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サル社会の構造⑩ ~オス同士の集団化はどのようにして形成されのか?~

それまで別世界で生きてきた同類オスとメスですが、原猿からはオス・メス集団、複数オス集団というのが登場します。

前回は「オス・メスがどうやって集団化したのか?」 [1]を扱いましたが、今回は【オス同士の集団化】について扱います。

ここの追求が明らかになれば、人類にとっての「集団とは何か?」「関係(≒人間関係)とは何か?」「オス・メス(男女)の関係」とは何か?の根本原理が解明できるはずです。

 

以前のエントリー(サル社会の構造⑤~原猿オスに同化⇒若オス達の意識にどんな変化が生まれたのか?~ [2])で、弱オス間で共感機能と期待応合回路が形成されました。では、それを受けてどのようにオスの集団は形成されてきたのでしょうか?

 

 

■1.弱オス間で共感機能と期待応合回路が形成後、どのようにオスが集団化したのか?

大前提として、弱オスは「常にどこかのボスの縄張りに常にいる」という状況です。その状況に同化しながらいくつか仮説を検証していきましょう。

 

①弱オス同士が結束する説

弱オス同士の親和関係は不全解消時だけです。弱オス同士は不全解消のためにスキンシップをしていたとしても、もともとは餌を奪い合う敵同士。だから、これだけでは闘争には向かえないし、連携行動も取れません。(そもそも連携行動を取ったことがない)。

もし仮に、弱オス同士が徒党を組んで、ボスを倒したとしても、弱オスの中でのまとめ役、リーダーが必要ですが、この状況をまとめられる弱オスはいません。

もともとは餌を奪い合う敵同士ですから、すぐに仲間割れが起き、継続的な集団として成立するということは考えにくい。むしろ、まとめ役になれたら、その段階で、「縄張りオス=ボス」になれているはずです。

加えて、メスは集団を組む際はスキンシップを通して、性闘争を上回る親和関係を形成しましたが、オスまで性闘争を弱めるのは淘汰適応の観点から種として危険な為、考えられません。

したがって、「弱オス同士が徒党を組んで集団化する」ということはできないはずです。

 

②ボスの縄張りに入れてもらう説

もう一つの仮説は、ボスの縄張りに弱オスが入れてもらう仮説。
もしその場合、焦点になるのは、集団化する前に縄張りに入ってきた弱オスを、ボスが「追い出す」のか、それとも「黙認する」のか。

 

<縄張りオス=ボス側は?>
縄張りオス=ボスも、若オス時代は周りの弱オスと同様の状態にあり、その元弱オスが成長して、やがて縄張りを持つオス=ボスになります。

縄張りを獲得した元弱オス(若オス)が、若オス時代に半継続的な弱オス同士での親和関係による、相手プラス意識、つまり仲間意識がその意識下には形成されています。

 

<弱オス側は?>
一方、弱オスはこの時点で、期待応合回路を形成しているので、メスと同様に弱オスも“どうしたらボスの縄張りにおいてくれるか(追い出されないか)”を考えます。※参考:「オス・メスがどうやって集団化したのか?」 [1]

ボスの不全は縄張りを侵犯され続けることですから、その不全解消の欠乏に応えるには、弱オスは「縄張り防衛で加勢する」という応合の行動をとるはずです。

つまり、ボスには継続的な親和関係にある弱オスに対しての仲間関係の意識がベースにあり、その為、他の弱オスを「追い出さなくなり」ます。

そして、その一方で縄張り周辺に居ついた弱オスたちは、ボスの欠乏に応合しようとする意識から、「縄張り防衛で加勢する」ようになったのです。

そして、そのうち”戦力度”の高い弱オスだけが集団に残れるようになり、戦力度の低い弱オスだけを追い出すようになったのです。これがオス同士の集団の始まり。

 

■2.オス同士の序列統合(序列による規範共認)⇒闘争共認による集団化

ボスが引き入れた(追い出さなくなった)弱オスの”戦力度”は何で図っているのでしょうか?

哺乳類の集団化の時にも扱いましたが、集団に必要なのは、成員全てに外圧が貫徹されているかどうか。
だから、大前提として求められるのは、外圧を察知できるか。そして連携行動ができるか、一体化ができるかどうか。

基本的に、縄張りはボス一匹で守れるもの。だから、肉体的な強さは二の次です。
むしろ力が強いと縄張りを奪われる可能性もあります。

しかし、一方で性闘争を弱めることも種として危険。

だから、オス集団の中で、序列統合(序列による規範共認)⇒闘争共認(闘争課題⇒役割共認⇒規範共認)が図られるようになりました。

オス間も同一視を基盤にした「充足度の共有」から、より高い充足度を導きの糸として、各成員にとって、相対的により充足度の高い(orマイナス度の低い)ものに内容が収斂していきます。このようにして課題共認、役割共認、規範共認は成員にとって最良の内容に収斂されていきました。

 

一方、この段階では弱オスはまだメスに近づけません。

つまり、【オス同士は闘争共認】、【ボスとメスは親和共認】で集団化できたということになります。

原猿後半の集団の様相というのは、オス集団、ボスメス集団の二重構造になっているということが分かります。
その為、未だオスとメスはまだ別世界で生きているということになるかと思われます。

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