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私たちの体の中には380兆個のウイルスが共存している

最近の研究で、人の体内には380兆個ものウイルスが共存していることが明らかになっています。実は、私たちは細胞と細菌,菌類,そして最も多数派を占めるウイルスが同居する1つの生物集団,つまり「超個体」なのです。

ウイルスの中には有害なものいますが、多くは共存しているだけで、一部には私たちを助けてくれている可能性もあようです。通常私たちの免疫系はウイルスを制御していいますが、免疫が阻害されるとウイルスは容易に増加してしまいます。

だとすれば、ウイルスが増殖して病気になる時は、ウイルス自体が原因というよりも、むしろ免疫系が阻害される、機能しないことが主要な要因だと考えたほう良いようです。

 

細菌に取り付くファージ [1]細菌に取り付くバクテリアファージのイメージ

 

以下、日経サイエンス 2021年7月号 「あなたの中にいる380兆個のウイルス」より抜粋
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・実は多くのウイルスが肺や血液,神経の細胞内や,多数の腸内細菌の内部に隠れており,人の体内に静かに潜んでいることが明らかになってきている。現時点で生物学者たちは380兆個のウイルスがあなたの体の表面や内部で生息していると見積もっている。この数は体内の細菌数の10倍にのぼる。

・以前は,私たちの人体は“自分の”細胞でできていて,それがときどき微生物の侵入を受けるだけだと考えられていた。しかし科学的知識が急速に拡大したことで,実は私たちは細胞と細菌,菌類,そして最も多数派を占めるウイルスが同居する1つの生物集団,つまり「超個体」であることが明らかになっている。最新のデータによれば,あなたの体内の生体物質の半分ほどはヒト由来ではないことが示されている。

・ウイルスは人体の隅々にまで生息している。口腔、神経系、母乳、胃腸管、尿路、膣、血液、観閲液、気道、皮膚表面のほか、微生物のいない環境であるはずの中枢神経にも、そこそこ多様なウイルス集団が存在している。

・生後間もない乳児の腸にも多様なウイルスが存在することが明らかになっている。おそらくそれらは母親に由来し、一部はは母乳から摂取されると考えられる。

・私たちの体内にいるウイルスの多くは私たちの細胞を標的にしているのではない。代りに、私たちのマイクロバイオームを構成している細菌を標的にしている。これら細菌に感染するウイルスは「バクテリアファージ」(略して「ファージ」が多い)と呼ばれる。ファージは自然界のほぼ全ての場所に存在し、その場所に生息する細菌を獲物にしている。人間は狩りをする場所の一つにすぎない。

・私たちのバイローム中の多くのウイルスは、細菌に感染する。人体組織の細胞に直接感染するウイルスもわずかながらあるが、この手のウイルスは少数派だと考えらている。

・免疫系の働きが著しく弱っているとき、特定のウイルスが増加する。こうしたケースでは、病気を引き起こすことが知られるウイルスと、そうではないウイルスの両方の増加がみられる。この観察結果は、通常私たちの免疫系はバイオロームを制御していおるるが、免疫が粗以外されるとウイルスは容易に増加できることを示している。

・多くのファージは長期にわたって獲物の内部に共存しており、細胞を破って外に出ることはない。宿主の生存がファージの生存を決めるので、ファージは宿主が生き残ることで得をする。

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