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異なる植物間で遺伝情報の交換が行われている

ネナシカズラDscn5430 [1] 画像はこちら [2]からお借りしました。

寄生植物と宿主植物の間において、メッセンジャーRNAを通じて、相互に遺伝情報をシェアしていることが確認されました。

◇植物が有している未知の遺伝子レベルのコミュニケーション手段を発見、バージニア工科大 [3]
<Science Newsline>より

Virginia Techの研究グループは、植物同士が大量の遺伝情報をシェアするために使用している新しいコミュニケーション手段を発見した。

Virginia Techのprofessor Jim Westwoodは、植物同士が分子レベルでどのようにコミュニケーションを取っているのか、科学的にはこれまでまったく未知の領域の門戸を開放することに成功した。植物が用いているこのコミュニケーション手段を利用することにより、穀物の収穫に大きな被害を及ぼす寄生雑草などを駆除するための新しい手段を獲得することができるようになるだろう。

そして彼はこの研究成果を雑誌「Science」を通じて発表した。

「こうした inter-organismコミュニケーションの存在は、我々が認識し得なかっただけで、これまで多くの種類で存在していた可能性がある」とWestwoodは言う。「そして今、我々は、植物は相互に遺伝情報をシェアしていることが判ったのです。ここで問題となるのは植物は何時、お互いで遺伝子情報をシェアしているのか?ということになるでしょう。」

Westwood は寄生植物のネナシカズラ(dodder)とその宿主植物となるシロイヌナズナ(Arabidopsis)とトマトの関係性を調べた。ネナシカズラは宿主植物から水分と栄養素を得るために吸器と呼ばれている器官を使用している。Westwoodは先行研究において、この寄生相互作用が行われている最中には2種類の植物の間でRNAの伝達が生じていることを発見していた。

今回、彼はこの先行研究の成果を発展させた上で、mRNA(messenger RNA)の相互交換がどのように行われているのかについて調べた。ただし、当初、mRNAは壊れやすく短命であることから、mRNAがこのような形で2種類の植物の間でやり取りされているとは想像することはできなかった。

しかし、Westwoodは寄生関係が生じている間において、数千のmRNAの分子がこの2種類の植物の間でやり取りされている証拠を発見した。このことはこの2種類の植物は寄生関係を通じて自由にコミュニケーションを取ることができていたことを示している。

こうして遺伝子情報を交換することによって寄生植物は、宿主植物に対して防御機能を低下させるように伝えることで簡単に攻撃を加えることができるようになる。Westwoodは次なるプロジェクトでは具体的にこのmRNAの交換を通じてどのような内容の事柄が会話されているのかを調査することを検討している。

寄生する側にとっては、宿主が病気にかかったり、免疫作用により栄養摂取を妨げたりすることは致命的な問題になるので、宿主の遺伝情報を取得して生育状態を監視したり、自らの遺伝情報を送り込んで防衛機構を低下させたりしているのかもしれません。

また、こうした異種間での遺伝情報伝達は少なからず発生しており、寄生支配と言う直接的な目的とは別に、環境(外圧)が大きく変化した際の適応可能性として、異種遺伝子を蓄積していることも十分に考えられます。

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