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哺乳類の集団構造①~初期哺乳類のオス・メスが「単独」で行動しているのは何で?~

 

高度成長期以降、都市へと人が流れ込み村落共同体が崩壊。人類は核家族という社会=生産過程から切り離された、消費だけの集団を単位として生きている。核家族は現在上記のような異常な事態なども発生しており、今後どのようにして単位集団を再生していくのかを探るためにも、人類・サルを含めた哺乳類がどのように集団を形成しているのかをおさえていきます。/改めて「哺乳類」を追求する [1]。より

 

上記のように、現在は既成の集団が全て崩壊過程にあり、根底からの集団の再生が求められています。人類にとっての集団の本質とは何か?それを本質から追求するには、人類社会、その前のサル社会は当然のことながら、そもそも哺乳類全般にとっての「集団とは何か?」を明らかにしていく必要があります。

そこで今回から、シリーズで「哺乳類の集団構造」を追求し、集団とは何か?を明らかにしていきたいと思います。

 

 

◆1.「オス・メス単独で行動している」モグラ(食虫目)やネズミやリス(げっ歯類)

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アズマモグラ(食虫目)               フランクリン・ジリス(げっ歯類)

 

哺乳類というと馬やライオンなどの大型哺乳類を想像していまいますが、食虫目(モグラ)、げっ歯類(ネズミ、リス)などの小型の哺乳類が大半で、およそ3/4を占めています。彼らのうち、食虫目のモグラが我々人類の祖先にあたります。

 

実は、彼らは繁殖期以外の時期は、「オス・メスそれぞれ単独のなわばりで行動」しており、発情期になって初めて、オス同士がメスを巡って争い、勝ったオスはメスのなわばりに入ることが許されます。

 

発情期になると、オスの行動圏が広がり、メスの3倍の大きさのなわばりを持ちますが、なわばりを持てない2/3のオスは、なわばりから追い立てられ、死に絶えてしまいます。

 

オス(たち)はメスをめぐって別のオス(たち)と激しく闘った結果、オスは1~3年で別のオス(たち)と入れ替わります。実はこれは哺乳類の共通構造でもあるのです。

 

 

2.哺乳類になって単体行動した(している)のは何で?

 

哺乳類の前の魚類、両生類は”群れ”て行動していましたが、哺乳類のほとんどのオス・メスは「単独で行動」しています。一体何が違うのでしょうか?

 

それは卵生から胎生へと変わったことに起因します。

 

初期哺乳類は、土中や地中近くで隠れ住むモグラやネズミなどですが、膜(≒卵)の乾燥化を防ぐ為に、胎の中で生む胎生へと進化(変化)していきます。(※膜を”殻”にして固くしていく方向が爬虫類や鳥類)

卵を多く生んで成体になる前に多くが死ぬ(多産多死)ことによって、種として成体前に淘汰圧力がかかる卵生に比べて、胎内で生む場合、成体になるまでの淘汰圧力がかからない。その為、成体になってから淘汰圧力がかかるように哺乳類は性闘争本能を強化しました。

 

※性闘争本能とは:性闘争とは、メスの獲得を巡るオス同士の闘い。淘汰適応の一形態で、メスには強者選択本能に基づく選択権(力)が与えられており、オスがメスに受け容れられる為には、メスが安全に出産・子育てができる縄張りを確保しなければならず、従って縄張り闘争も勝ち抜かなければならない。性闘争本能⇒縄張り本能は、雌雄に分化したすべての動物に備わっているが、とりわけ哺乳類は(胎内保育中は淘汰されないので)性闘争本能をとことん強化して、淘汰適応を成体後の激しい性闘争に委ねた動物である。

 

この性闘争本能の強化によって、オス同士はメスを巡るライバル同士。したがって群れないし、メス同士も同様に性闘争本能があるので、初期の哺乳類は群れません。この性をめぐる闘争本能の強化ゆえに、単独行動をとっているのです。

加えて彼らは地中に隠れ住んでいるので、外敵にもほとんど見つからないし、餌(ミミズや幼虫)もほぼ均一に存在しているので、このような生存環境では集団を作るメリットもありません。

 

モグラ以降の各哺乳類で集団化していきますが、その構造をみていくと、ある大目的が見えてきます。次回はその集団化の目的について扱っていきたいと思います。

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