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人間と動物は共感出来るのか?~ペットの変遷編~

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みなさんこんにちは。
近頃すっかり身近になってきたペット。最近では犬が散歩出来るお店や、猫カフェなんかも増えてきましたが、果たして、生物学的観点から見て人間とペットの距離はどう変わってきたのでしょうか。また、「ペットの気持ちがわかる」とよく耳にしますが、人間と動物はお互いに共感できるのでしょうか。
これらについて追求したいと思います。


■ペットのはじまり
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ペットと家畜の歴史は古く、3万前の石器時代の遺跡にホラアナグマの飼育跡(洞窟の檻)が見つかっています。オオカミ(イヌ)の家畜化が3万年~1万5千年前から行われ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ニワトリ、ウマ、ラクダなど多種の動物が家畜として飼われました。
現代に近い愛玩動物として、5,000年前の古代エジプトのピューマ、南米のインディオではインコやサルが飼育されていました。狩猟において助けとなるイヌや、農耕において害獣となるネズミを駆除してくれる、ネコやイタチのような小型肉食獣が太古から飼われていた様です。

■なせ犬と猫がペットとして人の生活に身近になったのか

イヌはハッキリとした主従関係を好む習性から、家族の一員として扱われた歴史が長いとされています。石器時代におけるイヌの墳墓(埋葬に際して添えられたと見られる花の花粉が見られたり、なんらかの食料の残骸が一緒に発見されるなどの特徴も見られる)も発見されています。殉死によって飼い主と共に埋葬されたと思われるケースも。
欧米では、古来から現代まで王侯貴族や歴代大統領から一般市民の間で愛玩用、護衛用、狩猟用などとして飼われています。日本では徳川綱吉が犬公様と呼ばれるほど、犬に関する法律もたくさん作りました。

猫科の動物は古代エジプトにおいて神格化されたこともあり、高貴な身分にふさわしい愛玩動物として扱われ、実用的な用途よりも今日のペットに近い存在であったことがわかります。(丁寧に埋葬されたネコのミイラも発見されており、同時代に於ける同種動物の地位が如何に高かったかがわかります)。
ネコやイタチ・キツネのような小型動物(ネズミなど)を捕食する肉食獣を、穀物を食害から守る益獣として珍重していた文化が世界各地に見られ、好んで保護され飼育されていた事情が見られます。

現代の日本の2人以上の世帯においては、48%の世帯が、何かしらのペットを飼っている、という調査結果があります。2003年7月時点における飼育ペットの割合は犬62%、猫29%、魚類11%、鳥類7%(複数回答)となっています。今では、ペットを家族として迎え入れる人も増え、人間の生活により密接に関わる様になりました。また、盲導犬や聴導犬などの介助犬、警察犬として活躍する犬などの動物もいます。

5000年も前から“ペット”という概念があったのは驚きですね。
ペットの歴史を振り返ると、飼育する人間の生活環境の変化(身勝手な都合とも言えますが)により、
ペットに求める役割は
「狩猟・駆除・運搬」⇒「癒し・介助・子供の健全な心を育む」
と実用的側面から精神的側面へと大きく変化してきていることがわかります。
とりわけ犬はペットの中でもダントツの人気で、ハッキリとした主従関係を築くことが出来ることが、古来から愛される秘訣なようです。

■飼い主とペット-人間と動物は共感出来るのか

古来から続くペットという人間と動物の関係ですが、人間はペット・動物を擬人化し、相手の感情を読み取ることで共感することができます。果たして逆の場合はどうなのでしょうか。同じ哺乳類であり、ペットとして広く親しまれている犬と猫に着目し解明してきます。

□犬と人の場合
ポルトガルのポルト大学の研究者らによって、犬が人のあくびの”音”だけを聞いたとき、犬にあくびがうつるのか?という実験が行われ、その結果が『Animal Cognition』に発表されました。
研究者らは、6ヶ月以上いまの飼い主と暮らしている、さまざまな犬種と年齢の29頭の犬を対象に実験を行いました。実験では、飼い主と見知らぬ女性のあくび音を録音したものを、7日間あいだを空けてそれぞれ2セッションずつ犬に聞かせました。犬がなるべくリラックスした状態でいられるよう、それぞれの自宅の馴染みの部屋で、そこには飼い主がいないかわりに、犬が知っている他の人と一緒にいるという状況下で実験が行われました。
その結果、29頭のうち12頭(41%)の犬があくびをし、また、見知らぬ人のあくびに比べて飼い主のあくびの音を聞いた時の方が、5倍の頻度であくびをしたそうです。ただ単にあくびの音を聞いてうつるだけではなく、犬にとってあくびの声の主とどれだけ親しいかということが、あくびがうつる現象に大きく影響を及ぼしていたということだったのです。
この結果を受けて研究者らは、15,000年という時を経て緊密な暮らしを続けてきた人と犬であるからこそ、異種間であっても共感できる能力の獲得が促されてきたのかもしれないといっています。

http://www.dogactually.net/blog/2012/05/post-228.html
犬の共感能力については明確に解明されていませんが、上記の実験のとおり、”情動伝染(Emotional Contagion)”と呼ばれる現象が異種間で実証できたことは、感情移入する能力を持つ可能性が高いと言えそうです。

□猫と人の場合
猫がご機嫌の時にする“のど鳴らし”に着目してみます。
あのゴロゴロ音は、低周波の音で呼気と吸気の双方で発生します。生後2日目には聞かれるようになりますが、実は喉鳴らしのメカニズムと、なぜのど鳴らしをするのかは、未だ明確にはなっていません。最も有力な説は、喉頭の筋肉の極めて急速な収縮が声門を収縮・膨張させ、音の発生源となる声帯の急激な分離が引き起こされるというものです。ネコは骨折の治癒が速く、手術後の併発症が少なくいことなどから、周波数が25-30ヘルツの喉鳴らしには骨・腱・靭帯に関する治癒とさらには鎮痛の効果があるという仮説もあります。
猫は嬉しい時にも苦しい時にも喉を鳴らすことがあり、喉鳴らしは“接触”と結び付くことが最も多いです。喉を鳴らす子猫は母猫に自分が元気だと伝え、成猫は愛撫されての満足を表す。飼いネコでは頻繁に見られますが、自然ではネコが喉を鳴らすのは主として母子関係の中に限られています。

猫の共感能力についても未だ明確なことはわかっていません。
自然界では母子関係にのみ行われることから、のど鳴らしは社会的行動の一つであり、相手に感情や満足感・健康状態を伝えたり、その健康を維持する重要な目的・役割があることがわかります。飼い主(人間)に対しても、依存や満足感を伝えるために行っている可能性が高いと言えそうです。

■まとめ

以上から、
人がペットに求める役割が、実用的側面から精神的側面へと大きく変化している
犬・猫共に(解明はされていないが)、情動伝染や親子関係に見られるのど鳴らしなど、相手への親密度を表現することが出来る
ことがわかりました。
古来から親しまれ、現代ではすっかり身近な存在となったペットですが、実はまだまだわかっていないことも多いです。
ペットに対する考え方は個人差がありますが、動物も同じ生き物です。飼育をする際は、必ずマナーを守り、動物への思いやりを忘れないようにしましょう。
<参考サイト>
下記サイトを一部添削し掲載させて頂きました。
人から犬にあくびがうつるということ~犬のもつ共感力リンク
wikipedia リンク [3]

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