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「かたちから自然の摂理を学ぶ」シリーズ2~樹木が発生するのは水を好むからではない

自然や動植物、人間世界に現れる「かたち」を、流動系として捉え直すシリーズ。第2回目は、誰もが目にする「樹木」についてです。
「樹木はなぜ存在するのか」について、コンストラクタル法則の視点から見ていきます。

樹木 [1]

■樹木はなぜ存在するのか
原生林を残す屋久島などに行けば、誰もが自然界がつくる大きな生態系に心を動かされる。古い木の上に新しい木が重なり合い、大きな時間の中で、一つの生態系をつくっている。私達は、樹木から自然の営み、流れを直感的に感じ取り、その背後にある自然の摂理の存在を理解しているのでしょう。

一方、科学的にみれば、森は多様性とランダム性の実験室と見なす。確かに、単一の種を眺めたとしても、樹木には一つとして同じ枝も同じ葉はない。
ダーウィンの説に従えば、「樹木とは、増える一方のさまざまな競合する要求に駆り立てられ、非常に複雑な進化の過程の間に出現する生命ある構造」と見なします。
つまり、樹木は、日光を浴び、二酸化炭素を吸収し、水を大気へと放出するために、周囲の樹木と競争し、強風や枝に積もる雪など様々な自然外圧に適応し、開けた空間に向かって伸び続けなければならないのです。

しかし、改めて、なぜ樹木は存在するのでしょうか。そして、なぜ全ての樹木が(同じかたちはないにしても)樹状構造なのでしょうか。

■流動系としての樹木
樹木は一見すると、流動系とは思えない。太い幹があり、地面の中ではしっかり根を下ろしているため、ほとんど動くことはない。
しかし、樹皮の内側ではまったく異なる流れがあり、日々盛んに活動している。

樹木の中では何が流れているか?
―答えは簡単で、「水」が流れている。樹木や森林は大地から大気中へと水を運ぶために年中無休働いている揚水所と見なすことができる。
つまり、樹木は水という流動系を運ぶためのデザインとなっている。

illast1 [2]

では、なぜ樹木は大気中に水を運ぶのか?
それは熱力学第二法則によっている。つまり、エネルギーは「高」から「低」へ流れる自然法則に従い、自然界は局地的にも全体的にも湿気の多い所から少ない所へ水を動かす傾向にある。
例えるならば、木も草も、湿気の少ない空気が大地から水分を吸い取るためのストローのようなもの、ということになる。

つまり、始めに水があった。そして熱力学第二法則により、水は環境内の全ての水分を平行状態にする自然の傾向に支配されている。そして、その動きを促進するために、広範囲な変形と接続の流動デザインが現れた

植物が水の流れのためのデザインであることは、樹木の存在(大きさ、密度)と降水量との間の地理的相関関係が物語っている。

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樹木が「発生する」のは、そこに水があり、(上方へ)流れなければならないからであって、「木は水を好む」からではない。(p.198)

SEKAINOAME

樹木は地球規模の水循環をつくりだすために存在し、大きな秩序の中で流動系として協働しているのです。
次回は、最適な水の流れをつくりだすための樹木デザインについて見ていきます。

お楽しみに!

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