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太陽系を探検しよう-12.地球生命の起源(1)~「奇跡の星」地球~

前回の太陽系を探検しよう―9.地球の大気はどのようにしてできたか? [1]では、地球の大気が太陽系の他の惑星とは大きく異なっており、それは地球にだけ生命が誕生し、進化してきたことと関係があること(地球と生命の「共進化」)を見ました。
 
今回から地球生命の起源を探ることにしますが、太陽系の中で地球だけが1000万とも1億ともいわれる生命種にあふれる星となり、他の惑星がそうならなかったのは何故か?その理由を探っていくと、太陽系がつくられる過程で、地球が「奇跡の星」とされる数々の幸運に恵まれたことが分かります。
 
そこで今日は『地球生命の起源』第1回として、地球誕生にまつわる数々の幸運を見ます。
佐藤勝彦著『ますます眠れなくなる宇宙のはなし-「地球外生命」は存在するのか』より。
 
1.ハビタブルゾーンに生まれ、液体の水が安定して存在する地球
 
惑星が生命を育むためには、その星に「液体の水」が安定して存在することが不可欠の条件だと考えられている。地球の生命は太古の海の中で生まれたと考えられており、地球のあらゆる生命体の元素比が海水の元素比とよく似ていることがその証拠の一つ。
さまざまな有機物が海水中に溶け込み、化学反応を繰り返し、ついには生命になった。
 
pct_alien01.jpgもし地球の位置が今よりも数%太陽に近ければ、太陽から受け取る熱が増えて海が蒸発し、逆に今より10%以上太陽から遠ければ海が凍りついてしまう。
地球は太陽からほどよい距離にいるために、水が液体の状態で存在できる。
 
一般に、恒星のまわりで水が液体で存在できる範囲のことをハビタブルゾーン(「生命居住可能領域」と訳される)といい、太陽系のハビタブルゾーンは、地球の軌道の少し内側(太陽寄り)から火星の軌道くらいまでの、ドーナツ状の円盤の範囲だと言われている。
(上図は宇宙ワクワク大図鑑 [2]よりお借りしました。)
 
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しかしもう一つ重要なのが、惑星のサイズ
例えば火星はハビタブルゾーンの外側ぎりぎりのところにいるが、地球の10分の1の重さしかないため、火星の重力では大気を保持できず、大気が非常に希薄。気圧が低いほど水は低温で気体に変わるので、かつて存在したとされる火星の海は蒸発してしまった。
同じことは地球の衛星である月にも言える。地球の80分の1の重さしかない月には液体の水は存在できない。
 
このように惑星が液体の水をもてるかどうかは、「恒星からほどよい距離(=ハビタブルゾーン内)」にあり、かつ「適度な大きさ」を持っていなければならない。
 
2.地球の地軸の傾きを安定させた巨大な
 
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これは十数回におよぶほかの原始惑星との巨大衝突の最後を飾る、地球史上最大の天体衝突で、その衝撃によって地球の一部がはぎとられ、新たな天体が生まれた。それが地球の惑星、である。
(上図はジャイアント・インパクト説の想像図。NASA作成。ウキペディア [3]より。)
 
地球は太陽の周囲を公転しながらおよそ24時間で1回転の自転運動をしている。
もし地球の自転周期が金星と同じ243日であれば、昼が約120日間、夜が約120日間続くことになり、昼側の半球では水が蒸発して砂漠化し、逆に夜側の半球は冷え切って氷におおわれてしまう。これでは液体の水が存在できるのは朝や夕方の状態になっている一部の領域に限られ、生命にとって望ましい環境とは言えない。
 
また地球の地軸(北極と南極を結ぶ線のこと。自転軸ともいう)は、地球の公転面に対して23.4度傾いている。地球の地軸の傾きは一定ではなく、およそ4万年の周期でプラスマイナス1度ほど変動する。
ところが火星の地軸は現在25度傾いているが、数万年の周期でプラスマイナス10度ほど変動すると言われている。このため火星では大規模な気候変動を繰り返してきたと推測されており、生命にとって望ましい環境ではない。
 
火星に比べて地球の地軸の傾きが安定しているのは、巨大な月をもっているせいだとされている。月の直径は地球の直径の約4分の1もあり、太陽系の他の惑星が持つ衛星に比べて非常に大きい。このため、は巨大な潮汐力を地球におよぼし、それが地軸の傾きを安定化させていると考えられている。
 
3.地球に広大な海をもたらした後期重爆撃期
 
ジャイアント・インパクト以降、微惑星や他の原始惑星との衝突は次第に減ってきたが、41億年前ごろから小天体の落下が再び激しくなった。38億年前ごろまで続いたとされる、小天体の落下が集中したこの時期を後期重爆撃期という。最初に原始地球をつくった微惑星との衝突と区別するため「後期」という語が付いている。
 
この結果、一旦できた固い地表(地殻)が破壊され、再びマグマ化する。これまでに見つかっている地球の最古の岩石は38億年前のもので、それ以前に形成されたものが見つかっていないのは、この衝突が原因だと考えられている。
 
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(上図はナショナルジオグラフィックニュース「“水と生命の起源は彗星”説の根拠とは [4]」よりお借りしました。)
 
後期重爆撃期に降ってきた小天体に「生命の種」が含まれていた可能性があるが(第2回目で紹介します)、この他にも地球にとって非常に大事なものをもたらしてくれた。小天体にはが多く含まれていて、この氷が最終的に雨となって地球に降り注ぎ、海(水の海)ができたと考えられている。
 
最初に地球を形づくった微惑星うち、太陽に近い場所にできたものは氷が蒸発しているので、後期重爆撃期以前に海があったとしても、現在のものほど大規模ではなかったと考えられている。
これに対して、後期重爆撃期に地球に降り注いだ小天体の正体は、小惑星あるいは彗星だろうと予想されており、これらはいずれも太陽から遠い場所でできた微惑星がもとになっているので、氷を多く含んでいた
 
4.地球を小天体から守ってくれる木星の存在
 
宇宙から小天体が次々と降り注ぎ、地表がたえずマグマやクレーターでおおわれるような環境では、生命にとってよい惑星とは言えない。木星という巨大ガス惑星が存在しなかったら、地球には1000倍もの小惑星や彗星が衝突していたと予想されている。
 
木星は巨大な重力で、地球に向かう進路をとる楕円軌道の小天体を、太陽系外に弾き飛ばしたり、円に近い軌道を取らせたりして、地球への衝突を防いでいる。また時には自らが盾にもなってくれる。
 
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(上図は太陽系を探検しよう―2.太陽系はどうやってできたのか? [5]より。)
 
地球に後期重爆撃期をもたらしたのも、実は木星であると考えられている。
太陽系の誕生当初、木星は現在よりも太陽から遠い場所にあったとされている。一方、土星や天王星、海王星は、現在よりも内側の軌道を回っていた。しかし、土星以遠の惑星は数億年かけて現在の位置に移動していき、逆に木星はやや内側の軌道に移った。これを惑星の大移動とよぶ。
木星が内側の軌道に移った結果、小惑星も内側に押されて移動する。その際に、小惑星帯にあった多数の微惑星の軌道が乱れて、地球や月に次々と降り注いだ。これが後期重爆撃期だったと考えられている。
 
このように、地球は木星の助けを借りることで水の惑星となり、生命の惑星となった。
 
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
数々の幸運に恵まれた「奇跡の星」地球、如何でしたか?
次回は、生命誕生までの化学進化の過程(生命を誕生させる材料集めの時代)を探ります。
お楽しみに~

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