- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

【番外編】細菌の分解機能が、あらゆる逆境を突破する

[1]

人類は宇宙・大地・食物から放射線を日々受けているが、その量は僅かで健康への影響はほとんどない。

ただ放射線事故や災害レベルで大量の放射線を受けてしまう場合、体内の細胞の遺伝子を傷つけ修復も追いつかないため、細胞が分裂できず死んでしまったり癌化していく。

しかし細胞レベルでは、大量の放射線を吸収しても、それを養分に変えて生きるモノもいる。

 

①長崎の原爆の事例~玄米と味噌に含まれる細菌
秋月辰一郎氏(1916-2005)という長崎県の医師をご存じだろうか。

長崎に原子力爆弾が投下された際、被爆者が次々と亡くなったものの、秋月博士の病院では患者もスタッフも誰一人として被爆による犠牲者を出さなかったのだ。

秋月博士は次のように職員に命令していた。「爆弾をうけた人には塩がいい。玄米飯にうんと塩をつけてにぎるんだ。塩からい味噌汁をつくって毎日食べさせろ。そして、甘いものを避けろ。砂糖は絶対にいかんぞ」(秋月辰一郎著「死の同心円-長崎被爆医師の記録」講談社刊・絶版)

玄米にはフィチン酸が、味噌や納豆などの大豆発酵食品にはジピコリン酸が含まれている。フィチン酸やジビコリン酸は、放射性物質を体外に排泄させる効果があるそうだ。また味噌には細胞の生まれ変わりを早くさせて新陳代謝をアップさせる効能もある。これらの効用が重なり、残留放射能を早く排出できたから被害が出なかったと言われている。

 

②チェルノブイリ原発事故の事例~

[2]
廃墟となった原子力発電所の周辺では、合計98属、約200種の菌類が生息していることが報告されており、その中には放射線自体を食べる細菌が3種類見つかっている。

これらの菌にはメラニン色素が豊富に含まれており、有害な放射線から表皮(人類の場合なら皮膚)を保護し身を守っていた。米アルベルト・アインシュタイン医科大学の微生物学者、アルトゥーロ・カサデヴァーイ氏が率いる研究チームの調査によれば、放射線を食べる菌類が自然界にもともと存在しているレベルの約500倍の量の電離放射線に耐えられるようだ。

また耐性があるだけではない。これらの菌に、日光ではなく放射線を与える実験をしたところ、驚くべきことに放射線を吸収し成長していったのだ。チェルノブイリ原発事故後に最初に出現した生物が菌類であり、人類にとっては有害な物質を吸収し、繁殖した細胞がいたのだ。

 

人類をはじめ哺乳類が大規模な外圧変化に適応するには、遺伝子の変異が不可欠となる。それには何百万年という期間を有するが、細菌の場合はどうだろうか。

始原生物に近く、現在も生息している細菌は、外圧適応のために、変異要素としての遺伝子を他集団と共有している。異なる細菌集団間で、その遺伝子を共有するだけでなく、交換も行い、その中に格納された共有遺伝子を効果的に本体染色体に組み込む機能まで持っている。だから細菌は過去の環境適応の成果を共有しているから、他集団も含めた細菌全体で環境適応度を高めていけるし、変異スピードも劇的に早い(日単位で遺伝子変異を起こせる)。突然の環境変化が起きても、すぐにその耐性を持つ菌が現れるから、上記のように適応していけるのだ。

 

とはいえ、微生物の原理や進化過程などは未解明な部分がまだまだ多分に存在している。微生物分野の追求成果が自然の摂理や生命体の進化原理を明らかにし、これからの社会に欠かせない認識⇒先端技術を創り出していくことになるのではないだろうか。

[3] [4] [5]