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サル社会の構造⑥ ~原猿段階の知能進化の要因とは?(樹上過密化前)~

前回は、若オス(弱オス)間で形成された共感機能(同一視と期待応合)の過程に同化していきました。

 

サル社会の構造⑤~原猿オスに同化⇒若オス達の意識にどんな変化が生まれたのか?~ [1]

 

★「相手と自分の”状況”の同一視」→「相手と自分の”欠乏(心情)”の同一視」→期待応合関係へ」

 

心情への同一視から期待応合関係を築くにあたって、相当の探索回路が働いていることがわかります。

 

このことは原猿段階で、モグラはもとより、一般哺乳類以上に知能が進化しているということを示しています。

 

哺乳類の知能進化⑦~外敵闘争と同類(性)闘争は何が違う?~ [2]

ではその理由は何なのか?を今回は探っていきたいと思います。

まずは、原猿が樹上に住めるようになって【過密状態になる前の段階】で、どのような変化が起きたのでしょうか?

 

 

■原猿初期(過密前)の知能進化の要因は?

 

①敵から逃げる⇒“立体視”によって他の木に飛び移る機能の獲得

過密化以前だと、オスメス単体でモグラと同じ生態です。したがって”同類把握”という点で加わる要因は、特にありません。従ってそれ以外の要因を考える必要があります。

 

とするとまず、大きな変化は【樹上に住めるようになったこと】です。

単に「樹上に登れるようになる」ということと、「樹上で住めるようになったこと」では大きな差があり、樹上でも寝たり、子育てをしたり、年中樹上で生活を営むことができる実現基盤が無いと、「住める」ようになったとは言えません。

 

「住める」ことの大前提は、樹上での「外敵に対しての対応策が整っていること」。

この段階は、まだ身体もそれほど大きく無く、外敵に対しての対応策は、「逃げる」という方法です。その為には、「他の木に飛び移れる」ことが必要です。

 

原猿になってそれ以前のモグラやツパイの目が「横向き」だったのが、両目が前面に来ることによって「立体視」ができるようになりました。

 

目が横向き(モグラ・ツパイ)

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目が前へ(ショウガラゴ・アイアイ)

 

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その立体視ができるようになって、距離感など図ることができ、他の木に飛び移ることができるようになります。

 

 

②バランス感覚⇒脳回路上の探索から運動機能への調整指令が活発に

その立体視によって、脳での情報処理がアップし、卓越した体性感覚(バランス)が整い、さらに手足の皮膚感覚が上昇しました。

 

樹上は【バランス感覚】が命です。足の裏の感覚はもちろん、重心を変える微調整も必要。

 

メスは子を抱えながら移動しますが、母と子がバラバラに動くのは命取り。何故なら、母が飛び移ろうとしているときに、子どもが後ろに体重をかけたら木から落ちてしまうからです。

 

バランスとは、状況判断による脳回路上の探索→運動機能への調整指令で成立します。このバランス感覚が知能進化を著しく上昇させた要因なのです。

 

バランス訓練は乳児の段階で、母との密着から、重心移動の連携で鍛えられます。これは、授乳期間の長期化も一要因としてありますが、母子密着度という点ではむしろこちらの「バランス感覚」の方が大きい要因です。

 

★つまり、「体性感覚と皮膚感覚の上昇が知能進化を促した」というのが、原猿初期(過密前)の知能進化の主要因だと考えられます。

 

次回は、過密化後の要因を探ります。

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