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サル社会の構造③~恒常的な縄張り闘争の下でメスはどうした?~

原猿時代、単体で生存していたメスは、若オスだけでなくメスを含めた周りの同類は全て敵という状況で、常に飢えに苛まれ縄張りが持てなかった可能性が高い。
そのような状況下でどうやって生存=適応していったのでしょうか。
◆これまでのやり方がまったく通用しない
外敵闘争においては、敵をいち早く察知し逃げるためには集団化は有効であるが、同類との縄張り闘争において縄張りを放棄して逃げることは本末転倒であるし、仮に逃げなくても次々とやってくる同類(メスや若オス)は、集団化しても侵入を防ぐことができない。
そのような状況下において、メスの唯一の可能性は縄張りを持つオスに守ってもらうこと。

繁殖期であれば、縄張りを持つ強いオスを惹きつけ守ってもらうことは可能であるが、繁殖期が終われば強いオスは去ってしまう。
これまでのようにオスを惹きつけるというやり方では、繁殖期以外の恒常的な同類闘争に対峙することができない。

◆初めてオスを注視
このような状況下で強いオスに近づくには、まずはエサを掠め取る意思がないことを示す必要がある。そのようにしてオスの後をついていくことしかできなかった。
強いオスについていく中で、同類同性や子供に向けていた注視を、オスに対しても向けることになる。
メスはオスを同類として対象化し、注視を続けたことで、オスへの接近が可能となった。史上初めてメスが同類異性(強いオス)を対象化した。

メスは縄張りオスの不全解消欠乏(恒常的な緊張状態)を見て取って、オスに親和充足を与えることで、強いオスの近くに居続けようとした。
親和充足を与えられたオスは、不全解消欠乏を解消するために、繁殖期以外でもメスを縄張り内から追い出さずに許容するようになる。この結果、縄張りオスによってメスの縄張りが確保される。

◆オスメスの取引関係⇒オスメス集団
哺乳類の習性と異なるのは、初めてメスが同類把握の機能を成体オスに向けた点。目を付けたオスの力量把握と、相手が不全状態にあることを把握する必要があった。

オスは不全解消欠乏、メスは縄張り防衛欠乏で、オスとメスの欠乏は全く異なる。(オスは意識の混濁、メスは肉体不全)
原猿のボスとメスの置かれた状況は確かに本能にはない事態ではあるが、突破口として使われたオスメスの武器は、縄張り闘争機能と親和機能で、既存の哺乳類の本能が使われている。
従ってこの段階でのオスメス関係からは同一視や共感は生まれない。むしろ取引関係に近いと言える。

この両者が創った集団は初めてのオスメス集団であると同時に、血縁以外の初めての集団となる。
また、オスの縄張り近辺には、ほかのメスも近寄ってくる。その後メスは、メス同士の性闘争を親和機能で抑制し、メス複数の集団となった。

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