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健康・医療分野における微生物の可能性を追求する 04 乳酸菌の作用・可能性の追求 「ヨーグルトで歯磨き★」

花粉とウィルス

画像はこちら [1]からお借りしました。

微生物を身近に感じる一例として、乳酸菌があります。乳酸菌の健康効果はよく知られているところだと思いますが、中でも、みなさんよく乳酸菌と聞いてイメージされるのは整腸作用ではないでしょうか。

乳酸菌は腸内環境を整え、活性化させてくれる働きがあります。
また、他にも免疫力がアップして病気にかかりにくくなったり、発がん性物質の働きを抑えてくれるなどの効果もあるとして、最近は健康維持の総合的なサポートとなってくれるとして知られてきました。
しかし、乳酸菌の効果はこれだけではありません。

今回のブログでは、微生物を活用した製品の効果を探索するにあたって、まずは「乳酸菌って何?」から様々な作用・可能性を追求していきたいと思います。

※特記なき引用文は以下のサイトが出典です。リンク1 [2]リンク2 [3]

 

1. 乳酸菌って何?

乳酸菌は細菌の一種です。細菌は1つの細胞からなる生き物で、動物でも植物でもありません。地球上に動植物が誕生する前から存在していた生物です。その大きさは2~4μm程度。1μmは1mmの1/1000なので、とても小さな生き物です。

細菌にはさまざまな種類があります。その中で、糖類から発酵によって多量の乳酸を作り、悪臭の原因になるような腐敗物質を作らないものが、一般に乳酸菌と呼ばれています。乳酸菌は一定の特徴を満たす細菌の総称。慣用的な呼び名のため、特定の細菌を指すものではありません。なお、ビフィズス菌も、腸内に存在している善玉菌の一種で、乳酸菌です。

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画像はこちら [5]からお借りしました。

2. 乳酸菌の主な作用

腸内にいる悪玉菌は、たんぱく質や脂質をエサにして多くの有害物質を産生します。一方、乳酸菌などの善玉菌は糖質などを分解して、腸内を酸性にする乳酸や酢酸を作ります。悪玉菌は酸性の環境が苦手です。そのため、善玉菌が増えて乳酸や酢酸がたくさん作られるようになると、悪さができなくなるため、正常な腸内環境を保つことができます。

また、酸性の腸内環境は、体の外から入ってきた病原菌やウィルスにとっても苦手な環境なので、病気を未然に防ぐことにも繋がります。例えば、食べ物の中に食中毒菌が混入していたとして、それを食べてしまった場合。食中毒菌がすみつきやすい状態であれば、腸の中で増殖し、下痢や腹痛などを引き起こします。しかし、腸内が酸性で食中毒菌にとって好ましくない環境であれば、食中毒菌が増えないので症状がひどくならずに済むこともあります。

その他、腸内環境が良いと身体に良い栄養素をきちんと消化吸収することができますが、腸内環境が悪化すると、健康的な食事を心がけているつもりでも、実は体内に吸収されていないということがあります。ですので、きちんと栄養素を体内に取り入れるためにも、乳酸菌は必要なものです。

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画像はこちら [7]からお借りしました。

3.乳酸菌と便秘の関係

乳酸菌はブドウ糖や乳糖を分解し、たくさんの乳酸を産生します。ビフィズス菌の場合は、乳酸に加えて酢酸も作り出します。この乳酸や酢酸に大腸の蠕動運動を活発にする働きがあるため、乳酸菌は便秘の予防・解消に役立つとされています。

また乳酸菌には、便の水分量を調整する作用もあります。便秘になると、便が大腸に停滞する時間が長くなるため、水分がどんどん吸収されてしまいます。健康的な便の水分は80%程度とされるのに対し、便秘時の便の水分は60%以下。水分がなくなれば、便は硬くなって排出しにくい状態になり、さらに便秘を悪化させる原因になります。こういった便の水分不足を防ぐのも乳酸菌の働きのひとつ。乳酸菌は、蠕動運動を促しながら便を押し出すとともに便の水分量を適度に保ち、便秘の不快感を解消してくれる優れものです。

また前述に腸の中が酸性になると良いことを記述しましたが、もうひとつ腸内が酸性になると良い点があります。それは、大腸を刺激して蠕動運動を活発にする作用です。蠕動運動とは、大腸が便を排泄する際に行う運動です。大腸は1分間に2~3回、ミミズが這うようにくねくねと動くきながら、便を肛門へ送り出す仕組みになっています。

蠕動運動が低下すると、便は移動しにくくなり、大腸内に長時間とどまることになります。すると、便を腐敗しながら繁殖する悪玉菌が増加し、腸内環境を悪化させて便秘が慢性化しやすくなってしまうのです。そのような悪循環を防ぐには、日頃から乳酸菌を含むヨーグルトなどの発酵食品を食べたり、運動習慣を身につけたりするのが大切。適度に大腸を刺激して動かすようにしましょう。

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4. プロバイオティクスとは

昨今、乳酸菌などに代表される腸内細菌機能プロバイオティクスと呼ばれるものに注目が集まっています。それは、簡単に表現すると、プロバイオティクスは、腸内環境を改善して体に有益な作用をもたらす微生物で、以下の条件に当てはまるものを指します。生きたまま腸まで届くものが該当しますが、最近の研究では死んだ乳酸菌にも体によい働きがあることがわかってきています。

プロバイオティクスの条件

1. もともと人の大腸内にいる常在微生物であること

2. 胃酸や胆汁酸などによって消化されずに腸まで届くこと

3. 腸内で増殖できること

4. 腸内細菌バランスを改善し、腸内の腐敗物質を減す効果があること

5. 抗菌性物質を生み出したり、病原性を抑制したりする作用があること

6. 食品としても医薬品としても安全性が高いこと

プロバイオティクスはすべての乳酸菌に期待できる機能ではありませんが、予防医学の観点から乳酸菌などのプロバイオティクスは、さまざまな病気や疾病に対して効果が期待できます。

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画像はこちら [11]からお借りしました。

5.  ヨーグルトで歯磨き!? 乳酸菌の新たな効用

口の中では腸内と同じようにいわゆる悪玉菌と善玉菌が混在して、互いに縄張り争いをしています。

腸内では善玉菌として有名なビフィズス菌がありますが、なんと腸内と同様に口内にも有益な善玉菌がいるそうです。

虫歯や口臭に対しても乳酸菌が効果的であるという見解を述べた広島大学大学院医歯薬学総合研究科の二川(にかわ)浩樹教授の記事を紹介致します。

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 画像はこちら [13]からお借りしました。

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虫歯や歯周病に予防効果がある新しい乳酸菌(L8020菌)を使用したヨーグルトを広島大学大学院医歯薬学総合研究科の二川(にかわ)浩樹教授と四国乳業㈱(愛媛県東温市)が共同開発。四国乳業が「8020ヨーグルト」「8020のむヨーグルト」の商品名で2010年10月1日からコンビや通信販売等により全国発売(希望小売価格128円)している。
この乳酸菌の正式名称は「ラクトバチルス・ラムノーザスK03株」だが、二川教授は80歳で20本以上の歯を残す「8020(はちまるにいまる)運動」と連動して「L8020菌」と命名したものだ。
二川教授の専門は口腔生物工学で、先頃、東京都内で開かれた中国地域の5国立大学(鳥取、島根、岡山、広島、山口)が特色あるイチ押し研究シーズを紹介するビジネス交流会でも「L8020菌と8020ヨーグルトの開発」の経過について発表した。
それによると、開発の経緯について同教授は「虫歯菌や歯周病菌の減少効果のある乳酸菌の存在を検索しようと、虫歯や歯周病の治療歴のない、健康なヒト13名の口腔内から乳酸菌株42株を採取して培養。試験により虫歯菌や歯周病の両方に減少効果のある3種類を選別した。そのうち、ヨーグルト等の乳製品製造に適した乳酸菌として、健康な男児から採取した乳酸菌(L8020菌)を選抜した。同乳酸菌は胃酸でも死滅しない強さをもち、摂取することで虫歯菌と歯周病の感染菌4種を抑制する効果を持つことを臨床試験で確認できた」と述べた。
臨床試験では、学生25名を被験者として「L8020菌ヨーグルト」を2週間にわたって摂取させ、その後、細菌検査を実施。唾液中の虫歯菌は平均で80%、主な歯周病菌4種も40~80%が減少したことが確認されたという。
このほか、二川教授は新乳酸菌の想定される用途や業界について「乳酸菌食品以外にチーズ、キムチやお菓子やガム、歯磨き剤の用途も可能」としている。近年では虫歯や歯周病と全身の健康や疾病との関係が強く示唆されており高齢化社会のニーズに合致した新商品として期待される。

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本シリーズでは、今後も実験や調査によって、微生物との共生関係を最大限に活かす方法を探索していきたいと思います。

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