- 生物史から、自然の摂理を読み解く - http://www.seibutsushi.net/blog -

太陽系を探検しよう-17.太陽は燃えている?

hibari.jpg
edihの昭和音楽よもやま話 [1]さんからお借りしました。 
 
まっ赤に燃えた~  太陽だから~ 真夏の海は~ 恋の季節なの~
昭和42年にリリースされた楽曲「真赤な太陽」で、美空ひばりさんは唄っています。
でも、太陽は燃えているわけじゃないんです。
“燃える”というのは物が酸素と化合して熱と光を出す現象です。
酸素の多い地球なら物は燃えますが、酸素の無い宇宙空間では物は燃えません。
 
では太陽は、なぜあんなに眩しく、熱い存在なのか。
  
それは核融合反応が起きているからです。太陽の中心部で、水素原子が融合してヘリウムになる現象が次々に起こっており、そのときに出るエネルギーが放射され、そのうち人間の目に見える可視光が網膜を刺激してあのような姿を映し出しています。そのエネルギーは地球上で熱にも転換し、生命が生きる環境をつくっています。
 
生命は、太陽のつくるエネルギーを取り込むことで、生きていけるのです。たとえば、われわれは酸素呼吸をしていますが、酸素の大半は植物の光合成でつくられています。水が液体でいられる環境をつくっているのも太陽です。
 

 
太陽の核融合が起こっているのは表面ではなく、中心部です。
核融合が起こっているのは、どうしてわかるのでしょうか。
 


 
太陽は水素のかたまり
 
太陽光を分光器で周波数ごとに分解すると、暗線と呼ばれる黒い線が何本も見られます。
   
013%25205.jpg
太陽スペクトルの図
(色の帯の中に縦に何本も黒い線(暗線)が入っている。暗線の下部に対応する元素記号を記してある。)三重県総合教育センター [2]からお借りしました。
 
これは特定の原子が特定の波長の光を吸収・散乱させた結果で、その暗線の周波数とその濃さから、どんな元素がどのくらい存在するか推定することができます。その結果、太陽の組成は以下のようになっていることが分かります。
taiyousosei.JPG
  
太陽は膨大なエネルギーを生んでいる
地球が太陽から得ているエネルギーから、太陽で発生しているエネルギーの規模を推定できます。地球付近に到達する太陽エネルギーは1秒当たり約1366W/㎡(地球表面平均で342W/㎡)と観測されています。そこから逆算すると太陽は約3.86×1026Wのエネルギーを放出していることがわかります。これは、 水爆10億個分にも相当する莫大なエネルギーです。
この膨大なエネルギーの源は、化学・重力・核が考えられますが、そのうち上のエネルギーを説明できるのは核融合だけです。⇒参照 [3]
太陽中心部で起きている核融合
太陽が核融合をしているのは直接見ることはできません。理論的には、下記のような核融合が起こっていると考えられています。
①水素陽子+水素陽子 重水素原子核+電子+ニュートリノ
②重水素原子核+水素陽子 ヘリウム3原子核+ガンマ線
③ヘリウム3+ヘリウム3 ヘリウム4原子核+陽子+陽子
重水素 [4]は水素の原子核が陽子+中性子となっているもの。
  
ym0wysJl.bmp
画像はまわり道の風景と小さな好奇心 [5]さんからお借りしました。
まとめると、次のようになります。
4個の水素原子核 ヘリウム原子核+ ガンマ線+ ニュートリノ
 
水素が核融合してヘリウムに変わり、一部のエネルギーがガンマ線 [6]ニュートリノ粒子 [7]として放出されていると考えられています。
 
核融合反応の証拠はニュートリノ
 
太陽が核融合をしている証拠としてニュートリノが登場したのが1940年代、その観測が始まったのは1990年代後半からです。そして、紆余曲折がありましたが、日本の「スーパーカミオカンデ」とカナダのSNOの観測によって、太陽から飛んでくるニュートリノが正確に捉えられ、その量が理論と整合し、核融合が起こっているという証拠となりました。
太陽中心部の環境
太陽の内部は、太陽自体の振動波の観察から下図のような模式図が描けます。
resonance.gif
波動で捉えた太陽の内部構造。大阪学院大学講義資料 [8]よりお借りしました。
 
中心核と中間層と表層部の3層があることと、その位置(深さ)がわかります。このような観測により太陽の内部構造が確認できたのは1980年代後半のことです。それ以前に教科書に載っていた太陽の内部構造の絵は、理論に基づくものだったのです。それで、その理論は、この観測結果に対してどうだったのか…。その誤差は0.5%程度だそうです。理論はほとんど正しかったということです。
 
taiyou_03.jpg
理科ねっとわーく [9]さんよりお借りしました。
  
太陽は水素のかたまりなので、中心核は超高圧で圧縮された水素の核です。圧縮している力は重力で、これと核融合のエネルギーによって膨張しようとする力が釣り合って、現在のような太陽の姿をつくっています。均衡しているので、連続爆発で太陽が吹っ飛ぶということはありません。その均衡状態をもとに計算すると、中心温度は1600万K、中心部の圧力は2500億気圧と推計されます。その環境があるからこそ、核融合が起こりえるのです。
 
 
太陽の寿命はあと何年? 
 
太陽が発生させているエネルギーから換算すると、その核融合では1秒間に約6億トンの水素が使われている計算になります。6億トンというのは、黒部ダム3杯分の水の量に相当します。
 
20070916_105923.jpg
黒部ダム
リンク [10] 
そんなに消費したら、燃料がなくなってしまうイメージですが、そんなことはありません。太陽の質量は2×1027トンで、地球の33万倍もあります。大きさで見ると下の絵のようになります。左下に小さくあるのが木星で、その下にあるちっちゃいのが地球です。
 
taiyoucihkyuu.JPG
画像はこちらのサイト [11]からお借りしました。
  
1秒間に6億トン使っても、水素の量は単純計算で1000億年分もあります。そのうち実際に寿命までに使われるのは100億年分と見られており、これまで太陽はおよそ50億年分を使ったので、あとおよそ50億年は核融合を続けることができます。その頃には、太陽は膨張し、地球を飲み込むほど大きくなっています。
 
 
太陽の輝きは17万年前の光
  
太陽光は、核融合で放出(放射)されるガンマ線が元になっています。ただし、これが直接放射されているわけではありません。太陽の内部は水素のプラズマが高密度に充満しているので、これに阻まれながら長い時間をかけて表面までたどり着きます。このとき、徐々にエネルギーを(熱として放出し)失って=周波数が小さくなっていき、最後はほとんどが可視光として放射されます。このようにして中心部で生まれたガンマ線が、表面まで到達するのにかかる時間は平均で17万年以上かかります。
 
だから、われわれが地球で見ている太陽の光は、少なくとも17万年前に生まれた光を見ているのです。17万年前というと、われわれ人類の祖先(ホモサピエンス)がまだアフリカにいた頃です。そのときの核融合で発生したニュートリノは始原人類たちの身体を貫き、そのときのエネルギーは今、わたしたちの元に届いているのです。
  
  

[12] [13] [14]