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シリーズ「がんの正体に迫る」その2 ~ グラフで見るがんの現状

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がんが日本人の死亡原因のトップになって30年。今やがんも生活習慣病と呼ばれていますが、今回は歴年の推移などからがんをとりまく社会的背景をいくつかのグラフを用いて探ります。
(グラフは「免疫プラザ [1]」より)

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では世界的にはどうでしょうか?
先進国の推移を見てみましょう。

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グラフからわかるように日本同様、各国とも右肩上がりですが、アメリカとイギリスが1990年をピークに癌の死亡率が減少傾向に転じているのが注目されます。
これは米英ががん検診を奨励した結果、受診率が上昇し早期治療が可能になったこと。90年頃から健康志向が高まり、運動や食生活の改善がなされたこと等と言われています。

加えて、米英では製造業や化学工業などの工業生産が日本より早くから衰退し、大気や水質が改善されたことも考えられるのではないでしょうか?

また、グラフからはわかりませんが、国別に死亡要因を見ると日本、オランダ、フランス、オーストラリア、カナダ、韓国などががん比率が高くなっており豊かさとの連関を伺わせます。ただし、アメリカやドイツでは男性でもがんより心臓疾患で死亡する比率が高いのが例外的に見られます。

一方、心臓疾患など循環器系の病気で死亡する率が高い国はウクライナ、ブルガリア、ルーマニア、ベラルーシ、ラトビアなど東欧諸国に多く、貧困とアルコールが原因とも言われています。ビール好きのドイツや貧富の格差が大きいアメリカもその傾向があるのでしょうか。

ところで、そもそも癌とはどのような状態を表すのでしょうか。

がんとは、体内の細胞が異常を起こした時に起こる病気全体の事を言います。体の全ての器官は様々な細胞から出来ています。通常この細胞は、必要な時だけ一定の法則に従い分裂増殖します。しかし細胞がコントロールを失い、必要が無いのに分裂増殖すると、大量の組織ができます。発生した臓器によって「腫瘍」、「肉腫」、「リンパ腫」、「白血病」などと名称は変わりますが、広義には同じがんと考えていいでしょう。

あらゆる臓器で異常が起こるのですが、次はがんの部位別の死亡率はどうなっているか見てみましょう?

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グラフは社会実情データ図録 [1]から

男女とも肺がんが70年代後半から急増し、大腸がんも増加、胃がんは減少しています。
胃がん、子宮がん以外は軒並み増加傾向にあります。

胃がんの減少と肺がんの急増はアメリカも同様です。アメリカも20世紀はじめはとうもろこしやじゃがいも等を中心とした食生活で、肉食が中心になったのはまだ50年程度でしょう。冷蔵庫が普及されるまで、豚肉の薫製など日本と同様に塩蔵文化が残存し、塩分の摂取量が多く胃がんの原因になったとも言われています。(しかし、もっと遡れば胃がんは少なかったと考えられ塩分が原因かは疑わしいですが)

また、前回のインデックス [5]でも多数紹介されたように肺がんとタバコの関係も喫煙率のグラフを見れば相関関係を示すのは厳しいでしょう。アメリカでは喫煙率と肺がん死亡率は20年のタイムラグで相関しているwikipedia [6]と言われていますが、日本の喫煙率は1966年をピークに一貫して下がり続けているのですから80年代の肺がんの急上昇は完全に矛盾します。

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最後に、年齢別の死亡要因を見てみましょう。
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日本は先進国だから健康になって高齢化したからがんの死亡率が増加したとの説もあるようですが、がんのピークは60歳前後(女性は40、50代)。高齢化とは無関係です。何らかの機能低下がありそうですが、なぜ60前後に多く見られるのでしょうか。

このように見てみると、がんの原因や発病のメカニズムなど未明点ばかりですね。食生活の変化が大人も子どもも肥満の増加など体質の変化をもたらしているでしょうし、アトピーやぜんそくなどの免疫疾患の増加にみられるように、ガン細胞を駆逐する免疫機能の低下も関係がありそうです。
がんの原因や発病のメカニズムは今後の追求にご期待下さい。

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