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生物にとってエネルギーとは何か?

46 億年の歴史を持つ地球に生命か?誕生したのはおよそ38 億年前。生命の誕生には、豊富なミネラルを含む溶液の安定した環境である「海」の存在が不可欠でした。この溶液の中て、たまたま生じた核酸とその鋳型による複製を手段として生命が誕生したと考えられています。最初は藻や細菌類のような単細胞生物で始まり、およそ10 億年前には多細胞の生物が生まれ、次第に複雑な生物となっていきます。そしていわゆるカンフ?リアの大爆発と呼ばれる 多種多様な生物の出現に伴い、脊椎動物が出現するのがおよそ 5 億年前。魚類で始まった脊椎動物は、やがて両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類へと進化の道筋をたどります。

この生物の進化には、そのエポックとなる大きな進化が何度か起きていますが、その一つが動物の「海から陸への上陸」です。ここで、生物が直面したのが「1Gの重力」という未知の外圧でした。

ふだんは意識することはありませんが、私たちは地球の1Gという重力環境で生きています。地球上に存在するあらゆるものには、1Gという重力があまねく作用しています。したがって、この地球上で生れた生物は、この重力からの影響を受けながら生きています。そして、生物進化にも重力は大きく関わっています。

今年、重力波が初めて検出され話題になりなしたが、重力はまだまだ未明課題が多く残りる研究分野です。今日は、この「重力(重力エネルギー)」を足がかりとして、「エネルギー」と「生物進化」との係わりについて考えてみます。

生物の進化には、大転換となる大きな進化が何度か起きていますが、その中で大きく「重力」が関わっている出来事が動物の「海から陸への上陸」です。約4億年前、この陸上劇で原始脊椎動物であるサメが、陸棲の爬虫類型哺乳類に変わる進化が起きます。

 

 

イクチオステガ [1]
最初に上陸を果たした脊椎動物である原始両生類は、
3億6000万年前のデボン紀に登場したイクチオステガ(上図)と考えられている。(転載元 [2]

「海から陸への上陸」では、重力作用の6倍化と、灼熱の太陽光や夜間の極寒という、環境変化に直面します。水中では低い血圧でも血液を循環させることができますが、陸上にあがると6倍の重力がかかり、血が下に溜まっていきます。血液が循環しなくなってしまったサメは苦しみ、もがきます。そうして、バタバタともがくことで、血圧が上がり生き延びることができるのです。このとき、血圧が上がったことによって、血管内を流れる血液の抵抗が変化し、微弱な電流が血管内を流れます。その電流によって、遺伝子が発現し、軟骨動物のサメに硬い骨と骨髄造血細胞ができました。そして、この劇的な体制の変革を実質的に実現したのが、生命エネルギー生産の主体である「細胞内小生命体」ミトコンドリアでした。

このように、外部の「重力エネルギー」「環境エネルギー」を生命の仕組みに取り入れ、内部の「代謝エネルギー」生産を増幅させる事で、逆境を乗り越え適応した生物が脊椎動物だったのです。

生物の進化が起こるには、変化の原動力となる「エネルギー」の存在が不可欠です。ところが、これまでの進化論では、エネルギーは言うまでもなく、動物の発生過程や成長過程を省略し、その成体の形が変化する原因を「キリスト教自然神学」に基づき、全てを「(神の意志による)自然選択」にまかせていました。その後の「ネオダーウィニズム」でも「エネルギー」は、無視されてきました。そして、生命現象における「エネルギー」という視点の欠落は、現代医学と生命科学にも引き継がれ、それがガン・免疫疾患・精神神経疾患という「三大難治性疾患」への対応を困難にしてしまってる要因の一つではにかと思います。

ここまで見てきたように、 生物の進化が起こるには、変化の原動力となる「エネルギー」の存在が不可欠です。ありとあらゆる領域に「エネルギー」はあまねく存在し、それが大きな働きを持っています。

・重力、光波、気圧、寒冷、温熱など、動物個体に外から直接作用する「環境エネルギー」
・動物の動きで生じる「生体エネルギー」
・ミトコンドリアの細胞呼吸による「エネルギー代謝」

生命体は、あらゆる物質とあらゆるエネルギーを利用して生きる「エネルギー反応系」です。「生体力学」と「エネルギー代謝」、動物の行動様式と血流。生命エネルギーの源である「細胞呼吸」の主体であるミトコンドリアの「代謝エネルギー」。それらを実験、観察などから得られる事実に基づき追求し続ける事によって、従来の進化論から新しい『進化の学問』へと発展させることが必要なのだと思います。

 

参考文献:西原克成『生命記憶を探る旅 三木成夫を読み解く』

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