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サル社会の構造⑧ ~原猿段階の知能進化の要因とは?(樹上過密化後②)~

以前のブログ [1]では樹上の過密化以降の知能進化の要因は、同類把握の機会が増えたこと、快の感覚の発達が要因だと結論づけました。今回はこれ以外にも過密化以降の知能進化の要因を追求していきます。

■“快の感覚の発達”からの皮膚感覚の発達

哺乳類時代から皮膚感覚を発達させ、それが知能の進化につながっていると以前紹介しました。
原猿で新たに獲得した“快の感覚の発達”がこの皮膚感覚を発達させ、知能の進化を促進しているのです。
快の感覚(気持ちいい、落ち着く、安心するなど)が発達すると、不快に敏感になり、より“充足度を上げたい”という思いが沸き起こり、“もっともっと充足するには?”探索回路が働きます。
この“もっともっと”を求めるようになると、今以上に快を得るために探索が始まり、スキンシップの回数も必然的に増え、皮膚感覚も敏感になっていきます。

さらにスキンシップの対象が増えたことも要因の一つ。
哺乳類のスキンシップは、“母と子”の間のみで行われていました。
過密前の原猿たちも母と子の間のスキンシップのみでしたが、過密になったことで状況は激変。
縄張りを持てなくなったメスは“ボスに近づくこと”が勝ち筋だという可能性を見出したのです。そしてボスを注視し、ボスが抱える不全を解消するために、“メスからボスへ”スキンシップを行うようになりました。
さらに、縄張りを持てなくなった弱オスたちも不全解消の相手を、同じ弱オスたちに見出し、“弱オス同士”のスキンシップも行われるようになりました。スキンシップの対象ではなかった相手とスキンシップを行うようになったことも、皮膚感覚の発達と知能進化につながっているのです。

■連携行動の発達

原猿の母と子は樹上生活。樹上では、母と子の細かな連携行動が必須です。
樹上は常に不安定なので、母と子の少しの重心のズレが命取りになります。
サルの大きな特徴は、「木から木へ飛び移れること」。
これができるのは、母と子の密着によって連携行動“重心移動”の訓練を積んでいるから飛べるのです!
タイミングが母と子で少しでもズレてしまうと木から転落してしまいます。
過密化以降、メスにとって周囲は(同類の)敵だらけ。いつ襲われるかわからない敵に対応するためには、敵が襲ってきた段階で樹上で瞬時に動かなければなりません。この時にも母と子の連携は重要。子が母の飛び移るタイミングを瞬時に皮膚感覚で感じ取り、母の動きに対応していきます。哺乳類以上の母と子の密着も、知能の進化につながっているのです。

■バランス感覚の発達
樹上で最も必要とされるのが“バランス感覚”
樹上に登った初期の頃からバランス感覚は発達してきましたが、過密以降は,単に樹の上で棲めるだけではなく、頻繁に樹上で闘わなくてはならなくなったのです。それによって複数の行動を同時に行う必要に迫られるようになりました。闘っている最中にバランスを崩したとしても、バランスを崩した状態からも攻撃を加えていく。(言うなれば落とし合いのような闘い方。)
バランスが取れるということは、脳回路を瞬間的に組み替えて、運動機能に伝達しているということです。
加えて、初期原猿は動きがノロかったのに対して(スローロリスなど名前にもなっている)、過密化以降の後期原猿は動きが俊敏に!
身体機能もより発達し、脳回路の組み換えも頻繁に行われるようになったのです。これも知能進化の要因です。
バランス感覚の発達を可能にしているのも、母と子の細かい重心移動の連携があるからです。

次回もお楽しみに。

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