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睡眠=休息ってホント?睡眠を科学する(その2)

Posted By andy On 2013年9月28日 @ 7:42 PM In ④脳と適応 | No Comments

みなさんこんばんは
「睡眠を科学するシリーズ」、少し間が空きましたが、本日は後半戦をお届けします。
前回の記事はコチラ [1]
さて、今回の記事は「睡眠と記憶力の関係」について、最新の研究で得られた知見も交えて追求していきます
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■レム睡眠とノンレム睡眠
私たちは「寝ている状態」「起きている状態」をぼんやりと理解していますが、脳の活動という点から見ると、寝ている状態はさらに「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2つに分けられます。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いについて、簡単に言えば、レム睡眠は「脳は起きているが、身体は眠っている状態」、ノンレム睡眠は「脳は寝ているが、感覚器官や筋肉とはつながっている状態」です。
レム睡眠のときに私たちは夢を見ます。そして、眼球がさかんに動きます。ノンレム睡眠のときも夢は見るのですが、レム睡眠ほどではありません。感覚器官とはつながっているので、弱い刺激でも目を覚まします。
 
レム睡眠とノンレム睡眠は、睡眠中に交互に現れ、だいたい1.5時間がサイクルとなっています(下図参照)。
どんな人でも睡眠直後に最初に現れるのがノンレム睡眠です。加えて、最も深い眠り(スローウェーブ又は徐波睡眠と呼ばれる)は最初のノンレム睡眠時に出現します。睡眠サイクルを重ねていくと、徐々にノンレム睡眠の深さは浅くなり、時間も短くなります。
また、汗の量が多くなり、成長ホルモンが分泌されるのもノンレム睡眠時です。ノンレム睡眠は恒常性維持に重要な役割を果たしていいることが伺えます。
一方、レム睡眠の時間は睡眠を重ねるにつれて、だんだん長くなります。また、体温調整機能も低下しています。
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面白いですね 睡眠時になぜ、こんな不思議なリズムをとっているのでしょうか?
 
 
■ノンレム睡眠とは、記憶の精査・定着を行う睡眠
先ほど、ノンレム睡眠は「脳が寝ている時間」と書きましたが、最新の脳科学の知見から、実は「脳はノンレム睡眠時も活動的である」ことがわかってきました。
2006年、MITのマシュー・ウィルソン教授のラットを使った研究によれば、ノンレム睡眠の中で最も深い眠りにあたる徐波睡眠時に、海馬と新皮質の感覚野が同時に発火し、記憶の整理を行っているようです。
ラットが昼間に体験した出来事を、その日のノンレム睡眠時に「海馬のC3野」と「新皮質の視覚野」の2つの領域でほぼ同時的に再現し、昼間の出来事のおさらいをしているのです。
 
通常私たちの記憶回路は、海馬という記憶の審査機関を経て、大脳新皮質に長期記憶として保存される過程を経ますが、その作業が最も深い睡眠時に行われているのです。
つまり、ノンレム睡眠とは、「脳の睡眠時間」ではなく、「記憶を精査・定着させている睡眠」なのです。
 
【参考】ノンレム睡眠は「脳を休める睡眠」という定説が覆され始めた [2]
蛇足ですが、もうひとつ面白い研究結果があります。
つい最近発表された研究ですが、東大の河西春郎教授らの研究チームによって、睡眠前後で脳内の神経細胞間の接続部(シナプス)が物理的に整理されていることがわかりました。つまり、記憶の整理をするとは、物理的に脳内の神経細胞を整理することと同じといえるでしょう。
【参考】記憶の整理時に、脳内の神経細胞も物理的に整理している [3]
 
■レム睡眠は、情報の重みづけ・ラベリングを行う睡眠
次にレム睡眠の役割について考えていきます。
レム睡眠は原始的な睡眠の発展系で登場していますから、元々は「体を休める」役割を担っていたと考えられます。しかし、哺乳類段階で胎生機能を獲得すると、体内の恒常性を維持する必要が生じ、恒常性機能のメンテナンスの役割も上塗りされています。
加えて、大脳が発達した人類においては、情報の重みづけやラベリングを行っていると推測されます。
レム睡眠時には大脳辺縁系が活性化することがわかっており、大脳辺縁系とは扁桃体・海馬などの感情や記憶に関わる器官の集合体であり、過去の記憶や感情と精査した新情報を組み合わせて、記憶の重要性に応じた重みづけと整理を行っていると考えられます。
レム睡眠時に夢を見るのは、この情報の組み換え作業時に、一瞬ノイズとして意識に上るからではないでしょうか。夢が奇想天外なのも、脳が大胆な記憶の組み替えを行っているから、と考えると腑に落ちる気がします。
■脳と睡眠の関係から見えてくること
これまでの議論を整理すると、レム睡眠・ノンレム睡眠の役割は以下のようになります。
 
レム睡眠:
体の休息に加えて、恒常性機能のメンテナンス+情報の整理が上塗りされた
ノンレム睡眠:
視床下部による恒常性維持に加えて、情報の精査役割が上塗りされた

 
 
ここから見えてくることは、人類にとって睡眠とは、「体を休める」「体内の恒常性を維持する」という役割に加えて、脳のメンテナンスという意味合いが強いということです。しかも、それは脳を休めるということではなくて、起きている間に集めた情報を精査し、必要なものだけを長期記憶化し、さらには過去の記憶と組み合わせて、より使える情報として組み直しているのです。
 
では、このような作業をなぜ睡眠中に行うのか
おそらく、情報収集を停止することによって、神経細胞のシナプスの新生を避け、手持ちのシナプスだけで情報の最適化を行うのが、最も混乱が少なく、効率的だったからではないでしょうか。
 
脳が落ち着いて考えられる時間帯が、私たちが眠っている時間帯ということなのですね。
私たちは、脳の徹夜作業の成果品を無自覚に受け取り、次の日の活動に活かしているのです。
 
 
【参考】
睡眠なんでもサイト [4]
WAOサイエンスパーク [5]


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[1] コチラ: http://www.seibutsushi.net/blog/2013/05/001388.html

[2] ノンレム睡眠は「脳を休める睡眠」という定説が覆され始めた: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=278918

[3] 記憶の整理時に、脳内の神経細胞も物理的に整理している: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=280603

[4] 睡眠なんでもサイト: http://nandemo.ciao.jp/nemunemu-nandemo/suimin/nemuritoha/remnonrem/post-31.html

[5] WAOサイエンスパーク: http://s-park.wao.ne.jp/archives/597

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