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【番外編】クロロフィルってなに?

以前から本ブログで追求している光合成。調べていくと、葉緑体に含まれるクロロフィルが関係していることが分かってきました。
しかし、クロロフィルってよく聞くけど、全然何をしているのか分からない!
今回は、“そもそもクロロフィルって何?”という所から迫っていきたいと思います。

■クロロフィルって何者?

クロロフィルは緑色を発色する色素で、葉緑素とも呼ばれています。
クロロフィルがなぜ光合成に関係するのか。それは、クロロフィルが光のエネルギーを吸収することができるから。
吸収されたエネルギーは、光合成の化学反応を進めるのに使われます。クロロフィルのような光合成色素が、太陽などの光に当たることで光合成という代謝反応が可能になるということです。

つまり光合成を行うためには光を吸収し、エネルギーに転換する仕組みがないといけないということ!
その役割を担っているのがクロロフィルなのです!

■クロロフィルの種類とそれぞれの働き

クロロフィルには、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc(クロロフィルc1、クロロフィルc2)、クロロフィルd、クロロフィルfの6種類あると言われています。

それではそれぞれの役割を見ていきましょう!
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(画像はこちら [2]よりお借りしました。)

○クロロフィルa
クロロフィルのなかでも最も一般的なものがクロロフィルa。酸素を発生する光合成(酸素発生型の光合成)を行う生物は、基本的にこのクロロフィルaを持つ。
分子量は893.49、分子式はC55H72O5N4Mg。
クロロフィルaが吸収する光は非常に幅が広いのが特徴。波長の短い紫色の光や濃い青色の光をよく吸収するだけでなく、オレンジから赤色の光も吸収する。反対に、吸収しにくいのは緑色の光。

○クロロフィルb
クロロフィルbは、クロロフィルaとはわずかに構造の異なる光合成色素。
分子量は907、分子式はC55H70O6N4Mg。
陸上植物全般は、クロロフィルaに加えてクロロフィルbを補助色素としてもつ。(緑藻類などにもクロロフィルbをもつものがいる)
クロロフィルbがよく吸収するのは、紫色よりもやや波長の長い光。また、色からオレンジ色の光も吸収する。

○クロロフィルc
クロロフィルcは、褐藻(ワカメやコンブなど)のなかまや珪藻のなかまなど、一部の藻類にみられる特徴的なクロロフィル。

○クロロフィルd
一部の光合成生物にのみ確認されている光合成色素。クロロフィルdの持ち主は藍藻(シアノバクテリア)のなかま
1940年代、アメリカの研究者が紅藻を用いた実験を行った際に発見したが、わずかな量しか得られず、詳細不明の「幻の光合成色素」とされていた。2000年頃、日本の研究者によってクロロフィルdは、紅藻の上に付着していた藍藻がもっている色素だったことが判明した。私たちの眼では「色」として確認できない赤外線(赤外光)を吸収することもわかっているという。

○クロロフィルf
クロロフィルfは、2022年3月現在の時点では最も歴史が浅く、2000年に入ってから発見された光合成色素。
クロロフィルfは長い波長の光、赤外線を吸収することができる。
最初はストロマトライト(シアノバクテリアが浅い海で生育して岩石状になったもの)の中で存在が確認された。その後、日本の研究者が、アカリオクロリスに近縁の特殊なシアノバクテリアが光合成色素として持っていることを明らかにした。クロロフィルfはクロロフィルd同様に赤外領域の光を吸収する。

★クロロフィルの種類が異なるのは、光の吸収する波長が違うからなのです。
複数のクロロフィルを持つということは、それだけ多くの種類の光を吸収し、エネルギーに変換できるので、効率が良いということなのですね。

 

前回、光合成を行う葉緑体の起源はシアノバクテリアなのでは?ということを述べていきました。
ではシアノバクテリアは葉緑体を持たずともそれだけで、光合成を行って自分でエネルギーを生み出しています。
シアノバクテリアには、このクロロフィルは含まれているのでしょうか?

■シアノバクテリアはクロロフィルを持つのか?http://www.sourui.org/publications/phycology21/materials/file_list_21_pdf/04Tanaka.pdfより要約。
クロロフィルの進化で最も重要な出来事は,シアノバクテリア(ラン藻)の誕生に伴ったクロロフィルaの出現。
シアノバクテリアの誕生以前は,光合成色素としてバクテリオクロロフィルが利用されていた。
しかし,構造上の制約のため,バクテリオクロロフィルでは水を酸化するだけの高い電位が得られず,硫化水素などが電子供与体として利用されており、光合成を行っても酸素を発生しなかった。しかし,バクテリオクロロフィルの代謝経路を一部働かなくすると,バクテリオクロロフィルの B 環の単結合を二重結合にすることができる。こうして作られたクロロフィルaは,バクテリオクロロフィルに比べ,短波長側に吸収極大を持ち,水を酸化するのに十分な高い酸化還元電位を実現することができた。この様にして,この地球上にはじめて水を分解して酸素を発生する光合成が誕生。これがシアノバクテリアの誕生であり,その後繁栄する藻類の歴史の始まりでもあった。

シアノバクテリアの時点から、クロロフィルを持っているからこそ光をエネルギーに変えることができるのですね!光合成を成す上でクロロフィルは欠かせないものなのではないでしょうか?

いかがでしたか?今回は以上です。

参考リンク
クロロフィルとは何か、そして光合成におけるその役割 [3]
農研機構 [4]
Study-Z『光合成の要!クロロフィルとはどんな物質?どんな種類がある?現役講師がザックリ解説!』 [5]
光合成の森『光合成色素』 [6]

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