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アインシュタイン、その光と影 4

“波”の媒質~物質の世界と非物質の世界

          
アインシュタイン、その光と影3 [1]では、音、水の波、光の速度について、ソース(=波動の発信源)の運動(≒速度)、並びに観測者の運動(≒速度)が、各々の波動の速度にどのように影響しているかを明らかにしました。
          
あらためてまとめると以下のようになります。
●音・水・・・ソースの速度は波の速度に足されないが、観測者の速度は足される
●光・・・・・ソースの速度も観測者の速度も光の速度に足されない
          
音であれ水の波であれ光・電磁波であれ、波の速度にはソースの速度=運動状態は関係ないという共通性が見い出せますが、同じ波でも光だけは観測者の運動状態も影響せず、いつも光速度一定という性質が貫徹されます。これは、地球の自転(=500m/sec)や公転(=30km/sec)を利用した精密な計測でも実証されています。一見不思議or矛盾するような現象が計測されるのはなぜなのか?を今日は考えてみたいと思います。
          
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音・水の波と光の違いは明らかで、音や水は空気や水面という物質が振動することによって起こる波動ですが、光=電磁波は物質の存在しない真空中を電場と磁場を周期的に発生させながら伝わってくる波です。現代でも“真空”とはどんな状態なのかはまだ結論が出ていませんが、最新の理論では「暗黒エネルギーと暗黒物質」「ゲージ理論」「超ひも理論」「空間子理論」など、物質以前の素粒子や空間構成要素が充満している状態が、物質世界の媒質と類似した働きをして、光や電磁波が“真空”と言われる宇宙空間を飛来するという仮説が有力視されています。
          

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「暗黒物質」はおそらく素粒子ですから、光はソースの近辺でも観測者に届く瞬間でも、基本的には物質のない世界を移動しているわけです。それは地球の大気中のように物質の存在する空間でも、大気という媒質を伝わるのではなく“空間”を伝わってきます。しかし、発信源は太陽という物質であり、観測者も人間や計測器という物質です。つまり、ある速度を持って光が移動する世界は“真空”と呼ばれてきた空間であり、ソースや観測者が動いている世界は物質世界となります。これは、光が伝わってくる次元が、ソースや観測者のいる世界と異なることがわかります。だとすれば、光の速度がソースや観測者の速度に影響されずに常に一定になるのは、物質世界に存在する要素がどんな運動をしていようが、真空中を伝わる光や電磁波の速度に影響がないのは自然なことだと考えられます。実際、私たちが計測している光の速度は、物質としての媒質の動きではなく、真空中に存在する素粒子or空間構成要素の速度であるわけです。
          
このように考えてくると、むしろ音波や水の波が観測者の速度を加算したように計測されることの方が不思議とも言えます。もちろん、音も水も物質の振動ですから、ソースの運動速度が影響しない方を と考えることもできます。
          
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では、なぜ物質波はソースの運動には影響を受けず、観測者の運動だけは反映された計測結果になるのでしょうか?
         
これは、波がソースから発生するときと、その波を観測するときの“世界”が異なるからだと考えてはどうでしょうか。確かに、音や水に限らず、光や電磁波も例えば太陽という“物質”から発生しますが、その発生はある一瞬の“物質”の作用によってエネルギーが真空中に放射される現象です。光はそのまま真空中を伝播してきます。しかし、音や水の波はそのエネルギーが物質の振動に一瞬にして置き換わります。そして、観測者はその物質の振動が連続して届いた状態を速度として計測します。
          
要するに・・・
          
●音や水の波は、発生段階では光と同様、物質の一瞬の振動エネルギーによって生起する。私たちはこのエネルギーを媒質速度として認識する。
●ところが、到達地点で計測しているのは物質の連続的運動によって認識できる物質の速度である。          
●波の発生段階ではエネルギーそのものを速度に置き換えて認識しているにもかかわらず、観測地点では媒質の連続振動として速度を認識する。よって、他の物質世界に存在する物体の速度と同様に観測者の運動状態が波の速度に加算される。
          
・・・波動の速度に関する捉え方は以上のようになるのではないでしょうか。
          
この解釈に立つと、音や水の波に関しても振動エネルギーが伝わっている速度は、振動する物質の速度とは別のものがある可能性も出てきます。ひょっとすると、物質の振動の背後にも、微弱とは言え電磁波の伝播を伴っている可能性は十分にあると思えます。それは単に、現代の科学水準では計測できないというだけなのかもしれないのです。
          
今日は少し観念的な内容になってしまいましたが、電磁波や光は、物質以前のエネルギーとして現在計測可能な数少ないものだと考えると、若かりしアインシュタインが描いた自然界のイメージにも少しは同化できるような気がします。

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