- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

サル社会の構造⑤~原猿オスに同化⇒若オス達の意識にどんな変化が生まれたのか?~

前回は原猿メスに同化 [1]しましたが、今回は原猿オスに同化。

特に若オス達の意識にどんな変化が生まれたのかを解明していきますが、その中に、サル・人類に特有の共認機能の鍵が隠されていることがわかっていきます!

 

■1.飢えの肉体的な不全<精神的・意識的な不全が上回る、「無限苦行」の本能不全状態に陥った若オス達

前提としては、食性が変わって(葉っぱが食べられるようになって)エサも豊富になるとともに大型化し、天敵も減少。
防衛力と生産力に優れた陸海空に代わる第4の世界を手に入れた原猿は、一気に繁殖し、樹上は過密状態に。

縄張りオスは、餌は一定確保できるので、肉体的には充足している状態ですが、若オス達からの恒常的な縄張り侵犯があり、常に過剰緊張状態に陥っており、精神的・意識的には不全状態に陥っていることが想像できます。では、一方の縄張りを確保できない若オス(弱オス)達はどんな状態かというと、

〇若オス
過密状態となり恒常的な縄張り闘争が起こる。縄張りが重合しているのでどこにいっても他のサルの縄張りを侵犯することに。若オスたちは飢えに苛まれ、食糧を得ようとすれば、縄張りオスに襲われ、追い払われる状態。

(※前回記事 [1]

 

若オスの敵は縄張りオス(ボス)だけでなく、若オス同士も餌を奪い合う敵同士の関係です。オスの性闘争本能はメスよりも数倍強く、いきなり結束はできません。

飢えを凌ごうとすれば、縄張りオス(ボス)や同類からの掠め取りが必要になり、常に同類との衝突を続けなければならない状態です。

これまでの哺乳類の同類同士の闘争(性闘争)は、繁殖期以外は起きず、恒常的なものではありませんでした。繁殖期という限定された期間に両者の性闘争本能にスイッチを入れば良く、どちらかが戦意が無くなれば、敗従本能により、過剰な闘争は避けられていたからです。

しかし、両者の戦意がある無いに関わらず、常に同類との衝突を続けなければならない。かつ餌も確保できないという【肉体的にも精神的・意識的にも不全状態】が延々と続きます。

この終わりが無く、展望の見えない状態が続けば、やがて空腹を満たしたいという肉体的欠乏さえ、精神的な苦痛が生み出す「これ以上は戦いたくない」という厭戦感(えんせんかん)が上回り始め、活力(戦意)はどん底状態。言わば「無限苦行」の本能不全状態だということです。

みなさんはどこまで想像(同化)できるでしょうか。人間で言えば、例えば「戦争をしたくも無いのに、続けなければいけない。終わりの見えない闘いを強いられる」そんな状態なのだと思います。

しかし、この苦痛の極致の状態が逆に突破口になるのです。

 

■2.無限苦行状態⇒状況→心情への同一視→相手との期待・応合関係を築く→共感回路の獲得

この無限苦行状態→戦意も全く起きない状態の場合、目の前に餌を掠め取るチャンスが来ても、何もできずに終わるということもあったのだと思います。
そうするとどうなるか?

 

①相手と自分の”状況”の同一視の段階

若オス達は、最初は警戒感から、同類(相手)を注視していましたが、この無限苦行の状態から、やがて「相手も(自分と同じく)苦しんでおり、(自分と同じく)戦意が無い」ということを発見します。
相手に戦意が無い=相手は襲ってこないという安堵感を得ると同時に、相手も同じ苦しみ=不全を抱いていることを見出します。これが【相手と自分の”状況”の同一視】

 

②相手と自分の”欠乏(心情)”の同一視の段階

この安堵感=”快”の意識が、”不快(=不全感)”の意識をさらに高め、もっとこの不全感を解消したいという欠乏(不全解消欠乏)が高まります。
その不全解消欠乏の高まりを土台にして、相手と自分の”状況”の同一視を高める為に、更なる相手注視に入ります。
すると、相手も同じように「苦しんでいるのではないか?」「不全を解消したいのではないか?」という欠乏を持っていることがわかってきます。これが、【相手と自分の”欠乏(心情)”の同一視】。

この欠乏(心情)の同一視が可能になることで、同一視そのものに充足を得る回路(同一視充足回路)が成立します。

 

③相手と自分との間に「期待・応合関係」が成立する段階

真似充足が相手の行動への同化であるのに対し、同一視充足は、相手の心情への同化という点で本能を超えています(相手との心情の共有が可能になる)。

お互いの不全を解消するため、グルーミングやスキンシップなどの親和行為から、親和充足に収束。その結果、相手の欠乏に応えることが自分の充足にもなることを発見します。これが、【相手との期待・応合充足関係の成立】。

相手との期待・応合の充足関係が成立し、哺乳類由来の同類把握の機能の上に、原猿メスのオス注視の回路が塗り重ねられ(※前回記事 [1])、それがオス(こども)にも転写されて、【共感回路】は成立したのではないかと考えられます。

 

■ ■ ■

共認機能の基盤を為す、共感回路の成立過程は、原猿時代のオス・メスの適応過程の中にあることが、今回のことで明らかになってきました。
次回は更に、同一視、共感回路、共認機能の根源機能への追求を深めていきたいと思います。お楽しみに。

 

 

[2] [3] [4]