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哺乳類は、睡眠を高度化し脳を休息させることで、種としての成長を促進してきた

前回ブログでは、「睡眠とは種の成長を促進させるための1つの戦略」と定義しました。そこで今回は、睡眠の起源を遡る上で欠かせない脳との関係について追求していきます。

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生物の進化とともに、脳も進化してきました。その際、脳は基本構造を変化させるのではなく、新しい機能を付け加える形で進化してきました。特に大脳を著しく発達させた鳥類・哺乳類は大脳新皮質を大幅に拡大し、視覚野や聴覚野といった感覚を司る『感覚野』や、運動機能を司る『運動野』を誕生させました。また霊長類になると、新皮質のさらなる発達で『連合野』が出現し、より高度な認知や行動も可能にしました。これらの情報処理機能を土台として、後にヒトの脳は誕生するのです。

 

このように、哺乳類は大脳を発達させてきましたが、その背景には、発達しないと適応できない外圧状況があったはずです。

 

①「恒温化」:鳥類・哺乳類は恒温動物です。外気温が低くなると活動できなくなる変温動物に比べ、自らの体温を一定に保つことができる恒温動物は、環境に対する適応力を大幅に上昇させました。しかし体温を維持するには調節機能が不可欠で、そのために脳は大量のエネルギーを消費します。

②「性闘争の激化で身体を自在に動かす必要性」:哺乳類は胎内保育により成体への淘汰圧力が掛からなくなるので、生まれてから同類同士を争わせる性闘争を激化させました。そこでは内外からの情報をキャッチし、身体をより上手く働かせることが求められました。また性闘争のために、後天的な能力形成も必要だったので、子育て期間を長期化しました。その結果、断続的な栄養供給が可能となり、それが大脳を爆発的に発達させる要因にもなりました。

こうした外圧に対して、哺乳類は大脳を著しく進化させ、様々な機能を獲得して乗り越えてきました。

 

脳を進化の武器とした哺乳類ですが、長時間身体を動かすには膨大なエネルギーを必要としました。そこで必要になったのが、休息=睡眠なのです。特にエネルギー消費量の大きい恒温動物(鳥類・哺乳類)は休息=睡眠を高度化して、レムとノンレムに分化した睡眠をつくり出しました。鳥類・哺乳類は、脳幹にある睡眠中枢が、能動的にレム睡眠・ノンレム睡眠をつくり出しています。

レム睡眠で筋肉を動観させることで、体を休養させながら脳を活動させ、生活で得た情報を整理する働きがあります。

ノンレム睡眠では、脳そのものが疲弊しないように休息させます。同時に成長ホルモンを分泌し、生体機能を整える効果もあります(ex寝る子は育つ)。睡眠を取り脳を休息しているから、普段膨大なエネルギーを消費しても、覚醒時には疲弊せず最大限に活動できるのです。

 

つまり哺乳類は脳を進化させることで、種としての成長を実現してきました。その際、脳を休息させる必要があったので、睡眠を高度化してきたのです。それが、睡眠が種の成長を促進させる戦略の1つといえる所以なのです。

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