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太陽系を探検しよう―7.地球の内部はどうなっているのか?(その2)

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画像はこちら [1]よりお借りしました。
 
地球の内部シリーズでは、内部構造について追求しています。
 
地球の内部構造を知るには、大きく5段階の手順が必要となります。
①地球の質量を算出する 
②地球の密度を算出する
③地球の内部は「固体」なのか、「液体」なのか。
固体の部分は「固い」のか、「柔らかい」のか。
④地球の内部の構成を導く
⑤それぞれの地球内部の組成を推測する
 
 
前回の、「太陽系を探検しよう―4.地球の内部はどうなっているのか?(その1) [2]」では、②までを扱い、地球の密度について説明しました。
引き続き、今回は④までの秘密に迫っていきます。
 
地中の内部を想定するのに利用されるのが、地震の時に発生する波(=地震波)です。
地震の際、大きく揺れる地域は限られていますが、実はその揺れは、微少な振動(=波)として地中の裏側にまで伝わっているのです。
そのときの波は、地球の内部を通過しています。その伝わり方を調べることで、地球の内部を解明するのです。
 
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まず、「地震波」の性質について説明します。
 
ある震源で地震により大きなエネルギーが発生し、同時に大きな揺れが発生します。
その揺れが、「縦波」と「横波」として伝わります。
さて、「縦波」「横波」とは何でしょうか。
 
 
◆縦波と横波の違い
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画像はこちら [5]からお借りしました。
 
①縦波:P波(Primary Wave)
・進行方向:波と同じ方向に振動
・伝搬速度:速い(地表附近で5~7km/秒)
・伝搬媒体:固体・液体・気体の全て
 
②横波:S波(Secondary Wave)
・進行方向:波と直角方向に振動
・伝搬速度:遅い(地表附近で3~4km/秒)
・伝搬媒体:固体中のみ(液体・気体は伝わらない)
 
では、なぜ横波は液体、気体を伝わることが出来ないのでしょうか。
その原理を説明します。
 
次の図をご覧下さい。
 
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画像の拡大はこちら [6]
 
液体・固体ともに、分子が沢山集まって出来ています。
横波の場合、これらの分子間の結合力で、隣の分子に伝える必要があります。
 
つまり、分子同士のつながりの強さがポイントになります。
例えば、水は水素結合で液体、これに対して多くの金属は金属結合で固体です。
分子間のつながりは、固体の方が圧倒的に大きいのです。
 
これに対して、縦波の場合はお互いに押し合うだけなので、分子間の結合が弱くとも、分子がつぶれることがなければ(=簡単に化学反応することがなければ)力を伝えることが出来るのです。
 
だから、縦波は固体・液体ともに伝わるのに対して、横波は固体しか伝わらず液体では伝えることが出来ます
 
※ちなみに・・・、
厳密には、横波は必ずしも固体のみで伝わるわけではなく、液体でも伝わると考えられます。しかし、液体中での横波は減衰が極めて素早く起きるため、伝わらないと表現されているのです。
 
 
◆波の伝わる速さ(縦波と横波の違い)
それぞれの波が伝わるスピードは、地表付近の岩盤中では、縦波では5~7km/秒、横波では3~4km/秒と、縦波の方が早いのです。
 
ニュース速報で流れる「緊急地震速報」は、縦波は横波よりも早く伝わるという特性を利用したものです。
一般的に、地震で大きな被害を受けるのは「横波」です。
震源で地震発生後、縦波による揺れが早く到着し、その後、危険な横波が届くまでには時間差があります。つまり、早く到着した縦波を瞬時に察知して「緊急地震速報」を発令し、その少し後にとどく横波に備えるという仕組みなのです。
 
 
◆波の伝わる速さ(固いモノと柔らかいモノの違い)
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画像はこちら [7]からお借りしました。
  
固いモノは柔らかいモノよりも、速く伝わるという特性があります。
地表面から深い固いゾーンの方が、浅い柔らかいゾーンよりも、波の伝わり方が早いのです。
 
これは、波の伝わり方の概念図で言えば、固いモノは隣り合う分子のつながりが強いということになります。
釣り竿の様な柔らかくしなるモノよりも、金属バットの様な固いモノを振りかざす方が、先端まで力が早く伝わるということからも、イメージ出来るかと思います。
 
では、地震波が地盤の中をどのように伝わるのでしょうか。
 
 
◆地震波の進み方
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画像はこちら [8]からお借りしました。
 
地中では、地震波は真っ直ぐ進むとは限りません。
上図は、相対的に、地表面では地盤が柔らかく、深くなると固くなることをモデル化したものです。このように、固さの違いにより波は曲がりながら進むのです。
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画像はこちら [8]からお借りしました。
 
上図は、一部に柔らかいゾーンが含まれている場合のモデル図です。
左図だけでは、どの部分が遅い部分なのかわりません。しかし、中図の通り、別な地震のデータを組み合わせると、それらの経路(赤い線)の両方が通る部分(下右の赤く塗った部分)が地震波の伝わる速さが遅いのだろうと 推定できます。
こうして、大量の地震波のデータを一度に処理すると、地下構造が浮かんでくるのです。
 
 
◆地中の地震波の伝わり方
地震が起こった時に、地球の各地点でその地震波を測定すると、横波だけが伝わらないゾーンがあることが分かりました。
ここは、地震波の影(シャドウゾーン)と呼ばれています。
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画像はこちら [9]こちら [7]からお借りしました。
 
そこで、これまで紹介してきた2つの原理、①横波は液体中では伝わらない ②固さにより波の伝達速度が異なること を元に地震波を分析すると、地球の真ん中に液体のゾーンがあることが分かりました。
 
 
◆地球内部の状態
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画像は、NEWTON(別冊)よりお借りしました。
 
これまで、地震波による地球の内部構造の推測の方法を紹介してきました。
その結果、地表面より「地殻」「マントル」「外核」「内核」の大きく4つの層に分けられること、その状態(液体or固体、固いor柔らかい)が分かってきました。
 
 
一方で、同時に幾つかの疑問も出てきます。
・液体と気体の境界面にある海の波は、横波だが伝わる。液体の定義の問題?横波の定義の問題?
・固い、柔らかいの基準は何なのか?
厳密に考えると、意外と分からないことも出てきますが、これらについても今後解明していく必要がありそうです。
 
具体的にどのような組成で構成されているのか、いよいよ、次回よりこれまでの紹介した内容をもとに、その核心に迫っていきます。 

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