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生き物ってすごい!3~「汚れる」方がおかしい?

カタツムリの殻皮に学ぶ「汚れないセラミックス」

こんにちは~
トンボの羽から生まれた未来の風力発電「マイクロ・エコ風車」 [1]
あわびの貝殻に学ぶ「割れないセラミックス」 [2]
と、過去2回にわたってお送りしてきたシリーズ第3回。
今回ご紹介するのは「カタツムリの殻皮」です。
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画像はこちら [3]よりお借りしました。
雨の日に出てくるカタツムリ、彼らのかぶっている殻をよーく見てみると、いつもピカピカ ぜんぜん汚れていないんです。
これを見て、「トイレや、シンクに使えるのでは!?」と、研究した人たちがいました。


以下、石田秀輝氏・著『自然に学ぶ粋なテクノロジー~なぜカタツムリの殻は汚れないのか~』より抜粋したものを紹介します。

汚れないカタツムリの殻
自然のドアをノックしてみよう。まず最初に見つけたのはゴキブリである。ゴキブリはいつもピカピカ、コガネムシもフンコロガシも皆ピカピカである。ただ残念ながら、これらの虫は分泌液を出して体をきれいにしており、このメカニズムを利用することは容易ではない。
改めて自然のドアをノックしてみよう。次に見えるのは、カタツムリや卵である。これらは分泌液を出すことなく、いつもピカピカ、きれいな表面を保っている。カタツムリの殻の表面では、油汚れも雨が流してくれるのである。
カタツムリの殻は炭酸カルシウムでできている。では、炭酸カルシウム100%でできている方解石とカタツムリの殻の比較をしてみよう。水の中に方解石とカタツムリの殻を浸し、それに油滴を付けてみる。方解石には油が付着するが、カタツムリの殻では油が付着することはない。水中で、油滴はコロコロと殻の表面を転がっている。
カタツムリの表面を電子顕微鏡で見てみると、数十ナノメートルからミリメートルにいたる小さな凹凸がたくさん存在する
水中で油滴が殻の表面に付かないのは、表面の小さな凹凸が大きく影響している。では、この殻と同じ構造をもった表面をつくればよいのだろうか。もし、同じ構造をつくろうとすれば、複雑な処理が必要で大変なエネルギーと資源を使うことになる。ここにリ・デザインの考えが必要である。

汚れないメカニズムについて、わかりやすい解説を紹介します。
(以下、こちらのサイト [4]より抜粋)

カタツムリの殻を電子顕微鏡で見ると、規則正しい溝がつくられていることがわかります。
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カタツムリの殻皮の顕微鏡写真
(下の写真はこちら [5]よりお借りしました)
殻の表面構造を解析すると、数百ナノ(1ナノ=10億分の1m)からミリサイズまでの広範囲な階層でフラクタル組織、つまり『溝』がつくられていることがわかりました。
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カタツムリの殻の汚れ防止機構
殻表面の細かい溝によって水膜ができ、油を寄せつけない。
とてつもなく細かい溝。これがカタツムリの汚れ防止機構でした。つまり、殻表面にあるこの溝に常に水がたまっている状態なのです。ここに油をたらしても、水と油は反発し合うのでくっつかない。だから、上から水をかけるだけで、浮いている油が流れ落ちてしまうというわけです。

なるほど~、カタツムリの殻皮って、すごいですね!
このすごい構造を、どのような技術に活かしているのでしょうか?

汚れがつきにくく取れやすいこの技術は、すでに家庭のキッチンシンクやビル外壁に使われ始めた。街の汚れの多くは車の排気ガスから出る油とカーボンである。これが汚れであるとわかれば、材料の表面をどの程度改質してやればよいかがわかる。改質前後のセラミックス・タイルの表面に擬似汚れを付着させ、水をかけてやる。油とカーボンの混合物である街の汚れが、水だけで除去できるのである。
セラミックスは基本的にカタツムリと近い表面構造をもつ。~いつもピカピカのカタツムリや玉子の殻、あらかじめ汚れへの種類がわかっていれば、そんなメカニズムを持った外壁やキッチンシンクを、ほとんどあらたなエネルギーを投入することなくつくることができるのである。

これと似た原理を用いているのが、ハスなどの植物の葉っぱです。
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ハスの葉の表面に水を流すと、はじかれてコロコロと転がりますね。これは、葉の表面に水が入り込めないくらい小さな、数ミクロンの凹凸があるためなのです。
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ハスの葉の電子顕微鏡写真
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コンピューターグラフィックスで描いたハスの葉の表面構造
(画像はこちら [6]からお借りしました)
いかがでしたか?
自然界においては、汚れは生死に係わります。私たち人間の世界では、放っておくと汚れるのは当たり前の認識ですが、生物にとっては、汚れていない状態の方が自然なんですね

それでは、次回もお楽しみに

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