本日から「オランウータンの知能進化」について追求していきます。

知能進化については、これまでも「哺乳類の知能進化①~⑦+番外編」で扱ってきましたが、

改めて、哺乳類以降のサル(オランウータン)までを貫通させた知能進化として追求し「知能進化の神髄」に迫りつつ、オランウータンについて追求していきます。

 

■哺乳類の知能進化 ~振り返り~

まず、哺乳類の知能進化では「皮膚感覚の発達が知能進化のカギ」であること固定してきました。

過去ブログ:哺乳類の知能進化① ~知能進化のカギは皮膚感覚にある~ [1]

---以下引用---

原始哺乳類の原モグラは、外敵を避けて、土中に隠れ住み、視覚機能を後退させて、触覚⇒皮膚感覚を発達させる方向に進化しました。

加えて哺乳類は授乳や子どもを誉めるなど、スキンシップを通じて、皮膚感覚に快感機能を付与することで、皮膚感覚の回路を著しく発達させました(スキンシップの心地良さ、母は乳児の様子を感じ取り、乳児は母の状況を感じる等)。

(中略)

皮膚はそれ自体が駆動物質=情報伝達物質を分泌し、キャッチできるという脳と同様の機能を持っています。

鳥肌が立ったり、じんましんが出たりするのは皮膚の拒絶反応で、これらは脳が命令している訳ではなく、皮膚自体が判断している一つの具体的現れです。

[2]

鳥肌(画像はこちら [3]からいただきました)

 

実際、目や耳ができるまでは生物は皮膚によって外部情報をキャッチし(それを集約し)判断していました。つまり、皮膚はそれ自体がもともと判断機能を持っていたのです。

---引用終わり---

過去のブログでは「皮膚は第二の脳」といわれ、脳と同様に「判断機能を持つ」ことを明らかにしました。この皮膚感覚の発達こそ哺乳類特有の進化であり、知能進化のカギを握ります。

[4]

画像はこちら [5]からいただきました。

 

ここで、そもそも皮膚感覚の発達=「皮膚って何?」から押さえ直していきます。

 

■皮膚って何?

皮膚の役割を整理すると、

①内臓を守る役割。

物理的に内臓を守る外皮の役割に加えて、中に取り込むか取り込まないかの判断をしている。

②皮膚は外圧を掴む。

光・温度・湿度・圧力・質感など、一度に複数の情報をキャッチすることができる。

③掴んだ外圧を基に「どうする?」を判断できる。

体に入ると害の場合は、蕁麻疹や鳥肌が出たり、メラニンを増やし、肌を黒くしたりしている。これらも脳が判断しているのではなく、肌が判断し、行動している。

 

皮膚と聞くと“直接触れる”ことで対象を認識するものだと思いがちですが、“直接触れなくても”対象を認識できることが分かります。

人間に置き換えてみても、空気(温度・湿度)の変化・気配・殺気…等々、直接目に見えない・触れられないものでも何かを感じ取ることができますよね。

 

そして、皮膚の機能の原点は単細胞時代の「細胞膜」にあります。

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細胞膜(画像はこちら [7]からいただきました)

 

単細胞の時代は「細胞膜」で外圧を掴み、餌か毒かなどの+、-の判断をしていました、

その後、多細胞になると、細胞同士で専門分化し、細胞間で情報伝達もするようになります。そして、体の一番外側の細胞が外皮=皮膚になったのです。

☆単細胞から皮膚になるまでの段階で、「外圧を掴む→細胞間で情報伝達→判断→行動する」まで進化しています。

 

皮膚感覚の鋭敏化以降は、視覚や聴覚などの感覚機能を生み出していき、膨大な外圧情報をキャッチできるようになります。

それと同時につくられたのが「脳」です。この「脳」と「皮膚」の関係が哺乳類の知能進化を躍進させていきます。

 

■なぜ脳は作られたのか?

まず、両生類までの脳進化を振り返ります。

脳はカンブリア紀頃、視覚や聴覚などの感覚器官ができた段階で形成されました。

[8]

カンブリア大爆発(画像はこちら [9]からいただきました)

 

目や耳は皮膚を専門特化させたもので、遠隔情報を周波数としてキャッチすることができます(皮膚は近くにないと判断はできない)。

そして、視覚や聴覚など外圧を掴む感覚器官の種類も増えたことで、感覚器官が掴んだ情報を“集約”する必要がでてきます。

さらに、膨大な情報の中から必要な情報だけを“絞り込む”必要がありました。そこで登場したのが「脳」です。

★脳は情報を集約・絞り込みを行い、状況を把握した上で「どうする?」を“探索”。そこから運動指令を出す=行動するために作られたのです。

 

そして、哺乳類になると、両生類までの脳に加えて「大脳新皮質」を新たに形成します。

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脳の構造(画像はこちら [11]からいただきました)

 

大脳新皮質ができるまでの探索機能は「パターン回路」で、膨大な周波数情報から行動をパターン化する機能止まり。しかし、大脳新皮質は★外圧情報をもとに「どうする?という探索」に特化した器官であり、この大脳新皮質と皮膚感覚の鋭敏化が哺乳類の知能進化を躍進させます。

 

■皮膚と脳の関係と知能進化

哺乳類の知能進化を躍進させたのが、判断機能を持つ“皮膚”と“脳(大脳新皮質)”の判断の突き合わせにより「探索回路」を生み出したことです。

哺乳類特有の皮膚感覚の鋭敏化は、不整合に対する察知も上昇させ、探索を促します。特に、哺乳類の皮膚感覚は「親和機能の強化」が他種と差別化される特徴です。

探索(=親和追求)の対象は、集団行動における連携行動のための同類や、性闘争のための同類で、これら同類に対する同類把握力が規定しており、この「親和機能の強化」は、後のオランウータンまで貫かれる知能進化の土台となります。。

 

本日は以上です。

次回は「大脳新皮質とは何か?」を扱っていきます。

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