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人類って何?② ~猿人って結局、サル?それとも人類?~

前回は、教科書の定説「直立したから大きくなった脳を支える」ということの矛盾を整理しました。
今回もまた教科書の定説の点検をしてみます。

教科書には「自由に使えるようになった前あし(手)で道具を使用することを通じて、次第に知能が発達」と書いてあります。

では、【手が自由になり道具を使ったから知能が発達した】という説は成立するでしょうか?

 

 

■1.道具を使うのは人類だけの特徴ではない。

チンパンジーは木の枝でアリの巣をほじる・オランウータンは葉を傘がわりに使う・ラッコは石で貝を割るなど、他のサルや哺乳類も道具を使うことはできます。

サルは上半身を起こして手を自由に使えるようになったことで、身振り手振り、グルーミングやスキンシップもします。よって直立二足歩行をせずとも、手は自由に使えます。

だとすると、人類の特徴は、道具を使うだけでなく、【加工して使うこと(弓矢など)】になります。
それでも道具が作れるようになるのは原人くらいから。(約200万年前)

 

■2.「道具を使うことで知能進化した」は因果関係が逆

現代人は道具を頻繁に使うようになり、むしろ知能は退化しているとも考えられます。
たとえば、パソコンやスマホを使うようになって漢字が分からない、情報を鵜呑みにしてしまう等は頻繁に聞きます。
また、人類の特徴といえば、言葉を話すことなどの特徴もあげられるはず。

 

よって、道具が使えるようになって知能進化をしたのではなく、【知能進化した結果、道具が使えるようになった】ということ。

つまり因果関係が逆だということです。

 

前回のエントリーも加味すると、
【直立(二足歩行)できる。→だから手が自由になる。→よって道具が使えるようになった。→その結果知能が進化した】というのが教科書のストーリー。
でも、類人猿(テナガザル)の段階で、そもそも「直立(二足歩行)」はできるのだから、その時点で上記のストーリーは破綻します。

 

現代の人類学は化石を調査してその骨格で類推していく考古学のアプローチですが、サルを研究している人なら、テナガザルが直立(二足歩行)することは当然わかっているはず。
人類学者というのはサルのことを本当にわかっているのでしょうか?という疑問すら湧いてきます。

 

■3.なぜ「道具」なのか?⇒道具の使用で生産力が向上したことを結論づけたいから

では、なぜ「道具」を使うことで知能進化したという論理を推してきたのでしょうか?
論理的に成り立たないのに、なんでその理屈がまかり通るのでしょうか?

 

19世紀頃の産業革命頃から「道具によって知能が進化した」と言われ始めました。
その根底には近代思想家によって「生産力信仰」、「近代科学信仰」が拡散されていった背景があり、大量生産・大量消費の産業革命、つまり【機械化】を正当化してきた時代背景が関係しています。

当時の(現代もだが)生産力は“道具=機械=科学技術の進化のみ”を見ており、人間関係や幸福度などは度外視されています。

上記の「機械論」=「生産力史観」が、人類学にも影響を及ぼしており、その思想が人類学の基礎になっています。
そこでは、「人類の進化は生産力に規定されている」と語られており、「生産力がすべてだ」という価値観になる。その為「道具を使えること」が文明の進化の尺度とされたのです。

 

人類は特別に“知能”が進化した生物(とされている)⇒その為には「その知能は道具によってもたらされた。」という論理が必要。⇒その為には「道具を使うためには両手を空ける必要がある」。⇒その為に【直立二足歩行の必要があった】。

教科書のストーリーを建てる為の逆論理がそこには成立。つまり、【道具の使用で生産力が向上した】とするためには、【直立する必要があった】と考えられるのです。

 

■4.結局、猿人は本当に人類なのか?

教科書には「現在知られている最も古い人類は、今から約700万年前から600万年前にアフリカに現れた猿人」とありますが、猿人は本当に人類なのでしょうか?

今回の点検で、教科書で言われている「直立している」、「道具を使う」などは類人猿の特徴でもあり、人類特有のものではないことが明らかになりました。だとすると、様々な特徴から見て、結局【猿人はサル】なのではないでしょうか?

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そもそも、写真程度の骨しか見つかってないのに、何を根拠にヒトだと言っているのかもはっきりしません。

実際にアフリカでチンパンジーの化石が見つかっていません。
つまり、猿人の化石とされているものは、単に“チンパンジーの化石”なのではないでしょうか?それを“人類の化石”だと言っている可能性が非常に高いのです。

 

次回からは、では人類とサルを分かつ最大の特徴は結局何なのか?
そして、これまでのエントリーではオランウータンが最も近いのではないか?というところまで来ましたが、実際はどうなのか?を検証していきたいと思います。
次回もお楽しみに!

 

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