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人類って何?③ ~人類は地上に自ら進出したのか?それとも地上に降りざるを得なかったのか?

前回は猿人とは結局サルだという結論になりました(リンク [1])が、人類とサルを分かつ最大の特徴でもある、樹上生活から地上進出したこと。

今回は、地上進出の詳細を追求していきますが、よく世間では、地上に進出することになったことで、道具の使用や知能が上がり、今の人類になったとされます。

この地上への進出についての事実はどうなっているのか?検証していきましょう。

 

■1.人類は地上に進出したのか?樹上に適応できなくなって地上に降りざるを得なかったのか?

地上には外敵も多く、餌も少ない。そんな過酷な外圧環境の地上に、防衛力(外敵が少ない、外敵から見つかりにくいetc.)もあり、生産力(果物や虫etc.)もある”樹上”をあえて捨てて地上に進出するメリットは普通に考えればありません。

 

だとすれば、【地上に降りざるを得なかった】。つまり、やむを得ない理由・原因があったとしか考えられません。

 

その理由として考えられるのは以下の5つぐらいでしょうか。

①山火事説:山火事や火山活動で森が燃え、地上に降りるしかなかった
②気候変動説:寒冷化で森林が後退していった
③餌がなくなった説:数年に一度の果実だけでは足りず地上に餌を求めて降りた
④種間闘争説:樹上での縄張り争いに負けて、森から追い出された
⑤樹上不適応説:足で枝を掴めなくなり、樹上に適応できなくなった

では、どれが一番整合するか?一つずつ検証していきます。

 

①山火事説
もし、山火事で森一帯が焼けたとしたら、逃げきるか全滅するかの2択。逃げ切った場合は別の森林に行き、そこに既に住んでいるサルとの縄張り争いになる→④の種間闘争説へ

 

②気候変動説
気候変動が起きた場合はどうか?この場合、じわじわと森林が後退していくことになるので、サルたちもじわじわと移動する。移動した先ではもともと住んでいたサルたちとの縄張り争いになる→④の種間闘争説へ

 

③餌がなくなった説
樹上の餌が少なくなった場合を考える。その場合は、まずは餌の取り合いが激しくなる。そこで負けたものは、今まで食べたことがないものを食料にするしかない→結局④の種間闘争説の検証へ

 

結局①~③の全ては④の種間闘争がどう決着したかに帰結します。

 

では、④種間闘争説を検証していきましょう。

 

実際に種間闘争に負け、追い出されて、ヒヒやニホンザルの様にほぼ地上に適応しているサルもいます。なので、それ自体は、地上に降りざるを得なかった理由としては一応整合します。

しかし、そういうサルも、実は逃げる時は木に登ったり、半分地上・半分樹上で生活しており、栄養価が高い大量の餌と絶大な防衛力となる【樹上機能(=足の指で枝を掴める)】を失ったわけではありません。

つまり、負けて北に逃げようとも、地上にいる時間が長くなろうとも、【樹上機能は決して捨てていない】のです。

にもかかわらず、人類の足が【枝を掴めないようになっている】のは④種間闘争だけでは説明がつきません。

したがって、人類とは、地上に降りたのではなく、何らかの理由で、【樹上機能を失った為に地上に降りざるを得なかったサル】だということしか考えられません。

 

■2.何で樹上機能を失ったのか?⇒先祖返りの突然変異

足の指がなんらかの原因で、掴めなくなった。その理由として考えらるのは、先祖返りという突然変異。

 

Q1.では、突然変異とは何なのか?そもそもどのくらいの頻度で起こっている現象なのでしょうか?

突然変異とはDNAの変異です。DNAの変異は2つのパターンがあり、1つはRNAの転写ミスによって起こるパターン。2つ目は、毒素や放射能や宇宙線、ウィルスなどによる外的要因によって起こるパターン。
〝突然変異〟という言葉に囚われると、突然だから珍しいことの様に感じますが、〝遺伝子の変異〟と捉えると、実はほぼ年がら年中、毎日起こっています。

 

Q2.では、その中で、”先祖返り”とは何なのか?どのくらいの頻度で起こっている現象なのでしょうか?

人は受精してから胎内で進化の過程(単細胞→魚類→両生類→哺乳類)を再現しながら、成長していきます。その成長の過程が途中で止まったまま生まれてくるのが先祖返り。実際に人間にも人口の3%は多乳頭症、千人に一人の割合で、六本指や水かきを持って生まれてくる子がいます。かの有名な豊臣秀吉も六本指だったといわれています。

サルの前の哺乳類は全ての指が平行に生えている。その内の親指がなくなると、枝を掴める親指が生えてくる。哺乳類時代の親指がのこったまま、サルの親指も生えてきたのが六本指で、【哺乳類時代で再現が止まったの】が樹上機能を失った先祖返りです。

 

■3.人類の置かれた逆境は、機能欠損による大逆境であり、外圧変化という進化の歴史からすると特異点である

生きとし生けるものは全て外圧に対する適応態。従って、逆境こそ進化の源泉であるが、人類がおかれた逆境と今までの生物を進化させてきた逆境は何が違うのでしょうか?

 

普通は、全休凍結など外圧が変化することによって逆境に追い込まれ、進化する事はある。人類が全く違うのは、外圧は何も変化していないのに、機能欠損によって大逆境に追い込まれたという所。今ある機能(しかも持っている中で最大の武器)を失って、進化した事は、魚だったら泳げなくなることと同義。

 

世間ではサルが【地上に進出〝できるようになり〟人類に進化した】と思われているが、人類は何かが〝できるようになった〟のではなく、最大の武器を〝失って〟大逆境に追い込まれた中、適応するしかなかった。それが人類なのだということです。

 

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