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光をエネルギーとするシアノバクテリアは暗闇の環境でも生きている

シアノバクテリア(二酸化炭素と光合成する事で、有機物の創造と不要になった酸素を外部に放出する)の繁殖により地球の酸素濃度を劇的に上昇させた。そのシアノバクテリアは「暗闇の極限環境にも生存していた」とのニュースがあった。光の無い世界でどうして生存できるのか?

>シアノバクテリアは主に水素ガスを食べて生存していると考えられる。水素ガスは、微生物の一般的な食べ物だ。特に、ほかに選択肢のない地下では貴重な栄養源になる。 地下のシアノバクテリアは、地上の仲間が光合成に使うのと同じ仕組みを利用して水素を処理し、電子を放出させているようだった。

→微生物の環境能力の高さ(今ある機能を変化させて環境適応)に驚くと共に、全ての生物は「退化する事で進化する」事を実践している。

 

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https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/100300428/ より

光合成する微生物を地下深くで発見、定説覆す

太古の地球で酸素を増やしたシアノバクテリア、暗闇の極限環境に生存の意味は

スペイン南西部のイベリア黄鉄鉱ベルト地帯は、まるでエイリアン映画のセットのようだ。鉄を豊富に含んだ大地にさび色の湖が点在し、スペイン語で「赤い川」という意味のリオ・ティント川が、暗い色の岩石の間を縫いながら鮮やかな赤色に輝いている。だが、その足元にはさらに奇妙な世界が広がっていた。

この黄鉄鉱ベルトでボーリング調査を行い、岩石コアサンプルを取り出したところ、太陽の光も届かず、水や栄養も乏しい地下600メートル付近でシアノバクテリアが大量に見つかり、研究者らを驚かせた。シアノバクテリアは環境適応力が高く、地球上のあらゆる場所で見つかっているが、これまで太陽光がなければ生きられないと考えられてきた。この研究成果は、10月1日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。(参考記事:「シアノバクテリアはこんな微生物」 [1]

「砂漠へ行っても海へ潜っても、シアノバクテリアを見つけることはできます。国際宇宙ステーションへ持って行って、生きたまま連れ帰ることだって可能です」。論文の筆頭著者で、スペインの国立生物工学センターの博士研究員であるフェルナンド・プエンテ・サンチェス氏は言う。

「見つけられなかった場所は、地下だけです」

光合成を行うシアノバクテリアは、地球の歴史において重要な役割を果たしてきた。大気中へ酸素を送り出し、そのおかげで生物が繁栄し、泳ぎ、這い、跳ね、走り、飛ぶように進化してきた。この新たな研究は、地下深くに何が生存できるのか、そればかりか火星やその向こうの世界にどんな生命体を探し求めるべきかについて、研究者に再考を迫ることになるだろう。(参考記事:「【解説】火星に複雑な有機物を発見、生命の材料か」 [2]

太古の地球で酸素を増やしたシアノバクテリア、暗闇の極限環境に生存の意味は

さらに、見つかったシアノバクテリアは今も生きていることが確認された。これには、細胞のなかの遺伝物質を特定できるCARD-FISH法と呼ばれる手法を用いた。細胞が死ねば、デリケートな遺伝物質はあっという間に崩壊してしまう。

シアノバクテリアが生きていることは分かったが、「ならばあんなところで一体何をやっていたのか、どうやって生存していたのかという疑問が持ち上がります」と、プエンテ・サンチェス氏は問う。

暗闇のなかどうやって生きているのか

シアノバクテリアの様子は、地表で生きる同様の微生物とさほど変わらない。メタゲノム解析を行ったところ、その祖先は砂漠や暗い洞窟のなかなど厳しい環境で岩石に付着して生きる種だったことが示唆された。

しかし、洞窟のなかの最も暗い場所でさえ、シアノバクテリアは光合成を行うと考えられてきた。すなわち、飛び込んできたわずかな光子を捕らえ、その光エネルギーを使って水を酸素と水素イオンに分解し、電子を放出させて化学エネルギーを得ていると。だが、太陽の光が全く届かない地下でどうやって微生物は生き延びるというのだろうか。(参考記事:「光合成ウミウシが激減、危機的状況、研究に支障も」 [3]

コアサンプルを見ると、シアノバクテリアが集中していた部分は水素が不足していた。つまり、シアノバクテリアは主に水素ガスを食べて生存していると考えられる。水素ガスは、微生物の一般的な食べ物だ。特に、ほかに選択肢のない地下では貴重な栄養源になる。

地下のシアノバクテリアは、地上の仲間が光合成に使うのと同じ仕組みを利用して水素を処理し、電子を放出させているようだった。厳密には、その仕組みが持つ「安全弁」機能が作るエネルギーを利用している。

太陽光が豊富な地上の微生物には、安全弁が作るエネルギーは必要ない。ただ光が当たりすぎた時だけ、細胞が焦げ付いてしまわないように安全弁を使って余剰エネルギーを逃がしてやる。一方、地下のシアノバクテリアは、安全弁が電子を放出することで発生するこのごくわずかなエネルギーに、ある程度頼って生存しているようなのだ。

光合成の機能を再利用

米デラウェア大学微生物生態学者のジェニファー・ビドル氏は、今回の研究には関わっていないが、「もともと備わっている機能を大きく変えることなく適応するという、すぐれたやり方だと思います」と述べている。

一方、海洋・地下生物圏を専門とする微生物学者のバージニア・エッジコム氏は、光合成機能の再利用はそれほど意外なことでもないと語る。厳しい環境にすむ微生物は、生存するために高い適応能力を持っていなければならない。エッジコム氏もまた、研究には関わっていない。(参考記事:「海底下1万mに生命か、深海の火山から有機物」 [4]

 

 

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