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太陽でもスーパーフレアが起こる? どうなる地球。

2012年5月17日、次のようなニュースが流れました。
 
 
太陽でもスーパーフレアが起こる
  
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スーパーフレアのイメージ
 
京大附属天文台の柴田一成教授らは、惑星探査衛星ケプラー衛星の観測データ約83000個を解析することにより、太陽型恒星でスーパーフレア(最大級の太陽フレアの100倍~1000倍の超巨大フレア)を365例(148天体)発見したとネイチャーに発表した。太陽と似た表面温度と自転周期をもつ10の天体では14回確認。また、これまでスーパーフレアは星の近傍に巨大惑星がある場合に起こり得るとされていたが、そのような例は稀だった。つまり、これまで太陽では起きないとされていたスーパーフレアが、太陽でも起こりえることがわかった。太陽でスーパーフレアが起きれば強烈な電磁波や粒子が地球を襲い、電子機器等が故障し都市機能が混乱する可能性がある。
(詳細はこちらを参照:太陽型星におけるスーパーフレア [1]
 
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フレアってなに?
 
一般に「フレア」とは、太陽の表面で起こっている爆発現象のことです。磁場の通り道である黒点の近傍で起こることから、磁場の変化に伴うエネルギーが引き起こすと考えられています。その威力は水素爆弾10万~1億個と同等。これが日常的に起こっています。フレアが起こると衝撃波やプラズマ噴出が発生し、地球では磁気嵐を起こします。詳しい発生の仕組みはわかっていません。最近では1989年にカナダで大規模な停電が起こっています。また、過去500年で最大規模(1989年の10倍以上)のフレアが1859年に起こっていて、世界中のテレグラフ網が破壊されました。そのような過去最大級フレアの100~1000倍のエネルギーで爆発すると考えられているのがスーパーフレアです。
  
  
巨大フレアで大量絶滅?
 
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これまでも、スーパーフレアが1億年に一度ぐらいは起きていただろうと考える研究者もいて、生物の大量絶滅もそれが原因ではないかと唱える学者もいます。
 
今回の研究で、柴田教授らは、太陽型星において、過去最大規模のフレアの1000倍(10の35乗erg)の巨大フレアの発生頻度は5000年に1回と導き出しました。
 
これは、生物史35億年のスパンで見たら極日常的な出来事です。また、人類史においても珍しいことではありません。生物界にとっては、そう心配することではないということです。
 
あとは、人間社会への影響です。フレアの観測から地球に影響が出るまで数日の猶予があるので、電気や電子機器等の対応については考えておく必要があります。米国では、大停電が起こり復旧に数年を要し、被害額は数百兆円との試算もあります。
フレアの規模と影響が確定すればシステムの見直しが必要でしょう。更には、エネルギーや電子機器に過剰に頼る社会構造・生活様式を見直す必要もありそうです。
 
巨大フレアより怖いガンマ線バースト
 
地球が遭遇する宇宙現象の中で、巨大フレアよりエネルギーが大きいものに、ガンマ線バーストというのがあります。実は、生物の大量絶滅の原因としては、こちらの方が有力視されています。
 
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ガンマ線バースト想像図
  
ガンマ線バーストとは、天球上を観察していると、一日に数回は観測できる現象です。ガンマ線(高エネルギー電磁波)が数秒から数時間にわたって閃光のように放出され、そのあとX線の残光が数日間見られます。発生のしくみの概略としては、太陽の何十倍も重い恒星が一生を終える際、核融合による膨張力を失い自分の重力で潰れると、超新星爆発を起こし、その中心部からガンマ線が自転軸から2度の範囲に集中して放射されると考えられています。その詳細な発生機構は不明です。通常は極めて遠くで発生するため地球へ影響していません。しかし、過去に少なくとも一度、地球に大きな影響を与えたのではないかというNASAの研究結果があります。(参照:リンク [2]
 
 
ガンマ線で三葉虫が大量絶滅?
 
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三葉虫の化石
 
コルドバ大学の地質学者エミリオ・ヴァカリ博士は、アルゼンチン・サンフアン州で、4億年前以上の地層を調べ、「三葉虫」の化石を発掘し、海面の三葉虫だけが絶滅したことをつきとめました。アメリカ・カンザス州のウォッシュバーン大学のブライアン・トーマス博士は、三葉虫の絶滅は、超新星爆発でオゾン層が破壊され地球にガンマ線が降り注いだためと考えています。博士のシミュレーションによれば、最大で35%のオゾン層が破壊され、その修復には10年かかったとしています。参照:リンク [3]
 
近くて大きい恒星で超新星爆発が起こるようなら対応が必要そうです。
 
 
超新星爆発を起こしそうな星は?
 
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オリオン座のベテルギウス
 
ガンマ線バーストは超新星爆発により発生すると考えられています。いつ超新星爆発を起こしてもおかしくないといわれているのが約640光年の距離にあるベテルギウスです。大きさは太陽の1000倍。現在、急激に収縮しており、超新星爆発の過程に入っているとされています。世界の天文学者がその瞬間を観察しようと注目しています。ガンマ線バーストについては、その自転軸が地球から20度ずれており、地球に影響を及ぼさないと考えられています。
 
 
もうひとつは、約8000光年の距離にある青色巨星WR104です。
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WR104の赤外線写真(参照:リンク [4]
 
そのガンマ線が地球に衝突した場合、10秒間でオゾン層は平均で約30%(部分的には50%)が消失し、回復には数年を要すると予想されています。これだけの規模のオゾン層消失は、大量絶滅、飢餓、被爆などを起こすのに十分です。この天体の自転軸については、地球の向きから16度ずれている等の情報もありますが、正確には観測できていません。
(参照:リンク [5]
 
 
 
もうひとつのリスク、地磁気消失
 
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過去1.2万年の地磁気の推移(参照:リンク [6]
 
太陽からは放射線やプラズマ粒子が放射されています。これを浴びれば被爆しますが、我々がそうならないのは地球の磁場や大気に守られているからです。この地球防衛の最前線にある磁場が消失する可能性があるらしいのです。その内容としては、過去200年、一貫して磁場が弱くなっているというものや、平均して約30万年に1回はあるという地磁気逆転の際に一時的に磁気が消失するというものがあります。しかし、いずれの説もその仕組みが未解明で、根拠が希薄です。(参照:リンク [7]
 
それでも、あらゆる生物は存在し続けている
 
生物は地震や火山の噴火などの天変地異に対しては、生息範囲を広げることで絶滅を防いでいます。宇宙規模の現象となると、どうなのでしょう。全ての生物は死滅してしまうのでしょうか。
そんなことはありません。もしスーパーフレアが起こりえることであれば、生物史35億年の間には何度も起こっているはずです。ガンマ線バースト然り。生命はそれらすべてを乗り切っていまに至っているのです。
人間はどうなるでしょう。人類の歴史は500万年ほどしかありません。しかし、その間に、スーパーフレアも地磁気逆転(消失)も経験済みです。あとはガンマ線バーストによるオゾン層破壊ですが、いまのところその心配はありません。
 
それ以上の心配は、まさに杞憂です。
 

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