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哺乳類の集団構造② ~哺乳類はなぜ集団化したのか?~

 

前回の投稿では「初期哺乳類のオス・メスが「単独」で行動しているのは何で?」を扱い、結論として『性闘争本能を強化したことによって普段はバラバラに行動すしている』と結論付けました。

 

初期哺乳類がオス・メス単独で行動していたのに対し、進化の過程で「集団化する哺乳類」が出てきます。このシリーズの大きな目的である

『人類にとっての集団の本質とは何か?それを本質から追求するには、人類社会、その前のサル社会は当然のことながら、そもそも哺乳類全般にとっての「集団とは何か?」を明らかにしていく』

から、今回は「哺乳類はなぜ集団化したのか?」を追求していきます。

 

 

1.哺乳類は圧倒的な弱者

自然界は強い者が弱い者を滅ぼしていく弱肉強食の世界。より強い者だけが生き残っていく適者生存の世界です。恐竜の時代は、大きい者が力を持ち、大きい者が強い時代の中、恐竜たちは進化するたびに大型化。それに対し、哺乳類の祖先は小型化の道を選び、大型爬虫類から逃げる・隠れる戦略を取っていました。

 

※以下引用 https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=370445※

2億2千万年前ごろより地球は一時的に寒冷期に突入する。その際に一段と高い恒温性を獲得したものが原哺乳類である。しかし彼らは10cmしか体長が無い(アデロバシレウス等、参考:リンク)。

その後温暖化に向かうにつれて大型爬虫類が繁栄していく。かかる中において弱者である哺乳類は恒温性を武器に夜行密猟動物として辛うじて生き延びていく。(変温性の爬虫類は太陽の当たらない夜は極めて動きが鈍くなる)。

※引用終わり※

 

その後、時代の経過とともに、哺乳類は土中から半地上生活に転じます(げっ歯類)。哺乳類は小型化の道を選んだゆえに、地上では圧倒的弱者。そのため、天敵から身を守ることが第一課題でした。一匹だと餌を食べるor獲ろうとしているうちに敵に襲われる可能性が高い。そこで、哺乳類は「集団化」の戦略を取ったと考えられます。

ここで、哺乳類の代表的な集団形態を見てみます。いくつかの型があり、種別によって集団の規模や成員の関係性が異なります。下記に“繁殖期の”代表的な4つの集団形態を紹介します。

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①オス・メスそれぞれ単体:食虫類(ex.アズマモグラ、フランクリン・ジリス)

・繁殖期以外の時期は、オスメスそれぞれが単独でなわばりを持つ。

・発情期になると、オスは行動圏が広がり、メスの3倍の大きさのなわりを持つ。なわばりを持てない2/3のオスはなわばりから追い立てられ、死に絶える。

・オス(たち)はメスをめぐって別のオス(たち)と激しく闘う。この結果、オスは1~3年で別のオス(たち)と入れ替わる。これは哺乳類の共通構造である。

・妊娠するとメスはそれぞれ子育てに入る。この母子集団が哺乳類の集団の起点(生殖集団)

 

②母子集団隣接(協同して巣を防衛):多くのげっ歯類(ex.ベルディング・ジリス、キバラマーモット)

・成体になったメスは、自分の生まれた巣穴の近くにとどまるようになる。このため母親とその娘たちは、生活圏を共にするようになる(最大で15頭)。彼女らの結びつきは強く、結束して巣穴とその周辺を防衛する。

・オスは単独で別のなわばりを持ち、メスが発情したときにだけメスのなわばりに入るのが許される。

・キバラマーモットは、基本的に前者と同じだが、繁殖期には、そこに別の群れから移動してきたオスが一頭加わり、協同してなわばりを防衛する。

 

③血縁関係のある複数のメスで母系集団を形成:一部のげっ歯類、小型・中型の草食動物、ネコ科(ex.オリンピック・マーモット、ライオン)

・血縁関係にあるメスたちと子どもたちの集団で、繁殖期にはそこに少数(1~3頭)のオスが加わる形態。

・メスたちの結びつきは強く、マーモットの場合は協同して巣穴を掘ったり、防衛や警戒行動を行う。メスは共同授乳して、他のメスの子どもも分け隔てなく育てる。

・ライオンのメスは協同で狩りを行い、オスは狩りをしない。

 

④血縁関係のない複数のメスの母系集団が合流:大型の草食動物(ex.トナカイ、アフリカゾウ)

・メスたちを中心とし、血縁のある子どもを連れ、群れをつくる。乾季から雨季への移行期にこれらの5頭から10頭前後の母系集団は、合流して時には数千から数万頭の大集団を形成する。オスは生殖年齢に達すると、親から別れて数頭で集まって暮らす。若いオスはオスの群れで何年か過ごしてからメスのいる群のオスに挑戦してオスを追い出したり、若いメスを奪い取ったりする。

 

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2.集団化することで、天敵からの防衛と餌の獲得を実現

集団化のメリットは、

・集団で防衛できる(襲われた仲間を助ける)

・敵を見つけやすい

・離散して逃げれば的が絞れない

・獲物を見つける確率が上がる(餌を確保しやすい)

などで、敵からの防衛力と餌を獲得するうえで有利。集団を構成する成員全体で外圧を察知することにこそ、集団化のメリットがあります。中でも弱者である哺乳類にとって極めて重要なことは敵の察知。敵をいち早く察知するために哺乳類は集団を形成したのです。それぞれの集団を見てみるとあることに気付きます。それは、集団の主(あるじ)はメスだということです。一般的には「オスが集団を率いている」イメージが強いかもしれませんが、実は哺乳類はメスが集団の中心=母系集団が集団形態の基本となっています。

 

3.メスの親和本能を強化し、性闘争本能を抑止⇒集団化を実現

 

哺乳類が集団化するために、越えなければいけない本能が「性闘争本能」です。

 

性闘争本能とは、

※以下引用(https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=370703 [1])※

哺乳類に顕著な本能として、生殖期間中に発動するオスの性闘争本能がある。より適者を残す為、オス同士が闘い合い、勝った方がメスと生殖する。この本能は魚など他の生物にも見られる本能だが、哺乳類はその性闘争本能を強化した種。つまり、同類との闘争が一時的ではあるものの種存続上の第一義課題となっている。

※引用終わり※

 

原哺乳類はこのオスだけではなくメスも性闘争(縄張り闘争)を行う。そのためお互いが敵同士で集団が作れない。

個体同士を敵対視する性闘争本能を上回る機能がないと集団化はできない。そこで、哺乳類がとった戦略が「メスの親和本能の強化」です。性闘争本能がオスよりは弱い、メスの親和本能を強化することで、哺乳類のメスは集団を形成することができたのです。

 

 

4.まとめ

哺乳類はなぜ集団化したのか?をまとめると

・哺乳類は圧倒的な弱者であった

・集団化することで、天敵からの防衛力と餌の獲得を実現

・集団化するために、メスの親和本能を強化(性闘争本能を抑止)

・集団の主は「メス(=母系集団)」である

 

次回は「哺乳類はなぜ母系集団なのか?」を扱っていきたいと思います。

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