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生命を構成する糖を隕石から初めて検出!~宇宙に RNA の材料となる糖の存在を証明~

核酸(RNA)を構成する主要な糖分子リボースなどの糖が隕石から初めて検出されました。
これは、宇宙にも生命を構成する糖が存在することを示す発見とのことです。

東北大学プレスリリース [1]https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20191115_01web_RNA.pdf より。

生命を構成する糖を隕石から初めて検出 
  —宇宙に RNA の材料となる糖の存在を証明—

【発表のポイント】

•隕石から生命を構成するリボースなどの糖分子を初めて検出した。
•宇宙に生命を構成する糖分子が存在することを初めて証明した。
•地球外で非生物学的に作られた糖分子が地球にもたらされていた直接的な証拠を発見した。
•地球外で形成された糖分子が、原始地球で生命誕生の材料に使われた可能性を示す。

【概要】

東北大学の古川善博准教授らの研究グループは、2 種類の炭素質隕石から、リボースやアラビノースなどの糖を初めて検出しました。

リボースは核酸(RNA)を構成する主要な糖分子です。隕石からリボースなどの糖を検出したことは、宇宙にも生命を構成する糖が存在する ことを示す発見です。そのような糖は生命誕生前の地球にも飛来し、地球上の生命の起源につながる材料の一部となった可能性があります。

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図1左:糖が検出されたマーチソン隕石
図1右:リボースの構造模型とマーチソン隕石
Credit: Yoshihiro FURUKAWA

【詳細な説明】

隕石からはこれまでに、多くの有機物が検出され、タンパク質に含まれる一部のアミノ酸や核酸に含まれる一部の核酸塩基など、生命の原料になりうる有機分子も見つかってきました。核酸(RNA とDNA )は、核酸塩基と、リボースもしくはデオキシリボースという糖分子が結合したもので、遺伝情報の保存とその情報からタンパク質を作る役割を担っています。このように核酸には糖分子が必要ですが、核酸を形成しうる糖分子はこれまでに隕石を含む地球外由来の試料からは見つかっていませんでした。

東北大学の古川善博准教授らの研究グループは、独自に開発した分析手法によって、マーチソン隕石と NWA801 隕石からリボースを含む複数の糖分子の検出に成功しました。また、検出された糖分子の安定炭素同位体組成分析から、これらの糖分子が宇宙由来であることを確認しました。これまでの研究では、生命と関係の薄いジヒドロキシアセトンという糖分子だけが見つかっていましたが、今回の研究では生命の根幹を担う核酸を構成する糖分子を検出しました。

このように糖分子は 40 億年以上前の太陽系初期に、地球外で形成されており、生命誕生前の地球にも降り注いでいたと考えられます。当時の地球上でも糖を生成する反応は起こっていたと考えられていますが、それがどのような種類の糖分子で、どれくらいの量が作られたのかを示す証拠は、残っていません。隕石からリボースなどの糖分子が検出されたことは、生命誕生前の地球での新たな糖分子の供給源を直接的に示す新たな証拠であり、地球外を起源とする糖分子が他の生命分子とともに生命の材料の一部となった可能性が出てきました

リボースの発見はさらに重要な意味を持ちます。現在多くの研究者が、初期の生命は、DNA-タンパク質が主役の複雑なシステムを持つ生命ではなく、RNAが DNA とタンパク質の両方の役割を担った単純な生命であったという RNA ワールド仮説を支持しています。本研究で DNA を構成するデオキシリボースではなく、RNA を構成するリボースが生物の関与しない宇宙空間で(非生物学的に)生成している証拠を得たことは、この点でも重要な意義を持っています。

今後の研究では NASA から新たに提供を受けた複数の隕石を分析し、地球外からどれだけの糖が地球にもたらされたのかを詳しく明らかにしていく予定です。

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図 2:生命誕生前の海洋への隕石飛来の模式図

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図 3:RNA の模式図

(以上)

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