近年、微生物によるフリーエネルギー、環境浄化の記事が多くあり、その中で、
生物界では、
古細菌類の光合成菌が【光+CO2+H2O→炭水化物(グリコース)+O2】:反エントロピー増大の方向(統合化=秩序化)。
一方、乳酸菌、酵母菌が【炭水化物→アルコール+エネルギー→CO2+H2O+エネルギー】にする=エントロピー増大の方向(分散化)
以上の2サイクルで自然界は釣り合いが取れている。
又乳酸菌等の働きは、化学反応(電子のやり取り)で説明できるが、光合成菌による炭水化物生成は理論化できてなく(工業的に作ることができない)曖昧模糊となっていた。
本ブログでは、反エントロピー増大の方向(統合化=秩序化)の古細菌類を調べてみます。
★古細菌は進化系統樹では我々の祖先ではないとされていますが、私たちの祖先に近い事がわかった。
「光を感じる物質は古細菌から人間まで共通」(http://www.nature-sr.com/index.php?Page=11&Item=92 [1])
【オーストラリアやケニアなどの非常に塩の濃度が高い湖には、古細菌と呼ばれる生物が住んでいます。この生物は、細菌(バクテリア)よりも私たちの祖先に近いことがわかってきました。
私たち動物の眼には、光の信号を受けとるロドプシンと呼ばれるタンパク質があり、「ロッド(棒状)」と「コーン(円錐形)」という二つの変わった部分が外側に出て、光の刺激によりダイナミックに構造が変化します。
古細菌は、ロドプシンに比べシンプルな構造の「古細菌型ロドプシン」を細胞膜に持ち、光エネルギーで動くタンパク質であることが分かりました。古細菌は私たちのような複雑な「眼」の構造を持たなくても、光受容物質「古細菌型ロドプシン」により、光を感じているのです。】
★CO2から石油を合成する細菌(http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/007/st_2.html [2])
人類が放出した二酸化炭素を逆に石油に変え、生態系のバランスを取り戻す微生物が、静岡の油田のまっ黒なタールの中にいた。それが、私たちが発見した、廃液処理などに活躍しているシュードモナス属の細菌の仲間である。
(中略)
静岡の油田は、つねに石油が土壌中にわいているが、そばの小川には油が浮いてこない。ということは、土壌のどこかに酸素なしで石油を分解する細菌が含まれているのではなかろうか。
油田から採取したサンプルを石油培地に加え、無酸素ガス (CO2、H2、N2の混合気体) を吹き込んでみた。2週間ほどで、この培地で安定して生育する細菌が1株得られた。
シュードモナス属の新種と判断され、シュードモナス・アナエロオレオフィラHD-1株 (無酸素条件で石油を好むの意) と命名した。
その後、この細菌の生育には二酸化炭素が不可欠であることがわかり、石油以外に二酸化酸素も炭素源として利用している可能性が出てきた。そこで先の培地から石油を抜き、二酸化炭素と水素を主体とした無酸素ガスを吹き込んで生育させた。すると乾燥菌体から石油成分が抽出され、石油を合成する能力もあることがわかったのである。
この細菌は、エネルギー源としての石油が豊富にあるときはそれを取り込み (①)、石油がない環境では二酸化炭素を還元し、石油を合成してため込む (②)。今後、遺伝子解析を進め、遺伝子操作で石油生産能力の高い新種ができれば、と考えている。
酸素も光も必要とせず、二酸化炭素と水素を利用する生物が、進化のなかでどのような位置づけになるのか興味深い。だがそれ以上に、これからの人類にとっても、環境問題にとどまらない大きな可能性を秘めている。地球上でこそHD-1の性質は奇妙にうつるが、それは地球の大気には生物が40億年かかって蓄えた酸素が20.9%もあるからである。宇宙では二酸化炭素や水素のほうが一般的なのだ。
火星の大気は95.3%が二酸化炭素であるのに対し、酸素はわずか0.3%。木星は水素が89%で、酸素はほとんどない。人類が宇宙に進出する上で、この細菌は重要なパートナーとなる資質をもっている。
(いまなか・ただゆき/大阪大学工学部応用生物工学科教授)
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