- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

太陽系を探検しよう-23.地球を揺るがす長周期地震の不思議①~都心に建つ超高層建物が最も危険!?~

%E2%91%A0-1%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%2B%E3%81%8D%E3%82%8A%E3%82%93.jpg
(画像はこちら [1]からお借りしました。)
生物界で最も高いものは「木」です。
ハイペリオン(Hyperion)は、アメリカ合衆国・北カリフォルニアのレッドウッド海岸にあるセコイアにつけられた名前です。高さ115.55 mで、現存する中で世界一高い木です。(記録上の最高は、樹高132.58m)
なんと、30階建ての超 高層ビル相当もの高さで、きりんの25倍もの大きさです。
私たち人類が住む町でも、技術力の上昇とともに、建物はどんどん高層化してきました。
さらに、超高層建物と並び、最近耳にするようになった免震構造など、都市部を中心とした新しい技術による建築物が今や、至る所に建設されています。
そして、これらの建物は安全であるというイメージは、根強いように思います。
例えば、超高層建物は、揺れは大きいものの、地震の時にしなって揺れることでエネルギーを吸収する。だから揺れるけど大丈夫、という感覚もあるかもしれません。
東日本大震災後は、建物の安全に対する意識が高まり、マンションならば免震構造でなければ売れないという現象も起こっています。
さて、みなさんは東日本大震災では、「長周期地震動」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
震源から数百キロも離れた都心部で、超高層建物が大きく揺れたという現象を引き起こしました。超高層ビルが最長10分間以上も揺れ続けたという報告もあります。
これまで当たり前に安全と思っていた建築物は、本当に安全なのでしょうか。
実は、検証していくことで、その危険性が分かってきました。

今回は、「長周期地震動」に着目してみたいと思います。


◆長周期地震動による被害事例
まずは、長周期地震動が影響と思われる被害事例を紹介します。
【東日本大震災の事例】
震源から約770キロ離れた大阪府の「咲洲庁舎」(55階建て、高さ256メートル)では、長周期地震動により約10分間揺れ、最上階付近の揺れ幅は最大約2.7メートルに達しました。また、千葉県でも石油タンク内の油が波立つ「スロッシング現象」により、火災が発生し甚大な被害を起こしました。
【1985年メキシコ地震(M8.1)の事例】
震源から400Kmも離れていたメキシコシティーで、中高層ビルが何棟も倒壊して、其の時の死者は9500人にもなりました。
このように、長周期地震動は、遠くの地域まで大きな被害を及ぼすという特徴があります。
では、なぜこのような事が起こるのでしょうか。
ここからは、地震により建物が揺れる仕組みを説明していきます。
 
◆建物が揺れる仕組み①~固有周期、共振とは?~
ブランコに揺られる時をイメージしてください。
左端から右端へ行って、再び左端に戻ってくるまでの時間を「固有周期」といいます。大きくな揺れでも小さな揺れでも、この時間(固有周期)は同じであるという特徴があります。
ブランコにのっている子供の背中を押してやるとき、最も簡単に効果的に押すポイントは、ブランコが反復する寸前です。この時点であれば指1本でもブランコを加速することができます。
反対側から戻ってくる度に子供を押すということは、子供を押す周期と、ブランコの周期とが一致していることになります。周期と周期が一致したとき、お互いの力が助け合って増幅するため大きな力となり、加速するのです。この現象を「共振」と言います。
%E2%91%A5%E3%81%B6%E3%82%89%E3%82%93%E3%81%93.png
(画像はこちら [2]からお借りしました。)
◆建物が揺れる仕組み②~「共振」が大きな揺れを起こす~
建物、地盤についても固有周期があります。「地盤=地震そのものの揺れ」と「建物の揺れ」両者の固有周期が一致したとき、「共振」が起こり大きな揺れや破壊に繋がるという仕組みです。
◆都市部の超高層建物が大きく揺れる理由
%E2%91%A6%E8%B6%85%E9%AB%98%E5%B1%A4%E5%85%B1%E6%8C%AF.jpg
ではなぜ都市部でそのようなことが起こるのでしょうか。
2004年9月に起きた紀伊半島沖地震では、平野のある都市部での「固有周期」が確認されました。
関東平野では6~7秒、濃尾平野(名古屋)および大阪平野では4~6秒となりました。
K-NET/KiK-netが記録した揺れの広がりのアニメーション [3]>では、東日本大震災時の揺れが広がる様子がアニメーションで紹介されています。
関東平野を中心に、平野部で長い時間大きな揺れが続いていたのがよく分かります。
これに対して、関東で一番高いランドマークタワーの固有周期は6秒前後です。また、石油タンクの固執周期は7秒前後となります。
「地盤」と「建物の揺れ」の両者の固有周期が一致し「共振」が起こったのです。
平野部での長周期地震動による影響は、超高層建築物や石油タンクなど、固有周期の長い巨大構造物が地震の揺れと共振してより大きな揺れを起こします。
次に、平野部で長周期地震動が発生するメカニズムを説明します。
◆平野部で「長周期地震動」が発生するメカニズム
%E2%91%A4%E5%B9%B3%E9%87%8E%E9%83%A8%E3%81%AE%E5%A0%86%E7%A9%8D%E5%B1%A4.GIF
(画像はこちら [4]からお借りしました。)
図に示す通り、日本最大の平野である関東平野では、地下深部に巨大な岩盤の凹みが存在し、その上に柔らかい堆積層が載っています。
%E2%91%A7%E5%B9%B3%E9%87%8E%E9%83%A8%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%A2%97%E5%B9%85%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0.jpg
地震動は柔らかい鉢状の堆積層に入ると、その中で反射現象を繰り返すことで揺れが留まり、増幅します。
大阪平野や濃尾平野でも堆積層の厚さは1000m以上もあると考えられています。
遠くから伝わってきた地震動でも、このようなメカニズムで大都市を揺らすのです。
先に示した震源から400kmも離れたメキシコ地震での被害は、まさにこのパターンです。大都市であるメキシコシティという立地は、テスココ湖を埋め立てたところであり、固い湖底の上に軟弱な地盤が数十メートルも堆積しており、日本の平野部と類似した構造にあるということが分かっています。
◆まとめ
超高層建物が集中するのは都市部です。
長周期地震動は、その都市部で大きなエネルギーを蓄え、超高層建物に悪影響を及ぼすことを説明しました。
遠く離れた地域での地震でも、被害が発生しています。
今後、起こる可能性が大きいとされている大地震の時、問題はないのでしょうか。
これまでは安全であると考えられていた超高層建物ですが、本当に大丈夫でしょうか。
それらの影響も考慮して建設されているのでしょうか。
次回は、超高層建物のメカニズムを解明することで、その解明に迫りたいと思います。

[5] [6] [7]