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観念回路の形成過程22~初期人類は生命原理=DNAの多様化をどのようにして克服していったのか?

前々回+前回の記事で追求したのは、

【初期人類は哺乳類と異なり、オスメスとも集団に残留したと考えられる】

⇒オスメス残留の問題は、以下の2つを考えました。

【①オスの軟弱化】

【②種の適応度を上げるための遺伝子の多様性=変異促進の阻害が生じる可能性】

そして①について前回追求しました。今回は②について追求していきます。

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生物は、オスメスに分化することで、遺伝子交差によってより多様な変異を生み出すことを可能にしました。そして多様な変異を生み出すために、精子の遊泳能力を高め、より遠方の配偶子と交配します。

哺乳類の大半のオス(一部の種はメスも)が集団を出ていくというのもこの同じ原理なのです。しかし、個体数が少なくなると(生息域が限定されてくると)、近隣の個体と生殖せざるを得なくなります。

これについては、人類は進化様式の主軸を、DNA進化から、共認内容の進化や、観念内容の進化に移行させているのです。

これは、本能では適応できなかったために、DNA変異より早い、共認進化、観念進化に可能性収束したのです。結果的にそれが残留方式の欠陥を克服させたといえそうです。

しかし・・・

この場合、身近な集団内で種の保存が行われていくため、近親交配の欠陥が問題になりそうです・・・。

それについてはどう考えればいいのでしょうか?

(注)近親相姦という言葉は、最初からマイナスの価値観が含まれているので、近親交配と呼ぶようにします。

まずは、事実はどうなのか?

近親交配だと遺伝子が劣化するのでしょうか?俗説によれば奇形が増えるとさえれています。しかし、遠方交配の場合だと、確かに変異は上昇しますが、変異がプラス側(適応側)に働くのか、マイナス側(不適応側)に働くのかは別問題です。どちらかと言えば確率的にはマイナスの方が多いのです。

逆に近親の場合、優れた形質がかけ合わせられるという側面も上がります。またそれ以上に、置かれた環境に適応すべく獲得された形質が(近親だと置かれた環境が同じなので)、優れた獲得形質が継承される確率が上がるという利点があり、支配階級ほど同族婚的な婚姻となる傾向があるのもそれが一つの理由ではないかと思われます(例えば、欧州のハプスブルグ家の婚姻戦略はヨーロッパ王家の多くと婚姻結ぶものだが、何代も続けばほぼ近親婚となる。日本の天皇家と藤原家の関係も同様。平安時代から大正時代まで続けているのです)。しかし、それを主要な要因として、その一族が滅亡したことという事実はなさそうです。

また、動物の事例で言えば優れた競走馬や血統犬を人工的交配によって作り出すなど、日本には族内婚の流れをくむ、1960年代まで残存していました。
また孤島における配偶は、近親的色彩が上がり、環境の変化や他の地域での適応度は落ちます。しかし、獲得形質の継承から固有の環境により適応した固有種も登場し、環境条件が大きく変わらない限り滅亡することはないのです。

要するに近親交配によって、遺伝子が劣化する(奇形が増える)という言説には、遺伝学的根拠はないとみてもよさそうです。

むしろ重要なことは、進化戦略には遺伝子の相違の大きさによって進化を促進させるという戦略と、獲得形質の継承によって最終的に優れた形質を継承させるという二つが存在するということです。大脳新皮質の発達は後天的な獲得形質の要因が能力に占める要因が大きくなることを示し、そうであるがゆえに人類は進化の源泉をDNA進化ではなく観念進化におくとともに、遺伝的な戦略としては、後者の道を(もちろん置かれた条件に即してだが)選択したということだと思われます。

今回の追求は以上です。

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