- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

驚きの地球気候史を読み解く(1) 現代の温暖化は例外的な時代!地球規模で見ると寒冷期に突入中!??

地球温暖化による気候変動によるニュースが年々増えてきている。

確かに、ここ100年のデータで切り取ってみると、北半球の気温はおよそ1℃上昇している。
平均気温が1℃上昇するとは、大した事の無いように感じるが、東京と宮崎の平均気温差が約1℃なので、東京が宮崎になったと思えば、肌感としてもその大きさが分かる。

スーパーコンピューターの予測では、今後100年で数℃から最大5℃の気温上昇が読まれている。
5℃差といえば、東京が奄美大島になるという事でもある。
農業だったら、1℃も変わったら取れる作物や時期も変わってくるので、5℃も変わったら大問題だ。
[1]

ただ、地球46億年の歴史の時間軸で切り取ってみると、どうなるのか?

 

過去の地球には、地球上の氷河が全て消滅してしまった温暖な時代もあれば、反対に、地表が全て氷河で覆われてしまった極寒の時代もあった。
人類が登場した後でも、海面の高さが100m以上も変動するような事が繰り返し発生していたのだ!
それくらい祖先たちは過酷な状況を生き抜いてきていた。
これからの気候変動を予測し、私たちも備えていくためには、過去から現在までの地球でどの様な変化が起こってきたのか、みていく必要がある。

地球にとって何にが「正常」なのか?
そこで、今回は、地質学的な観点からそれを読み解いていきたい。


●「年稿」から過去の気候変動を読み解く

過去の気候変動を明らかにしてくれるのが、福井県にある三方五湖の一つ水月湖の湖底から採掘された「年縞」
[2]

[3]

年縞とは、湖底などの堆積物によってできた縞模様のこと。
縞模様は季節ごとに異なるものが堆積することにより形成される。
春から秋にかけては土やプランクトンの死がいなどの有機物による暗い層が、晩秋から冬にかけては、湖水からでる鉄分や大陸からの黄砂などの粘土鉱物等によりできた明るい層が1年をかけ平均0.7mmの厚さで形成される。

この「年縞」採取したのが、立命館大学古気候学研究センター長を務める中川毅氏だ。
これまでの調査で、95m、約20万年分に相当する堆積物を湖底から採集している。
2012年には、この完璧な年縞が、国際的な研究グループによって地質的・歴史的な遺物の年代を決める世界標準「IntCal(イントカル)」に採用されている。
詳しくはこちら→(https://satoyama.pref.fukui.lg.jp/feature/varve) [4]

そんな「年縞」によって読み解かれた、気候変動の歴史を見てみよう!


●5億年の気候史

[5]

過去5億年の気候変動を観てみると、温暖時期と寒冷の時期を繰り返してきている。

変動幅はおよそ10℃。このタイムスケールでみると地球の気候は変化し続けいることが分かる。
「正常」と表現される定常状態が背景にあって、そこから時々逸脱するといったパターンは見えない。
とにかく、たえず変化し続ける。
そして、このタイムスケールでみると、現代が大きな傾向の中では、むしろ寒冷な時代であることも見て取れる。今から1億年前、地球は今よりもはるかに暖かく、北極・南極にも氷床は存在しなかった。

 

●今は寒冷期!?
では、直近500万年のタイムスケールで見てみると、どうなるのか?
[6]

現在の第一の傾向は、およそ300万年前頃から地球上では徐々に寒冷化が進行していることが分かる。
第二の傾向は、気候の振幅が増大してきているという点だ。
つまり、寒冷化と連動して、不安定性も同時に増してきている


●現代は例外的な時代

では、さらに直近80万年で見てみると、どうなるのか?
[7]

このタイムスケールで見てみると、増大する不安定性の中では、もっとも温暖な時代に当たっている。
しかも、現代は例外的な温暖な時代であることが分かる。現代と同等あるいはそれより暖かい時代は、全体の中の1割ほどしかない、残りのすべては、「氷期」である。
数十万年のスケールで見た場合でも正常な状態とは氷期のことであり、現代のような温暖な時代は、氷期と氷期の間に挟まっている例外的な時代に過ぎないという事である

上記の様に、気候はほとんど常にに変動していることが分かった。
では、その変動にパターンや法則性はあるのだろうか?

次回はそれを紐解いていきたい。

参考文献:人類と気候の10万年史
中川毅著 講談社 ブルーバックス
2017年発行

 

[8] [9] [10]