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【夏休み特集】日焼けを徹底解剖①~日焼けのメカニズムと肌の色

暑い夏真っ盛りですね。夏といえば、日焼け☆♪
きれいに焼きた~い♪と思っている人も、お肌の大敵・・と憂鬱になられる方もおられるでしょう。当ブログでは、夏休み特集として、日焼けを徹底解剖します
   
日焼けのメカニズムに始まり、肌の色と日焼けの関係など、話が広範に広がりますが、最後は正しい対処方法を具体的に提示します!
夏休みの研究にも、日常生活にも、ぜひぜひ役に立てて頂ければ嬉しいです
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■日焼けのメカニズム
とにもかくにも、まずは日焼けのメカニズムを知っておくことが必要ですね
 
ご存じのように、日光に当たると日焼けするのは「紫外線」の影響です。
 
紫外線は、波長の長い「A波(UVA)」、中間の「B波(UVB)」、波長の短い「C波(UVC)」に分けられます。波長の短いC波のほとんどはオゾン層で遮断されるので、日焼けに関わるのは主にA波(UVA)とB波(UVB)です。
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ひとくちに「日焼け」といっても、肌が真っ赤になってヒリヒリしてしまったり、水膨れになったりする「サンバーン」と、肌が黒くなる日焼けの「サンタン」の2つがあります。
「サンバーン」の主な原因になるのが中位の波長のB波(UVB)なのです。UVBはエネルギーが強いので、肌の表面の細胞を傷つけたり、炎症を起こすので、皮膚癌やシミの原因にもなるんです。
 
波長の長いC波(UVC)は、UVBほどエネルギーは大きくありませんが、肌の奥まで到達し、コラーゲンを変性させてしまうことでシミやしわの発生原因になります。UVAは雲や窓ガラスも通り抜けるので、曇りの日でも影響が出てきます。
 
このUVAが肌の奥、表皮の下層にある「メラノサイト」に届くと、メラノサイトが働き始めてチロシナーゼ活性酵素を生成します。それがチロシンと結合してメラニン色素を作り出します。このメラニン色素が、肌を黒くするのです。メラニン色素は肌を紫外線から守る為に作られるんです。肌が黒ければ、紫外線が反射されて皮膚の奥には到達しにくくなるんです。
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メラニン色素は、一度紫外線を浴びると日数を掛けて増えていき、徐々に表皮表面に上がってきますので、数日後に肌は褐色となります。
 
そこで、上手な日焼けの方法は、

① 午前10時から午後2時までの太陽光線の強い時間帯を避ける。
② 日光浴の時間は一日当たり合計で3時間を超えない。
③ 日焼け直後は肌が乾燥した状態なので、化粧水や乳液などで保湿を行う。
④ 赤みを感じる時は冷やしタオルや消炎ローションなどでほてりを抑える。
⑤ 以上を数日繰り返し、肌の色が褐色に変化したらサンオイルに切り替える。

  
要するに、ゆっくりと時間を掛けて焼くのが上手な日焼けの方法なんですね♪
日焼けを避けるには、日焼け止めを塗るのが当たり前になってきていますが、それに関しては次の記事で改めて分析します。
 
 
■肌の色が多様なのはなんで?
ここからは日差しによる肌の色の違いについて追求していきます。
 
黒人は日焼けするのか?と素朴な疑問をもっていたのですが、どうやらネット情報によると、答えは「YES」です。ただし、黒人の人は元々日差し対する防御性が高く、傍から見ても日焼けしているかわかりにくいという特性があります。逆に白人の場合、肌が真っ赤にただれてしまい、非常に痛そうです。
 
人類の肌の色の多様化は、なぜ生まれたのか?
実は、人類の肌の色と日差しの量は密接に関係があります。
 
そもそもチンパンジーの共通祖先から分化した人類は、当初から肌の色が多様であったわけではありません。
初期人類は、他の猿と同じように全身が毛に覆われていました。これは紫外線からの防御に加えて、保温効果もあるからです。
しかし、肉食動物などの外敵から逃れ、高温高湿の洞窟で隠れ住む生活を続けていく中で、毛が抜けていったと考えられます。
この時点から、人類は日光、とりわけ紫外線の悪影響から皮膚を守るために、肌の色を変えていく必要性に迫られたのです。
 
その後、人類は食糧難から世界中に拡散していきましたが、紫外線の強い地域に住み着いた人種は肌が黒く、緯度の高い地域(紫外線の弱い)に住み着いた人種はメラニン色素が少なく、肌は白くなっていきました。
面白い調査結果があります。紫外線の照射量と人類の肌の色が概ね一致するのです。
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肌の色はメラニン色素の有無に規定されますが、最近の研究では、肌の褐色化は皮膚ガンの発生だけでなく、妊娠や胎児の発達に不可欠な葉酸塩の破壊を防いでいることがわかってきました。
 
このように紫外線からの防御は人類共通の課題であったのですが、「だったら、みんな肌の色を黒くすればいいのでは?」と思いますが、実はそうではないのです。
 
紫外線は一定量浴びると、カルシウム吸収を促すビタミンDを生成できるというメリットがあります。
カルシウムは骨格の正常な発達や免疫系の維持には不可欠なものなので、紫外線の少ない高緯度に移動した場合、褐色肌ではビタミンD不足に陥ってしまうのです。ヨーロッパに住み着いた人類が肌を白くした理由は、ここにあります。
 
したがって、人類は紫外線から葉酸塩を守り、皮膚ガンの発生を抑える一方で、ビタミンDを生成するという相反する課題に対して、土地毎に相応しい肌の色に絶妙に適応していったのです。
何千年もかけてその土地に徐々に適応していった人類ですが、現代は人類の移動が盛んになり、紫外線量が自分の肌の色に合わない土地に突如移住することも多くなりました。肌の色が薄い人は皮膚ガンに、色の濃い人はビタミンD欠乏症になる危険性があるということを記しておきます。
 
補足ですが、一日中日射を浴びない人はビタミンDをどのように摂取すれば良いの?と疑問が浮かぶかもしれませんが、ビタミンDは食物でも摂取可能です。サンマやサバ、イワシなどの青魚に多く含まれているので、日中外出しない人、UVカット化粧品を常用している人、妊娠中の人は、食生活で補うようにしましょう

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