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カタワのサル(人類)は、安定性(女性による採取)と変異(男性による狩猟)で生存出来た。

Posted By seibutusi On 2020年3月12日 @ 9:29 PM In ⑧科学ニュースより | No Comments

現生人類は、「アフリカで誕生し、気候変動から獲物を求めて(狩猟をしながら)、高緯度に進出し、旧人(ネアンデルタール人やデニソワ人)と交雑して誕生した。」が有力な説であるが、人類が狩猟民族(西洋思想より)とは思えない。

人類は生物進化の摂理に則って、安定性(女性による採取)と変異(男性による狩猟)で気候変動に適応してきたのであろうと考える。

男性による狩猟」仮説」と「女性による採集」仮説に対する研究発表が有りましたので紹介します。

>肉食が重要になったのは人類が高緯度地帯に進出し、熱量の大部分を動物性食料に頼る特殊な適応を必要としたときであろう。むしろ、更新世の段階で重要だったのは、植物性食料、魚、昆虫、その他の小動物、死肉などの食料のレパートリーを増やし、季節や環境その他の条件に応じて使い分ける能力を獲得したことにあるのではないだろうか。

肉食と狩猟ー遺跡出土資料からの検証

本郷一美(京都大学 霊長類研究所)

http://anthro.zool.kyoto-u.ac.jp/evo_anth/evo_anth/symp9911/hongo/hongo.htmlより

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動物考古学やタフォノミー研究により更新世の人類の行動についてどのようなことが言えるかについて、肉食と人類進化に関する研究の現状をふまえて考察する。

「男性による狩猟」仮説

まず、多くの初期人類の遺跡で石器に大型獣化石が共伴して出土するという事実から、大型獣狩猟と肉食がホモ・エレクトス出現にいたる形態(大きな脳と体、消化器官の短小化)および社会行動(男性の共同狩猟、男女の分業、家族の発生)の進化をもたらしたとの説が提出された。この狩猟仮説は1950-60年代以来根強く支持されてきたが、「男性が家族を養う」との男性中心的なイメージ、「狩猟による肉食」を重んじ植物食を軽んじる西洋的価値観などのバイアスが影響していることは否めない。アイザックのホームベース(セントラルプレース)仮説(Isaac 1978, 1983)は肉の獲得手段を狩猟と限定はしていないが、大筋でこの説の延長上にある。

「女性による採集」仮説

1970年代末から植物性食料の重要性と食料獲得における女性の役割を見直す説が提出される。現代の狩猟採集民の摂取カロリーに動物性食料の占める割合はせいぜい30%程度であることを根拠とし、道具を使った植物(特に根茎類の)採集活動が人類進化に重要な役割を果たしたとするものである。男女別の採集戦略、女性同士あるいは女性から子供への食物分配が想定された。この採集仮説の発展形として、掘り棒を使った根茎類の採集と閉経以降の女性による孫の世代への食物分配行動が人類の長寿、早熟、多産、をもたらしたするモデル(O’Connel et al. 1999)、火を使って根茎類を調理する場での女性の共同作業から女性を中心とする大きな社会的グループが発生し、ボディガードとして特定の男性との長期間にあたるペア形成を促したとするモデル(Wrangham et al. 1999)が提出されている。

タフォノミー研究による狩猟仮説の検証

石器と動物骨の共伴だけを出発点とした狩猟仮説は、遺跡の形成過程における様々な遺物の変形を考慮したものではなかった。

1970年代末以降、狩猟仮説はタフォノミー研究によるさまざまな検証を受けた。一方採集仮説は、特に根茎類に関しては考古学的に検証することは困難である。火の使用の証拠はせいぜい230万年前までしかさかのぼれない。中期更新世以降の遺跡で食料となりうる植物遺存体の出土例はあるが、いずれもヒトが集めたあるいは食べたという状況での出土ではない。

動物考古学者は遺跡における骨や石器の堆積過程の詳細な研究を行なった。遺跡から出土する動物骨が、狩猟されたものか、死肉あさりにより手に入れたものかが関心の中心であった。遺物と大型獣骨の集積には人以外のどのような作用が関係しているか、出土する動物骨の部位ごとの出土頻度、骨の破砕状態、解体痕からヒトが他の肉食動物に先だって獲物を手に入れたといえるか、などに注目した。この20年あまりの間にライオンなどの捕食者とハイエナなどのスカベンジャーの菜食行動の観察データと、骨の破壊や風化に関するさまざまな膨大な実験データが蓄積され、遺跡における出土状況とのつきあわせが行われた。肉を手に入れる手段に関しては、ホモ・エレクトス / エルガスターの段階では大型獣の肉は死肉あさりで手に入れていたという点と、古代型ホモ・サピエンスの段階では少なくとも小動物の狩猟は行っていたという点では研究者の間でほぼ意見の一致を見ている。しかし、死肉あさりの形態については、積極的に他の捕食者を追い払うことができたのか、他の動物がほとんど肉を食べた後に残されたわずかな骨髄を手に入れるにすぎなかったかの論争が続いている。皮肉なことに、膨大なタフォノミーと遺跡形成に関するデータが蓄積されたにもかかわらず、それをもとに人類の進化に関する有効なモデルを提出することはできていない。
肉食の進化的な意味

それでは、死肉あさりによる肉食は、人類の進化においてどのような意味を持っていたのだろうか。ヒト以外の霊長類はほとんど死肉あさりをしないことから、死肉あさり行動をヒトの特徴ととらえることさえできるかもしれない。より乾燥した環境への適応の初期段階においては死肉あさりによる肉食は重要な生態的ニッチェであったと思われる。肉食=男性による食物分配という図式は必ずしも成り立たないが、もし積極的な死肉あさりが行われていたのであれば、ライオン・ヒョウなどの最初の捕食者を追い払うという草食獣の狩猟よりも危険な行動や、肉食獣が近づかないように見張りをたてる役割分担をすることは社会性の発達に貢献したであろうし、危険性を計りすばやく対応する柔軟性も発達したことだろう。

いずれにしろ、栄養的な面からだけ見れば、植物性食料がより重要であったことは間違いないであろう。肉食が重要になったのは人類が高緯度地帯に進出し、熱量の大部分を動物性食料に頼る特殊な適応を必要としたときであろう。むしろ、更新世の段階で重要だったのは、植物性食料、魚、昆虫、その他の小動物、死肉などの食料のレパートリーを増やし、季節や環境その他の条件に応じて使い分ける能力を獲得したことにあるのではないだろうか。また、リスクを伴う積極的な死肉あさりにおいては成功するかどうかを見通す状況判断能力と、変化する状況にすばやく対応する能力、共同行動が必要である。これらの能力がかなり早い段階で発達していったことは、チンパンジーが集団で他の群に攻撃をしかけたり、攻撃の最中に撤退するタイミングを判断する能力を有することからも推察できる。

客観的に肉食の重要度を判断する方法には、歯のマイクロウェアの観察(Bunn 1983などーただし、死亡する前の短期間に食べたものがわかるだけで、食生活全体に肉の占める割合などはわからないだろう)、人骨のアイソトープ分析(化石となって有機質が残っていない場合は困難)などがあろう。

しかし、栄養的な重要度や食物中にしめる割合だけから肉食の重要性を論じることはできないことも確かである。男性による食料分配行動が栄養面からみて重要だったと仮定するならば、男性はむしろ小動物や植物性食料の採集で堅実に食糧を確保し、女性や子どもに分配するのが現実的である。しかし、これらの食料の獲得はリスクを伴わず、どこでいつ手に入るかがわかっており、供給を常にあてにできるからこそ、付加価値も低い。むしろこれらの食料に関しては男女別々の採集戦略があったと考えた方がしぜんである。肉の獲得は(死肉あさりによるものであっても)リスクと興奮を伴い、供給をあてにできないことで付加価値は高くなるが、安定した食糧資源とはなり得ない。非日常、お祭り的な意味を伴うハレの場の食料として肉の役割を考えるべきではないだろうか。

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